KNT-CTHD24年3月期決算、75億黒字も増収減益 新・中期経営計画では地域共創や訪日強化し80億円の黒字目指す

KNT―CTホールディングス(HD)が9日に発表した2024年3月期通期決算(23年4月1日~24年3月31日)の連結純利益は、75億4000万円(前期117億9000万円)となった。コロナ禍に関連する受託事業における特需がなくなるほか、海外旅行の回復が遅れ、42億5000万円の減益となるなど、増収減益となった。25年3月期は、特別損失が減少するも、営業外収益の減少が予測されることから75億円の純利益を見込む。今後に向けては、2024~26年度までの新・中期経営計画を進め、26年3月期には80億円の純利益を目指す。

売上高は、前期比1.3%増の2554億2700万円、営業利益は同36.3%減の72億7200万円、経常利益は同33.8%減の79億7700万円だった。旅行事業は、コロナ禍を経て海外旅行の回復による増収など需要が伸びた。一方、コロナ関連BPOなどの受託事業の特需は縮小して減収となった。

2025年3月期の連結業績予想は、売上高が2850億円、営業利益が75億円、経常利益が75億円を見込んでいる。

新・中期経営計画では地域共創事業と訪日事業を成長領域として躍進狙う

5月14日に開かれたIR説明会では、新・中期経営計画を説明。コロナ禍に策定した2021~25年度までの中期経営計画を見直し、「信頼回復と持続的成長に向けたグループ一体運営の強化」をテーマに掲げながら、コロナ禍における過大請求問題などからの信頼回復に向けて引き続き企業風土改革を進める。同社の米田昭正社長は、「近畿日本ツーリスト(KNT)とクラブツーリズム(CT)それぞれの強みを融合し、一体となって成長領域の創出に務めるとともに、グループとしての事業運営のさらなる効率化を実現すべく、両社の人的資源、システムなどの事業運営基盤の一体化をさらに推進する」と述べた。今後の成長領域としては、地域共創事業、訪日事業を挙げた。

米田社長

従来の中期経営計画での成果としては、コスト構造改革における組織改編ではKNT地域会社の一社化、事業戦略におけるKNT個人旅行事業の改革では店舗販売の縮小(18年度143店舗⇒23年度24店舗)、財務目標における債務超過の解消などを紹介した。

新・中期経営改革では、社会から認められる信頼づくりとして、信頼回復に向けた企業風土改革やサステナビリティとしてマテリアリティへの取り組みを推進する。成長を実現する領域づくりでは事業戦略を見直し、事業ポートフォリオの再設計やBtoC事業の価値向上に取り組む。成長を支えるインフラづくりでは、人的資源を最大活用した人財戦略やグループ共通システムの整備を行いIT、DX化を推進する。2026年度の連結決算では、営業利益が85億円、当期純利益が80億円の達成を目指す。

同社の小山佳延専務は、社会的な存在意義の問い直しとして、KNT-CTグループパーパスを制定したことを紹介。新たなパーパスとして「まだ見ぬところへ、まな見ぬ明日へ」を社内に浸透させ、旅そのものの進化や、新しい価値の創造や提供を図る。今後における信頼回復に向けた企業風土改革では、社内意識調査やタウンホールミーティングの定期実施のほか、KNT₋CTアカデミーにおける社員教育、管理職人材像・登用基準のグループ共通化、ジョブローテーションの促進、リスク管理の実効性強化に取り組む。

小山専務

事業ポートフォリオを見直しでは、地域共創事業と訪日事業を主軸に据えながら、地域共創・訪日事業が全売上高に占める割合を2023年度の8%から、27年度以降の早期に20%にまで引き上げる。小山専務は、「地域商社のような存在となりながら、川上でITを使ったプラットフォーマーではなく、川下で地域に入って一緒に汗をかいていきたい」と語った。コロナ関連の受託事業は大幅に減ったが、今後は地域コンテンツを開発するなど、モデル地域を設定し、KNT₋CT独自の地域活性化モデルを構築する。訪日事業においても、地域共創事業との連携で地方誘客に注力し、地方への大きな流れを生み出していく。

優先株式の償還の見通しについては、同社の三宅貞行専務が2026年6月での償還に向けて創出資金の9割程度の蓄積が進んでいることを説明した。自己資本比率は、コロナ前の2018年度の19%から大幅増、前年から7.5%増の33.4%となっている。

このほか、人員の在り方について、米田社長は「今年の4月には157人を大量採用したが、来年4月は250人の採用を目指している。キャリア採用も今年度に100人程度を採用していきたい」と積極採用の方向性を示した。インバウンド増加などを追い風に外国人採用による人材強化も検討していく。

店舗展開については、24店舗まで減らしたが、コロナ禍を経て相談需要が増加するなど大幅な黒字化となっており、有効である場所ではまた再度開けていくことも検討する。

同社は、5月9日には、米田昭正社長の後任として、小山佳延専務が昇格する人事を発表している。米田氏は代表権のある会長に就く。

取材 ツーリズムメディアサービス編集部

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