【とやま清流マラソン】走れるの当たり前でない 金沢マラソン初代王者・七尾の一花さん2位

震災後も練習を続けて2位でゴールした一花さん=富山市の神通川水辺プラザ自然ふれあい学習館前

 「走れるのは当たり前じゃない」。19日に行われた第21回とやま清流マラソンで、能登半島地震で被災した富山、石川のランナーは大会に参加できる喜びをかみしめた。「走ることで前を向く力に」との思いで、断水や家屋損壊で不便な生活を強いられながらも練習を続けてきた。一日も早い復興を願う気持ちを原動力に、コースを駆け抜けた。

 「走れること、大会に出られることは当たり前じゃないと気付いた」。初出場した七尾市の一花建(いっかたける)さん(33)は2時間35分13秒で完走し、2位でゴールした後でこう語った。

 一花さんは2015年の第1回金沢マラソンの優勝者。元日は初詣で地元の神社を訪れていた際に被災した。鳥居が倒壊し、自身が立っていた場所から約2メートル後ろに崩れてきたという。

  ●トンネルで練習再開

 自宅は大きな損壊はなかったが、道路は至る所が陥没し、マラソンの練習はできなくなった。そんな状況でも「くよくよしても仕方ない」と考え、2月ごろから土日に金沢市の金沢外環状道路山側幹線(山側環状)の卯辰トンネルへ行き、走り込みを再開した。フルマラソンの大会は今年に入って3回目で「良い走りができた」と笑顔をみせた。

  ●七尾・山崎さん Tシャツで能登応援を

 能登和倉万葉の里マラソンの帽子と能登半島すずウルトラマラソンのTシャツを身に着けて走った七尾市の山崎裕明さん(63)は「全国の皆さんに能登を応援してほしい」と語った。ランナーや沿道から「頑張って」「応援している」と声を掛けられたといい、今後も各地の大会で能登をアピールしていく考えだ。

 震災で自宅の壁にひびが入り、床の一部が持ち上がった。断水が長期化したため3月まで練習は全くできなかった。2カ月ぶりにランニングを再開すると、汗をかいて前向きな気持ちになれたと振り返る。

  ●津幡・東さん「がんばろう!かほく」

 津幡町の東洋一さん(49)は「がんばろう!かほく」と記されたオリジナルTシャツを着て走った。ゴール後は、一緒に参加したいずれも金沢市の奥真由美さん(45)、水口勝志さん(42)、山崎さんと健闘をたたえ合い、ふるさとの復興を思う気持ちを新たにした。

  ●氷見・池永さん 21日から被災地の支援

 マラソン歴10年となる氷見市の公務員、池永博一さん(48)は完走後、「マラソンは走るのも諦めるのも自分次第。手を抜きそうになる心を律することを学んだ」と話した。21日から公費解体申請受け付けの支援のため、石川県へ向かう。被災地で困っている人のために働きたいとし、マラソンで培った粘り強さを発揮して、災害支援に貢献する。

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