ピーマン産地 基盤強固に 最新技術導入し実証 全農いわて

ヤシガラを使った培地で育てられているピーマン。最新機器を使い液体肥料を供給し、リサイクルされるシステム

 JA全農いわて(高橋司本部長)は、先進技術を取り入れたピーマン栽培の実証農場の本格稼働に乗り出した。ハウス内で土を使わない培地に苗を植え、液体肥料を循環させる手法で栽培を行い、収量倍増に向けた省力化技術の確立を目指す。最新技術を活用して中山間地域の農家に還元することで、生産と所得の拡大につなげたい考えだ。

 JA全農いわては「2030年のあるべき姿」の中で、中山間地域での施設栽培による集約的高収益園芸品目の生産拡大を推進している。ただ、生産者の減少や耕作放棄地の拡大、近年の気象状況などにより生産基盤の弱体化が危ぶまれている。こうした中、夏秋期では全国1位を誇るピーマン産地の本県で、さらなる生産性向上と生産拡大により農家の所得向上につなげようと実証試験に乗り出すことにした。

 施設は紫波町片寄地内に栽培ハウス2棟(929平方メートル)、作業ハウス1棟(162平方メートル)を整備。土ではなくヤシガラの培地に苗を植え、最新の機器を使って水や肥料を混合した液体肥料を自動で供給、循環させる方式で栽培する。液体肥料のうち3割程度は作物に吸収されずに培地から外へ流れ出る見込みで、排液となった液体肥料をリサイクルするシステムも備えている。ヤシガラはおおむね3年をめどに交換する。事業費は7100万円。

 4人の職員が運営に当たり、3月下旬に定植し12月ごろまで収穫を行う予定。試験では栽培方式のピーマンへの適応性や排液リサイクルシステムによる化学肥料の低減効果、複合環境制御による栽培の高度化などについて調査。県内の年間平均収穫量の2倍に相当する栽培ハウス2棟で20トンの収穫を目指す。

 24年度以降には、太陽光発電システムや蓄電システム、自動で収穫できるロボットの導入などにも取り組む予定。

 JA全農いわて園芸部の平坂健宏生産振興戦略室長は「土づくりの必要がなく、水や肥料を自動で与える機械や吸収されなかった肥料を再利用する技術が取り入れられている。県内での普及を見据えてさまざまな実証試験を経て農家の手取りの向上につなげ、園芸産地の基盤を一層強固にしたい」と意欲を示している。

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