東京都/都市づくりに緑を積極活用、自然に触れる機会創出を後押し

東京都が「緑」をキーワードにした都市づくりを積極的に進めている。都市部に緑を拡充するため都市開発諸制度を改正し、再開発時に求める緑化率を引き上げた。自然資源を防災に生かすグリーンインフラの導入施設も拡大する。都内で再開発事業や防災・減災を目的とした工事が続く中、都は建築物やインフラなどの整備による利便性や安全性の向上だけでなく、都民が自然に触れる機会も増やしたい考えだ。
同制度は▽再開発等促進区を定める地区計画▽高度利用地区▽特定街区▽総合設計-の4制度で構成。公開空地の確保といった公共的な役割を果たす建築計画を対象に容積率緩和などを定めている。2023年度に改定した規定の大半を4月1日に施行した。
自然と最新技術を融合した都市づくりが進むベイエリアを対象に、緑化率を従来の4割から5割に引き上げた。壁面緑化のほかテラスの植樹なども促し、立体的に緑の面積を増やす。
緑化の効果を測定・評価する取り組みを24年度に始める。対象は23区内に設置する緑化した仮囲い。雨水の浸透状況や付近の温熱の変化、人の心理的影響などを調べる。
都は仮囲いを緑化し調査場所として提供する民間事業者を募集した。仮囲いの設計、工事、維持管理費などは都が負担する(1メートル当たり40万円が上限)。24年度予算に関連経費2億円を新規計上した。評価結果を都心部で再開発を行う民間事業者の参考にしてもらう。
河川関連施設にグリーンインフラを積極導入する。善福寺川緑地(杉並区)にある地下箱式調節池の関連施設などが対象。緑化できていない屋根のほか、建物周辺などで植物を増やす。グリーンインフラ機能を果たすための緑化の規模などを検討し、年度内に方向性を固める。
都は自然を生かしながら河川を整備している。これまで緑を多く取り入れた緩傾斜護岸や、自然石を使った石積み護岸の構築などを進めてきた。24年度から対象施設を広げ、環境に配慮した川づくりを加速する。
都内の緑を守るため「ツリーバンク」の運用も始めた。公園整備に当たり、支障となる樹木を都有地などで一時的に保存し、新たな公園に移植するシステム。都立公園だけではなく、区市町村立公園や民間事業者による緑地整備にも活用する。24年度予算にツリーバンク創設費として4000万円を計上した。

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