芸人・鳥居みゆき、Eテレの番組出演をきっかけに、子どもの発達支援の資格を取得!母でも支援員でもない私だからできること

お笑い芸人や俳優として活躍するかたわら、小説家や絵本作家としての顔をもつ鳥居みゆきさん。2024年2月上旬と下旬に、子どもから大人までの発達障害に関するサポートをするための、「児童発達支援士」と「発達障害コミュニケーションサポーター」の二つの資格を取得したことをインスタグラムで報告しています。
鳥居さんが資格を取得したきっかけやその思い、そして、約13年間の結婚生活についても聞きました。全2回インタビューの1回目です。

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「わからないし、何も伝えられない」は嫌だったから、発達障害について学びたいと思った

二つの資格のテキストを手にする、鳥居さん。

――「児童発達支援士」と「発達障害コミュニケーションサポーター」の資格を取得したそうですね。この二つはどんな資格なのでしょうか。

鳥居さん(以下、敬称略) 「児童発達支援士」では、発達障害の特性を知り、子どものその特性に合った働きかけやアプローチ方法を学ぶことができます。一方で「発達障害コミュニケーションサポーター」のほうは、学童期から青年期、大人まで関係している内容になっていて、社会生活や人間関係を円滑にするためにコミュニケーションのスキルをどうすれば高められるのかを学ぶことができるんです。

「児童発達支援士」のテキストには、「自閉スペクトラム症」や「ADHD(注意欠如・多動性障害)」「LD(学習障害)」などの症状や特徴などがこまかく記載されていたりと、発達障害の基本的な知識を学ぶことができます。さらに、「何歳から何歳までにこの発音ができるようになる」といった基準のようなものが書かれているので、それを子どもの様子と照らし合わせてみて、「少し発達が遅れているのかな・・・」と、一つの基準として知ることもできます。

また、基本的な知識にプラスして、支援士として、発達障害の子どもに対してのトレーニング方法を学ぶこともできるんです。これは、支援士の資格を取りたい人だけではなく、発達障害児をもつママやパパにとってもわかりやすい内容になっていると思います。

今年に入ってからすぐに、この二つの資格取得のためのテキストを取り寄せて、それから勉強し始めました。そして2月上旬と下旬に、二つの試験をオンラインで受験して、それぞれ合格することができました。

――資格を取得して、鳥居さんの中で考え方に変化はありましたか?

鳥居 資格の勉強をしたことで、子どもへのほめ方やしかり方など、声かけの方法も学ぶことができました。私には子どもはいないですが、おいっ子に対する接し方が変わったと思います。うちの姉が「何やってるの!」とちょっとヒステリックにしかってしまったときに、「こういうときは、こんな声かけをしたほうがいいんじゃない?」とアドバイスができたんです。それを聞いた姉も、「たしかにそうだね」と言ってくれました。

この声かけというのは、発達障害に関係なく、すべての子どもに関係することだなと思うんです。たとえば、しかるときには「ほかの子どもと比較してしかることはしない」、ほめるときには「なんでもかんでもほめるのではなくて、自分の過去と比べて、成長したことをほめてあげる」などのアドバイスが書かれていて、その理由もきちんと記されているので、とても納得できるんです。

――資格を取ろうと思った背景や、鳥居さんの思いを教えてください。

鳥居 4年ほど前から、NHKのEテレ『でこぼこポン!』という、発達障害児やグレーゾーンの子どもたち、そしてその保護者向けの番組に出演させてもらっています。発達に“でこぼこ”がある子どもたちにありがちなシチュエーションと、そのサポート方法などがドラマ仕立てになっていて、私は発明家「でこりん」として登場しています。

