中国の都市と農村の「年金格差」、最大50倍にも、戸籍が支給基礎に―海外メディア

中国における都市と農村の「年金格差」を海外メディアが取り上げた。年金制度が戸籍を支給の基礎としているためで格差は最大50倍近くにも達する。写真は江蘇省の農村部。

中国における都市と農村の「年金格差」をロイター通信が取り上げた。年金制度が戸籍を支給の基礎としているためで格差は最大50倍近くにも達する。農村部の受給者には大都市に出稼ぎに行き、経済成長を支えて中国を世界最大の輸出国に押し上げることに貢献した元農民工も多く含まれている。

ロイター通信によると、中国の年金制度は「戸口(戸籍制度)」が基礎になっており、都市戸籍と農村戸籍の取得者で支給額や社会福祉サービスに大きな差が生まれている。例えば、都市戸籍の年金月額は、それほど発展していない省でも毎月約3000元(約6万6000円)、北京や上海なら約6000元(約13万2000円)となっている。

これに対し、1億7000万人に達する農村戸籍の年金月額は、今年3月に政府が最低支給額を引き上げても、ようやく20元(約440円)から123元(約2700円)になったにすぎない。

中国陝西省西安の路上で30年にわたって路上で自家製パンを販売していた67歳のフー・デジさんは、できることならそろそろ楽な生活を送りたかった。モップがけをしながら取材に応じてくれたフーさんは「誰も私たちの面倒を見られない。2人の子どもに負担はかけたくないし、国は(少額の年金以外)ビタ一文も恵んでくれない」と明かした。

フーさんたちは20世紀末に農村から都市に大挙やってきてインフラ建設や工場労働に携わって中国を世界最大の輸出国にした世代だ。だが、人生の終盤になって生活水準が大幅に低下するリスクにさらされている。

中国政府が彼らのために中国がもっと強固なセイフティーネット(安全網)を整備できなかった一番の理由について、政府アドバイザーの一人は「経済が『中所得国のわな』に陥るのを恐れ、資源配分にゆがみが生じた結果」と解説した。

「中所得国のわな」は新興国が低賃金の労働力等を背景として飛躍的に経済成長を遂げ、中所得国に達すると人件費上昇によって工業品の輸出競争力が失われて成長が鈍化する傾向を指す。

都市と農村の格差は年金だけにとどまらない。中国社会科学院の調査によると、公的医療予算の配分でも都市戸籍の労働者が受ける水準が農村戸籍の約4倍に上るケースがある。社会科学院のエコノミストで人民銀行アドバイザーを務めたカイ・ファン氏が執筆した論文によると、農村部では60歳超の住民の16%余りが「不健康」で、都市部の9.9%よりずっと多い。

中国では伝統的に子どもが老いた両親を支えることが期待されてきた。しかし、米国の全人口(約3億4000万人)に匹敵する規模となる向こう10年間で定年を迎える世代の大半は、1980年から2015年まで実施された「一人っ子政策」のために子どもが1 人しかいない。そこに追い打ちをかけているのが若者の高失業率で、カイ氏は「高齢者の世話で家族を頼りにすることはもはや非現実的になっている」と記した。(編集/日向)

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