〈鹿児島知事選〉告示まで1カ月、一騎打ちの見込みが三つどもえに…構図が変わり、投票への影響は? 「新体育館」以外の争点にも注目

 6月20日告示の鹿児島県知事選まで1カ月。これまで2期目を目指す現職の塩田康一氏(58)に、新人で元自民県議の米丸麻希子氏(49)が挑む一騎打ちが見込まれたが、新人で市民グループ共同代表の樋之口里花氏(52)が名乗りを上げて三つどもえの構図となった。3人とも現時点でマニフェスト(政策綱領)を発表していないものの、争点化が見込まれる項目は広がりを見せている。

 「世界に誇る一等地に体育館を建てるのは、鹿児島が国際観光都市に発展する可能性を台無しにする」。4月5日、県庁で出馬会見を開いた米丸氏は、県が鹿児島港本港区ドルフィンポート(DP)跡地に計画する新総合体育館の事業見直しを最大の公約に掲げた。

 新体育館の必要性は認めつつ、最大313億円に膨らんだ事業費を問題視。「規模や機能、場所が本当に適切か見直す必要がある。県民に自分事として考えてほしい」と訴えた。原子力政策や西之表市馬毛島での自衛隊基地整備については、塩田氏と大きな違いは打ち出さなかった。

 告示1カ月が迫る今月16日、出馬を表明した樋之口氏は「鹿児島の問題は、体育館だけではない」と会見で真っ先に指摘した。九州電力川内原発(薩摩川内市)の運転延長の是非を問う県民投票を知事が見送ったことを「公約違反。私たちの声を聞こうともしなかった」と批判。馬毛島の基地整備に反対の姿勢を示す。塩田氏と米丸氏では二つの問題が争点にならないとし、「新たな選択肢を県民に示したい」と強調した。

 新体育館の必要性には理解を示すものの、DP跡での整備には景観への影響や防災面を理由に見直すべきとの考えだ。

 塩田氏は17日の定例会見で知事選の争点を問われ、「少子高齢化で人口が減少する中、地域をどう維持・発展させていくかが大きな課題だ」と回答。若い人が地域で生活できるよう稼ぐ力を向上させることや子育てしやすい社会をつくることが必要とした。

 新体育館事業について、「有識者や県民の声を聞き、議会で議論を積み上げてきた」と強調。県民の反対意見には「丁寧に説明していく」と述べた。県民投票を見送った対応にも「科学的、技術的な検証をしっかり県として行い意見が集約された」と語り、公約違反ではないと反論した。

 選挙戦の構図の変化を、県議の一人は「反現職の票が割れることになって現職が有利になった」とみる。ただ別の県議は「樋之口氏の支持層はそもそも、塩田と米丸のどちらにも票を入れない。マニフェストが重要になる」と話した。

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