そんな中、私が『でこぼこポン!』に出演していることもあり、子どもがいる知り合いの人から、発達障害について相談されることがけっこうあったんです。

でも、私は“いち演者”にすぎなかったし、台本を覚えて演じていただけだったので、その相談には答えられなかったんです。「わからないし、何も伝えられない」というのが、私自身、すごく嫌でした。そこで、発達障害について「知ろう」と思ったし、「知りたいな」とも思いました。勉強して知ったからといって、悩みに対して的確に答えが出せるわけではないですけれど、その保護者さんたちの困難さを少しはわかってあげられるかなと思いました。

それと、私は番組に出演はしていますが、子どもたちと直接会う機会はないんです。スタッフさんは、リサーチの段階で発達障害の子どもたちや支援士さんに直接会って、台本を書き上げているんですが、私はその台本を通じてしか、子どもたちのことを知ることができないんですね。だからこそ、もっと知りたいと思ったし、直接会ってみたいとも思っています。

障害児の母でもなく、支援士でもない私だからこそ、気軽に話しかけてもらえる存在に

――『でこぼこポン!』の番組に出演したり、資格を取得したことで、鳥居さんの中で考え方が変わったり、新たな発見はありましたか?

鳥居 番組で紹介されているエピソードの中には、自分に当てはまっていることがあったんです。私はとくに検査をしたわけではないですが、台本を読んでいて、「これ、私に当てはまるな」というものが多いと感じました。そして思い返してみると、「そういえば、こういうとき、苦しかったな…」と。

また、資格の取得を公表したことで、育児をしている芸人友だちや知り合いから、「実はうちの子、発達障害で…」「うちの子、自閉スペクトラム症なの…」と打ち明けられたり、話しかけられたりするようになったんです。その方々に聞いてみると、今まで、他人には障害についてあまり打ち明けられなかったそうで…。
もちろん、療育の支援士さんとは子どもの話をしますが、もっとフランクに「この前うちの子、ずっと〇〇を並べ続けててさ〜、もう本当にかわいいんだよね!」というような会話を、だれかとしたかったと言うんです。そういう声を聞いて、資格を取得して本当によかったなと思いました。私は、発達障害をもつ親でもないし、療育の支援士さんでもないからこそ、気軽に話してもらえるのかもしれないですね。

私自身、コミュニケーション能力がすごく低い人間なんですが、こうして資格を取ったことがきっかけで話しかけられるようになって、自然とコミュニケーションが取れるようになってきたと思います。

それから、おいっ子と一緒に番組を見ていたときに新たな発見も。『でこぼこポン!』の最後に「間違い探し」のコーナーがあるんです。ある日の放送回で、「今日は、13個間違いがあるよ!」というセリフがあったのですが、スタッフさんと、「この短い時間で、13個の間違いって多くない?」と話題にしていました。

それで、その放送回をおいっ子と一緒に見ていたときに、私や姉など大人は、「13個、無理だよ〜」と言っていたんですね。でもおいっ子は、「二つも見つけられた!」という反応だったんです。それで私はハッと気づいて、「そういえば、13個全部見つけろって、だれも言ってないわ」と。こういうおいっ子の反応を見ていると、大人って本当に頭がかたいな〜なんて思います。

――子ども番組に出演したかったそうですが、それはなぜですか?

鳥居 6歳と4歳になるおいっ子たちを喜ばせたいし、彼らにほめられたいんです。彼らは本当に純粋で、会うたびに新たな発見がたくさんあります。おいっ子たちと一緒に過ごす時間は、計算がなくて、飾らなくていいんですよね。最近本当にそう思うのですが、子どもって、実は一番大人だなって。そして、小さなことにこだわる大人のほうが、よっぽど子どもだなって思います。

またまた、すごく面白い発見があって!おいっ子が私に、「この前、お皿洗いを0回もしたんだよ」と言うんです。「0回」ってことは、していないことじゃないですか。でもそのときに、「そうそう、そういう発想だよ!」って思いました。子どもって、ネガティブなこと、すべてがポジティブになるんですよ。だから、勉強になることがすごく多いです。

子育てをしてくれているママやパパたちは、私にとってありがたい存在。自分をもっとほめてほしい!

