イラン大統領と外相搭乗のヘリが山中で不時着、安否不明 現場特定か

Parisa Hafezi Elwely Elwelly

[ドバイ 20日 ロイター] - イランのライシ大統領とアブドラヒアン外相を乗せたヘリコプターが19日、同国北西部アゼルバイジャン国境地域からの帰途、山中に不時着する事故があった。イラン当局者が明かした。救助隊は現場に到着できていないという。

当時、現場は濃霧だったという。匿名の当局者は大統領や外相の生命が「危険にさらされている」とし、「まだ希望を持っているが、墜落現場から入ってくる情報は非常に懸念される」と明かした。

国営テレビは当局者の情報として、少なくとも乗客1人と乗員1人が救助隊と連絡を取っていると報じた。アナドル通信によると、トルコの無人機がヘリコプターの残骸とみられる熱源を特定し、場所の座標をイラン当局に伝えた。

イラン最高指導者のハメネイ師は、国政に混乱は生じないと述べた。

ライシ氏はこの日、アゼルバイジャンとの共同プロジェクトであるダムの開所式に出席するため国境地域を訪れていた。

国営メディアは悪天候が不時着の原因で、救助活動が困難になっていると伝えた。国営通信IRNAによると、不時着したヘリは米国製のベル212だった。

陸軍と革命防衛隊が捜索活動に投入されている。現地からの報道によると、暗くなって雨が降り始めたが、捜索は続けられている。ただ、地面がぬかるんでいるため活動が難しいという。また、現地の軍当局者は雪が降り始めたと国営メディアに述べた。

事故を受け、近隣諸国は懸念を表明し、救助協力を申し出た。米ホワイトハウスはバイデン大統領が事故の報告を受けたと発表した。トルコはイランの要請を受け、ドローン(無人機)やヘリ、車両、救助隊を派遣したと発表した。欧州連合(EU)は衛星マッピング技術を提供した。

<ハメネイ師の後継者とされる強硬派>

イランは核開発計画やウクライナでの戦争を続けるロシアとの軍事関係深化を巡り、国際社会から圧力に直面している。また、昨年10月にイスラム組織ハマスがイスラエルを急襲し、パレスチナ自治区ガザへの攻撃が始まって以来、中東全域でイランに近い組織が絡む戦闘も続いている。

63歳のライシ大統領は2021年に大統領に選出された。就任以来、道徳法の厳格化を命じ、反政府デモを弾圧したほか、核交渉も推し進めてきた。

ライシ氏は85歳になるハメネイ師の後継者の有力候補と見なされ、ハメネイ師もライシ氏の主要政策を支持している。実用主義者とされたロウハニ前大統領の体制とは異なり、現在はあらゆる権力部門が強硬派の支配下にある。

ただ、宗教指導者による統治への抗議と西側の制裁を受けるイラン経済の立て直し失敗で、ライシ氏の立場は揺らいでいるとの見方もある。

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