体操ファンに34歳田中佑典が愛された証拠 パリ五輪を逃すも…会場から降り注いだ労いの花束【フォトコラム】

「ありがとうラン」で声援に笑顔で応える田中佑典、左手には抱え切れないほどの花束があった【写真:中戸川知世】

THE ANSWER編集部・カメラマンフォトコラム

体操のパリ五輪代表最終選考会を兼ねたNHK杯最終日が19日、群馬・高崎アリーナで行われ、合計340.392点で4位に入った34歳・田中佑典(田中クラブ)は代表5枠から漏れ、2016年リオ五輪以来の出場を惜しくも逃した。それでも、戦い終えた歴戦のベテランには労いの花束が降り注ぎ、パリ五輪を目指した戦いを感謝とともに終えた。(写真・文=THE ANSWER編集部・中戸川 知世)

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弾ける笑顔で花束を左手に、右手はサムズアップのポーズでスタンドへ伸ばした。

全種目終了後、選手全員で会場を1周する「ありがとうラン」のワンシーン。「佑典選手ー!」「お疲れさま!」。田中は大勢のファンに声をかけられ、客席から色とりどりの花束が降ってきた。長年、体操界を第一線で牽引してきた34歳。ファンから愛された証拠が目に見えた。左手は花束とプレゼントでいっぱいに。抱え切れない分はスタッフが持ち、声援に応える右手はずっと空けていた。

近くで撮影していると、客席の子供に「体操やってるの?」と語りかけ、子供も嬉しそうにうなずく場面もあった。今大会は合計340.392点で4位に。チーム貢献度で代表5枠目の当落線とみられたが、惜しくも涙を呑んでなお、ファンを思い、声援に生の言葉で応える場面が何度も見られた。

兄・和仁、姉・理恵と3きょうだいそろって出場して話題を集め、団体銀メダルを獲得した初出場2012年ロンドン五輪から12年。内村航平らと戦った16年リオ五輪の団体金メダルも経て、2大会ぶりの五輪返り咲きを目指した。「こうやって体操ができることをありがたく思うし、たくさんのサポートがあった。自分一人の力じゃない。五輪に出た時とは違う景色を見られて、体操をやっていて良かった」と晴れやかな表情で語り、これまでの周囲の支えに感謝した。

選手への花束投げ入れは日本体操協会が企画。会場内に花屋も設置され、メッセージカード付きの花束を買ってファンは思いを伝える。受け取った選手の嬉しそうな満開の笑顔も咲いた。ファンとの交流が多く生まれたイベントで、田中の心温まるシーンが印象的だった。

THE ANSWER編集部・中戸川 知世 / Chise Nakatogawa

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