【陸上】田中希実が苦悩する世界の猛者との競り合い「本当の意味の壁に当たっていなかった」

田中希実は4位。パリ五輪の参加標準記録突破はならなかった(代表撮影)

〝不安〟との向き合い方は――。陸上のセイコー・ゴールデングランプリ(19日、東京・国立競技場)、女子1500メートルは東京五輪8位の田中希実(24=ニューバランス)が4分7秒39で4位。今大会でパリ五輪の参加標準記録(4分2秒50)突破はならなかった。

険しい表情は葛藤ぶりを物語っていた。この日は序盤から先頭集団でレースを進め、残り700メートル付近で先頭に浮上するも終盤に失速。「ラストは思った以上に足が止まった。並ばれた時にさらに絞り出すような力が今の私にはなかった」と声を押し殺した。

終盤のレース運びは田中が重要視するポイントの1つ。しかし、世界の猛者との競り合いでは苦戦を強いられている。「今までは本当の意味の壁に当たっていなかった。怒りをぶつけたりとかしたら打開できたけど、今は怒りをぶつけるだけで打開できないところに来てしまっている」と複雑な心境を吐露した。

そんな田中が目指すのは世界の第一線で対等に戦える選手だ。田中はかつて本紙の取材に「目的のためにいろんなことを試してチャレンジする前提がある」と切り出した上で「夢をかなえるための犠牲について考える中で『今回の大会では勝てないかも』と考えてしまうと、恐怖を感じることもある。それでも、その時間も含めて1つの夢を実現させるためには必要な時間だと捉えている」。自己実現に向けて不安や恐怖は避けることができないという認識だ。

今後はダイヤモンドリーグを転戦予定。「このまま行くと戦える力じゃない」と危機感をにじませる田中は、苦悩をパリの舞台で好結果につなげることができるか。

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