「プーチン氏の逃げ道は中国しかない」 切羽詰まったあげく「永遠の友情」を演出

19日のフジテレビ系「日曜報道 THE PRIME」(日曜午前7時30分)は、16日に行われた中国・習近平国家主席とロシア・プーチン大統領の首脳会談について議論した。外交・安保通のゲストからは軍事面・経済面で中国への依存を深めざるを得ないプーチン氏の苦境を指摘する見方が相次いだ。

自民党の松川るい国防部会長代理は「中露連携の次元がもうひとつ不可逆的・中長期的に上がった。ロシアは中国なしには生きていけない経済になっている。(対ロ)制裁が効いているからこそ、逃げ道は中国しかない状況だ」と指摘した。

ジャーナリストの櫻井よしこ氏(国家基本問題研究所理事長)は、「ロシアは、ウクライナ戦争で疲弊した、ありとあらゆる側面を中国に支援してもらわなければにっちもさっちもいかないところまで来ている。切羽詰まったあげくの永遠の友情の演出だ」との認識を示した。

以下、番組での主なやりとり。

松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):
今回の中露首脳会談の共同声明で福島第1原発の処理水について「核汚染水」という表現が盛り込まれた。科学的根拠を横においてロシアが中国の主張に同調した形だ。

櫻井よしこ氏(ジャーナリスト、国家基本問題研究所理事長):
ロシアは先に「台湾は中国の一部」ということを初めて言った。それまでは言っていなかったのに。今回の「核汚染水」の表現も中国の意向を受けて、中国と同じ立場に立つということだ。それだけウクライナ戦争で疲弊した、ありとあらゆる側面を中国に補ってもらい、支援してもらわなければ、ロシアはにっちもさっちもいかないようなところまできている。切羽詰まったあげくの永遠の友情の演出だ。

梅津弥英子キャスター(フジテレビアナウンサー):
プーチン大統領は首脳会談後の記者会見で、ロシアと中国の貿易について「決済全体の90%はすでにルーブルと元で行われている」と強調した。ロシア政治に詳しい慶應義塾大学の広瀬陽子教授は「ロシアは欧米による制裁でドルが枯渇。アメリカによる二次制裁を軽減したい意図がある」と分析している。

松川るい氏(自民党国防部会長代理・参院議員):
今回の首脳会談で非常にはっきりしたことがある。中露連携の次元がもうひとつ不可逆的に中長期的に上がったことが明らかになったということだ。二国間貿易の90%がルーブルと元でできる、つまりドル決済にもう依存しない世界ができている。ウクライナ戦争前と比べると、ロシアと中国の貿易は60%伸びている。ロシアは中国なしにはもう生きていけない経済になっている。(対ロ)制裁が効いているからこそ、逃げ道は中国しかないという状況だ。プーチン氏と習近平氏の2人が仲良しだとか、40回も会っているとか、そういう話ではない。ロシアという国がもう相当中国に中長期的に依存することになりつつあるのではないかという懸念を持つ。

梅津キャスター:
台湾の頼清徳新総統が日本と台湾の関係について「私たちは「同生共死」」と発言。中国語で「共に生き共に死ぬ」という意味だ。「台湾有事は日本有事、日本有事は台湾有事」とも発言し、安全保障面を含めたあらゆる面で日本と一層の連携強化を図る考えだ。

松山キャスター:
この発言に対して中国は、日本を巻き込んで独立を図る動きだ、と非難している。頼清徳氏は日本とこれまで以上の深い関係を望んでいるようだ。日本はこれにどう応えるべきか。

