心底喜べる優勝へ 幡地隆寛がこだわった最終18番のドライバーショット

最終18番で会心のドライバーショットを放った(撮影/奥田泰也)

◇国内男子◇関西オープン 最終日(19日)◇名神八日市カントリー倶楽部(滋賀)◇6869yd(パー70)◇雨時々曇り(観衆2593人)

17番グリーンから最終18番へ歩きながら、幡地隆寛は「最後のティショットは3番アイアンで打つ」と決めていた。確認するリーダーボードはなかったが、後続に3打差はつけていると分かっていた。プロ9年目の国内ツアー初優勝へ、最善の策はセーフティーなマネジメント。しかも、3日目にティショットを右林に打ち込み、奇跡的なパーをセーブしたホールだ。

18番ティイングエリアに立って、気が変わった。「ドライバーで振り切ってやろう!」。左OBも右の林も怖がらず、うなりを上げた弾道がフェアウェイを捉えた。422ydのパー4で、ピンまでもう101yd。あとは54度のウェッジでコントロールし、締めくくるだけだった。

「きょう、気持ち良く振り切れた唯一のドライバーショットでした」。逃げずに、自分が求めるものを手に入れた30歳は「やっと満足のいく勝ち方ができました。達成感があります」と喜んだ。

国内開幕前の3月初旬、アジアンツアー「ニュージーランドオープン」でプロ初優勝を飾った。最終日にボギーなしの「67」で回り、首位スタートしたスコット・ヘンド(オーストラリア)の最終18番のボギーで転がり込んできた。そんな“タナボタ”は「悔しい勝ち方」だった。

「でも、それは僕にとって良かったと思うんです。“もっといいゴルフをしないとダメ”と思えたし、それがモチベーションになりました」

プロ9年目、幡地隆寛がついに初優勝(撮影/奥田泰也)

理想へ、しっかりした勝ち方へ、もがき苦しんだ最終日だった。2番から違和感のあったアイアンショットのミスから3、4番でボギーが先行した。9番はティショットを曲げてのナイス・パー。12番(パー5)のバーディは絶妙のロブショットから奪ったが、ドライバーが飛びすぎて肝を冷やした。

「18番はドライバーを打ち切れたことで(優勝は)確実と思ってました。でも、本当に“勝った”と思えたのは、セカンドの後です。“最後のパットを入れるまで、絶対に緩んじゃいけない”と思っていました」

今季のドライビングディスタンスは307.74ydの2位。2022年以降は河本力にトップの座を譲っているが、20―21年は1位で国内屈指の飛ばし屋であることに変わりない。優勝を決めると18番グリーンで比嘉一貴、竹安俊也、佐藤大平、片岡尚之ら同じ東北福祉大出身のプロたち、日大出身の堀川未来夢らまで待ち構え、ウオーターシャワーを浴びせてくれた。「息ができなかったです。あんなに苦しいなんて」。身長188cm、体重98kgというたぐいまれなスケールを持つ「未完の大器」が、ついに開花した。(滋賀県東近江町/加藤裕一)

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