ロケの風景。かわいらしいオブジェと一緒に記念写真。

――2019年に離婚をして、2022年に番組で公表されていますが、どのような結婚生活だったのでしょうか。

鳥居 約13年間の結婚生活でしたが、元夫は、私と性格や特性が似ていたんです。耐えきれなくなると「わ〜〜〜!」と声を出してしまうところもまったく一緒だったので、なかなかうまくいかなかったですね。もしかしたら、違う特性の人とのほうが、うまくいったのかなと思います。けんかをすると、私が壁に向かって「わ〜〜〜!」と言って、夫はおふろ場に向かって「わ〜〜〜!」と言うような感じでした。

会話にしても、夫はゆっくりじっくりと話をしたい人、私は次の展開を予測しながらどんどんしゃべりたい人なので、そこでも会話がかみ合わないことが多かったですね。

実は、結果的に離婚に至ってしまったのは、私のメールの送信ミスからでした。夫と少しもめていた時期に、私がマネージャーさん宛てに「もう、話をしても解決しないから離婚するかも」と送ったんですが、間違って夫にメールが行ってしまって…。それで夫からはひと言、「わかった」と。それで私も、「待って待って!落ち着いて話をしよう」と必死で伝えて、2人で話し合いをしました。

もともと、私たちは仲よしの友だちだったんです。そこから夫婦になったのですが、「夫婦らしくいなければいけない」という義務感みたいな思いが芽生えて、お互いが窮屈になってしまったんですね。仲悪く夫婦生活を続けているよりも、仲のいい友だち関係に戻ろうかという話になりました。

結婚していたときは、夫とのメールはすごく淡白だったし、外食なんて一度も行ったことがなかったです。でも、友だちに戻ってからは、外でよく食事をするようになって、メールのやり取りもしょっちゅう。今が一番、いい関係でいられていますね。

――今、子育てしているママ・パパたちを見ていて、どんなことを感じていますか?

鳥居 子育ては、とても大変ですよね。私は子育ての経験がなく、発達障害について勉強をしただけですが、本当にそう思います。

ママやパパたちが、満員電車でベビーカーを持ち込んだときに、「すみません、すみません」って謝るの、あれはおかしいですよ。それで、まわりの人も、席を譲って“あげている”という感覚になっちゃってるんです。そうではなくて、「子育てって、ありがたいことなんだぞ!」「未来を作ってくれているんだぞ!」って、いつも思っています。

ママやパパたちは、電車の中で迷惑をかけちゃうからって、乗りたい時間をずらさなくてもいいんです。嫌味っぽくせき払いをしてくる人がいても、もう、堂々としていてほしい!とにかく、自分をしょっちゅうほめてほしいと思いますね。

お話・写真提供/鳥居みゆきさん 取材・文/内田あり(都恋堂)、たまひよONLINE編集部

番組の出演をきっかけに、発達障害を支援するための二つの資格を取得した鳥居さん。発達障害について勉強することで、考え方の変化や新しい発見があり、さらには、自分自身の個性にもより向き合うきっかけにもなったようです。
次回は、鳥居さんが生きづらく苦しかったという、小中学校時代の話を聞きます。

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2024年5月の情報で、現在と異なる場合があります。

鳥居みゆきさん

PROFILE
お笑い芸人・女優。1981年、秋田県生まれ、埼玉県育ち。2008年、2009年の『R-1ぐらんぷり』で決勝に進出し、白いパジャマ姿で両手にはマラカスやくまのぬいぐるみという“マサコ”のキャラクターで人気に。日本テレビ系ドラマ『臨死!!江古田ちゃん』では主演を務めるなど、女優としても活躍。2009年に小説『夜にはずっと深い夜を』、2012年に『余った傘はありません』、2017年には絵本『やねの上の乳歯ちゃん』も発刊。

鳥居みゆきさんのInstagramアカウント

鳥居みゆきさんのオフィシャルサイト『鳥居みゆきの清き汚い世界』

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