山本尚貴vs岩佐歩夢、白熱したバトルの裏にあった“それぞれの誤算”/SF第2戦オートポリス

 5月19日にオートポリスで行われた2024全日本スーパーフォーミュラ選手権第2戦決勝。上位争いはピット戦略が分かれ、見どころ盛りだくさんの展開となった。

 その中でもレース後半に白熱したのが、参戦15年目を迎える山本尚貴(PONOS NAKAJIMA RACING)とルーキーの岩佐歩夢(TEAM MUGEN)の2番手争いだ。お互いに異なる戦略を取りつつも、レース終盤まで白熱のバトルを展開した。最終的には岩佐が34周目のナカヤマ精密(1)コーナーでオーバーテイクを決めて、バトルに決着がついたが、そこに至るまでにはさまざまな思惑と誤算があった。

■「ストレートスピードが遅かった」岩佐歩夢

 ポールポジションから初優勝を狙ってスタートを切った岩佐だが、ナカヤマ精密コーナーまでに2台に抜かれて3番手に後退。そこから前を走る山本を攻略しようとするも、決め手に欠く展開が続いた。

 山本が10周目にピットインしたことで、2番手に浮上。そのままオーバーカットを狙いにいく作戦に出て、トップの牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)と同じ24周目にタイヤ交換を行った。両者とも山本とのギャップを見てピットストップのタイミングを決めたというが、牧野は山本の前でコースに合流できたものの、岩佐に関しては逆転は叶わなかった。

 そこからフレッシュタイヤの利点を活かしてオーバーテイクを仕掛けるが「ストレートスピードに差があって、なかなか抜けかった」と岩佐は語る。

「タイヤのポテンシャルも違ったので、ストレート以外はどの区間も自分の方が速い状態でした。ただ、ペースが良かったとしても、(前のクルマに接近して)ダーティーエアになると、今はどのフォーミュラカテゴリーになっても抜けないので、勝負をかけにいくまではタイヤをしっかりと守って、詰めるところは詰めるというのを繰り返していました」

「でも、OTSを使ってもストレートで(差が)詰まらないというような感じだったので『これは(簡単に)抜けないな』と判断してからは、1回バックオフしてタイヤを1回クールダウンして、一気にセクター3で詰めるという形を取りました」

 そこで岩佐は山本を攻略するためにセクター3からの組み立てを行なっていく。

「(最終コーナーを立ち上がった時点で)距離がかなり近くないと抜けないというのは分かっていたので、その距離に持ち込むためにセクター3を速く走る。そのためにバックオフしてタイヤをクーリングさせる時間を作ってアタックしたような感じでした」と岩佐。それで勝負をかけたのが34周目に入るメインストレートだったというが、かなりギリギリのところでのオーバーテイクだったという。

「でも、あれだけ最終コーナーで近づいて立ち上がって……多分、山本選手はあの時OTSは使っていなかったんですけど、こっちはOTSを使っているのに、ストレートエンドで同じくらいのスピードになっていました。それくらいストレートスピードが劣っていたと思います。ただ、あそこはブレーキング勝負なので相手のラインをある程度絞って、こっちが有利な状況を作って抜くことはできましたけど、あのストレートスピードからいくと、かなりキツい状態でした」

 ライバルと比べてストレートスピードが劣っているという点は予選の段階からあったとのこと。岩佐も「要因が何だったのか、チームと共に究明していきたい」と語った。

2024スーパーフォーミュラ第2戦オートポリス 山本尚貴(PONOS NAKAJIMA RACING)

■「レースペースがなかった」山本尚貴

 一方の山本は、スタートで岩佐を抜いて2番手に浮上するも、6周目あたりからトップを走る牧野との差が広がり始めた。上位陣のなかでは一番最初にピットインし、アンダーカットを狙ったが、思うようなレースペースで走ることができなかったようだ。

「勝つために相手と違うことをしないといけないので、早めにピットに入りました」と山本。アンダーカットの戦略を選ぶと、タイヤ交換直後はペースを上げられる一方で、ピットに入っていない後続集団を自力で抜いていかなければならないが、それも承知の上での作戦だったという。

「ただ、うまくいかなかったのは、そもそもの自分のペースが悪かった。ペースが良ければ隊列の最後のクルマも自分で追い抜いていってクイーンエアで走れていたので、アンダーカットが可能なところまで持っていけていたと思いますけど、途中インパルのクルマ(ベン・バーニコート)に引っかかったのが4~5周あったので、そこがちょっともったいなかったなと思います」

 レース後半の岩佐とのバトルは「抑えていれば相手もタイヤが消耗すると思ったので、もうちょっと抑えたかったのですけど、相手を抑える前に自分のペースが落ちてしまっていたので堪えきれなかったです。抜かれてからのペースを見ると『良く押さえていたな』と思うくらいペースが違いました」と山本。

「正直4位で終われて本当に良かったなと思うくらいペース的には負けていました。予選は僅差のなかで3番手を獲れたのが良かったですけど、決勝に対してはタイヤに優しいクルマを作れなかったし、運転もできなかったので、そこは反省と課題ですね」と、決勝ペースの改善に目を向けていた。

投稿 山本尚貴vs岩佐歩夢、白熱したバトルの裏にあった“それぞれの誤算”/SF第2戦オートポリスautosport web に最初に表示されました。

© 株式会社三栄