心地のよい新緑の季節を迎え、ハイキングや登山を始めてみようと思っている方も多いのではないだろうか。そこで今回は、これから本格的に登山を始めたいという方に、ちょっとしたトレーニングにもなるハイキングコースをご紹介する。
訪れたのは、滋賀県大津市と京都府京都市の境にある「音羽山(おとわやま)」。標高593.2mと低山のうえ、登山口が駅近というのもおすすめポイントだ。
また、大河ドラマ『光る君へ』の主人公紫式部が記した『源氏物語』に描かれている「逢坂の関(おうさかのせき)」や歴史深い「関蝉丸神社(せきせみまるじんじゃ)」など、見所もたっぷりと詰まっている。
■駅から徒歩2分。「蝉丸神社」にある登山口
音羽山の最寄駅は、大津駅や京都駅から約20分の位置にある京阪大谷駅。改札を出て右手に進むと、すぐに「蝉丸神社」と書かれた石碑が見えてきた。
蝉丸神社の創祀は、弘仁13年(822年)。1200年以上もの歴史を持つ神社だ。旅人の守護神猿田彦命(さるたひこのみこと)と豊玉姫命(とよたまひめのみこと)が祀られ、古くから逢坂の関の守護神として崇められていたそうだ。
また、平安時代中期には、琵琶の名手・歌人である蝉丸が没後に合祀されたことから、芸能の神としても人々に信仰されてきた。ちなみにここは分社であり、近くに上社と下社があるそうだ。
階段の上にある鳥居をくぐって、境内へ。旅の無事を願ってお参りをしたら、本殿に向かって右側にある小道を進もう。ここが音羽山の登山口である。
小道を進むと、すぐに山道へと変わった。山際に沿って歩いてほどなくすると立て看板があるので、音羽山を示す方へと進んでいく。
■逢坂山歩道橋を渡り、音羽山へ
山道を抜けると、逢坂山歩道橋が見えてきた。この歩道橋を歩いて国道1号を渡り、音羽山に入る。
山に入ってすぐはなだらかな道だったが、5分もすると上の方まで長く続く階段に出くわした。これがなかなかの急勾配である。
音羽山山頂へはほかにも登山口があるのだが、この大谷駅からのコースはとにかく階段が多い。さらに急な坂道、ごつごつした岩場の道…… といったように、低山とはいえ足腰がかなり鍛えられる。
階段は石や木でがっしりと整備されたものではあるが、急勾配なうえに落ち葉などで滑りやすいところも多い。しっかりと足首をサポートする登山靴を履いていき、注意して歩こう。
■休憩所でひと休みし、山頂を目指す
20分ほど歩くと、少し開けた場所に休憩所が設けられていた。急な階段を息切れしながら登ってきたので、まだ20分しか経っていないとは驚きだった。ベンチに座り、しっかりと息を整えてから再スタートだ。
休憩所からの道のりもまた急な坂道や階段が続くので、おもわず「また階段か…!」と1人で声に出して嘆いてしまうほどである。
ただ、階段を上っているときはとにかく必死だが、時折あらわれる傾斜の緩やかなところでは達成感が感じられ、足を進めるたびに山の景色を楽しむ余裕が出てくる。
筆者が訪れたのは、4月中旬のちょうど桜が終わった時期で、ツツジやアセビなど初夏に向けての花や新芽を見ることができた。疲れたら無理はせず、ひと休みしながら登っていくのがおすすめである。
■山頂から京都と滋賀、琵琶湖を眺める
休憩所から約40分、木々の間に聳える大きな鉄塔が見えたら、いよいよ山頂(標高593.2m)に到着だ。
山頂に着いて右手からは滋賀県を、左手からは京都府を見渡すことができる。この日は少し曇っていたが、比叡山や琵琶湖を跨ぐ琵琶湖大橋なども眺めることができた。
■逢坂山関跡に寄り、うなぎを堪能
下山後は、大谷駅から約5分の逢坂山関跡へ。古くから主要道路が集中して賑わい、小倉百人一首をはじめ、多くの文学作品に題材として取り上げられている場所だ。
ちなみに、かの有名な源氏物語では「関屋」という巻で光源氏と空蝉が12年ぶりの再会を果たす場所でもある。いまは石碑が立てられているだけだが、そういったドラマがあった所かと思うと、なんだか感慨深い気持ちになる。
さて、このまま帰宅してもいいわけだが、せっかくなのですぐ近くにあるうなぎ有名店へ。まだ登山口にも立っていない、大谷駅に降り立ったときから、うなぎの香ばしい匂いがしていて、下山したら必ず食べようと決めていたのである。ご褒美と言わんばかりの贅沢なボリュームが嬉しい。
低山ながらも足腰が鍛えられる音羽山ハイキング。これから登山を始めようと思っている方は、ぜひ訪れてみてはいかがだろうか。
※この記事の情報は2024年5月現在のものです。内容が変更される場合もありますので、最新の情報はリンク先のHPでご確認ください。