櫻井氏:
頼清徳氏の危機認識は非常に正しい現状認識だ。それが欠けているのはむしろ日本だ。日本も安保戦略などを発表して、いろいろ危機に対応する構えは見せ始めたが、私たちが想像する以上の危機がある。頼氏が「運命共同体」ということを言った。それはよほどのことなのだと理解して、こちら側も対応しなければいけない。(台湾の)澎湖島(周辺)にどんどん中国の戦闘機が飛び立っていた。国家基本問題研究所では総合安保戦略ということで特別研究チームをつくって衛星画像から中国が軍事基地をどのように動かしているか、この2・3年、調べた。台湾に対して(の動きが)ものすごい。陸軍も空軍も海軍も今までの基地をだいたい西に150kmほど移して台湾の正面へ。台湾の正面というのは180kmぐらいなのだが、そこに空軍の基地を作り、海軍の基地を作り、陸軍の基地作り前方展開する。毎日毎日演習している。ただの訓練のように見えるが、本番になったらすぐに台湾に攻撃を仕掛けることができる。中国大陸の台湾の正面に三軍の基地を集中させ、最新の装備を入れて、そこを拠点に三軍が毎日訓練している。この訓練がいつ実践になるかもしれない。国家基本問題研究所では、これを画像でとって発表している。こういう現状があることをふまえて頼氏の言葉をかみしめなければいけない。日本としてすべきことは、第一にアメリカに「曖昧戦略はもうやめましょう」ということ。ロイターが台湾とアメリカが海上で合同軍事演習をしていたと報じたが、アメリカ軍当局は発表していない。まだ内緒にしている。こういう対応をやめて、もうオープンに「台湾を助ける」と、曖昧戦略をやめて明確にしてほしいと日本は言うべきだ。その上で日本もできることをすべきだ。日本がまずやるべきことは、尖閣を守るためコーストガード(海保)レベルで一緒にやる。その上で日本国内で議論して、海上自衛隊が入るかどうかをきちんと決めていかなければならない。

松山キャスター:
台湾の新政権は日本に対して協力してほしいという気持ちが相当前に出ているようだ。

橋下徹氏(弁護士、元大阪府知事):
台湾は大切なパートナーだ。櫻井さんが言うように、日本がやるべきことはしっかりやらなければいけない。政治家には注意してもらいたい。ロシアの話でも出たが、日本の力、継戦能力をしっかり見極めた上で、継戦能力がない中で粋がった発言をすることだけは絶対やめてほしい。ロシアによるウクライナ侵攻でも西側諸国の政治家はロシアの継戦能力を完全に見誤った。あと5年、10年、ロシアが継戦能力があるとして、ロシアは完全に国際法違反で非難に値するのだが、現状はどうかと言えば、ウクライナの一般市民がどんどんどんどん命を落としている。こういう状態にしないためにも、まずは日本の力をしっかりつける、継戦能力をつける。残念なことに、いまは沖縄県民の避難計画すらない。沖縄県にシェルターもない。防衛力強化は必要だが、こんな中で威勢のいい言葉だけを言うのは、むしろ台湾の人にも迷惑がかかる。台湾がいざという時には日本が一緒に死んでくれるのだと思って強気になってしまったら、えらいことになってしまう。もちろん台湾をサポートすることは必要だ。中国の指導者は偉かったなと思う。鄧小平氏は韜光養晦といって、自分たちが力をつけるまではずっと黙っている。力をつけてからアクションを起こしに来ている。政治家の皆さんには力をつけるまで粋がるのはやめてもらいたい。

松川氏:
今の話は正しいと思う。静かに協力を深めていくことが大事だ。台湾は日本にとり戦略的に非常に重要で、台湾が今のような強権的な中国の支配下に置かれることになれば、中国に日本の生殺与奪権を握られてしまう。台湾はシーレーンだからだ。もちろん歴史的な紐帯もある。頼清徳新総統の「共に生き共に死ぬ」という発言は比喩だと思う。しかし、それほどの重要性があって、であればこそ、必ず台湾有事を抑止するために何がベストな方法なのかを現実的かつ真剣に考えて、日米同盟でしっかり支える。静かに協力を深めていくことが必要だ。

© FNNプライムオンライン