『光る君へ』金田哲のコロコロ変化する表情は斉信にピッタリ “抜け目のなさ”の共通点も?

吉高由里子主演の大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合)。伊周(三浦翔平)と隆家(竜星涼)が矢を放った相手は花山院(本郷奏多)だった。この一件で、一条天皇(塩野瑛久)は伊周と隆家に厳しい処分を命じ、兄弟の不祥事によって定子(高畑充希)もまた内裏を出ることを命じられる。道隆(井浦新)亡き後、伊周、隆家、そして定子は一家没落の憂き目を見る。そんな折、出世欲を隠すことなく、ここぞとばかりに動き出すのが斉信(金田哲)だ。

金田演じる斉信は道長の友人だ。第19回で、出世よりも「漢詩や和歌や読書や管弦を楽しみながら、この先は生きてゆきたい」と語った公任(町田啓太)とは違い、斉信は出世に意欲的だ。第20回冒頭で、騒動の最中、深傷を負って事切れた花山院の従者を見て花山院とともに顔を引きつらせていた斉信だが、道長(柄本佑)のもとへ出向いた時には冷静な面持ちで「先ほど一条邸で院が何者かに射かけられた」と言い伝える。矢を放ったのは伊周と隆家かもしれないと口にした斉信に、道長は「その2人が院のお命を狙ったのか」と問う。すると斉信は「だとしたら、伊周と隆家は終わりだな」とどこか嬉しそうに返した。

斉信を演じる金田は、花山院や道長、貴子(板谷由夏)らの前と仕えている時にその表情をコロコロ変えることで、斉信の抜け目なさをうまく表現している。金田は「君かたり」で、騒動について道長に伝える場面での斉信の行動力について「たぶん、ふだんから思っていないとあの場でパッとできないので、常にそういうことを考えて自分が参議にどうやったら入れるかっていう日常の習慣的な感じで考えていたんじゃないかなって」と答えている。

自らの出世のためにうまく立ち回る斉信について、金田は「本当におそろしい男だなと自分で演じていても思います」と話した。だが演者である金田自身に、斉信の精神がピッタリハマっているように思える。「伊周、隆家、ひいては道隆さんにも本当にすみません。ただその分、斉信は偉くなりますっていう感じですかね」という金田の言葉には、芯から斉信を演じてきたことがうかがえる。

そんな斉信が唯一ペースを乱されるのがききょう(ファーストサマーウイカ)だ。ききょうの前では斉信の自信家で策略家な顔が崩れることが多々ある。第20回では、斉信がききょうに「中宮は見限れ」と伝えていた。伊周らの一件で、定子の立場が危うくなる中、斉信は気になる女性であるききょうを自分と同じ潮流に乗せたいのだ。

ききょうとの関係性について、金田は「だから結局、振り回されているのはこっちなんですけど」「遊んでやるつもりが本気になっちゃってますね」とコメント。今後、斉信が定子のもとから離れないであろうききょうの気をどのように引こうとするのか、斉信とききょうとの関係性も気になるところだ。

(文=片山香帆)

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