『純血種の犬は病気になりやすい』という俗説は間違いという研究結果

純血種と雑種の生涯有病率を比較した研究

アメリカのワシントン大学医学部と、テキサスA&M大学獣医学部が中心となって立ち上げ、現在は他にも多くの研究機関が参加している、『ドッグエイジングプロジェクト』という研究プロジェクトがあります。

エイジングと名がついている通り、犬の加齢に伴う健康問題や身体の変化が研究の中心となっています。そのドッグエイジングプロジェクトから、テキサスA&M大学が主導した新しい研究結果が報告されました。

一般的な俗説として、雑種は純血種よりも身体が丈夫で病気になりにくいと考えられています。しかし、アメリカのさまざまな犬種におけるいろいろな疾患の有病率に関する大規模なデータは、非常に少ない状態です。

ドッグエイジングプロジェクトに参加している研究機関である、テキサスA&M大学、パデュー大学、アリゾナ州立大学、テネシー大学、ワシントン大学の研究チームは、純血種の犬が雑種の犬に比べて、特定の疾患の生涯有病率が高いかどうかの調査を行ない、その結果が発表されました。

27,000頭以上の犬のデータから疾患を分析

調査対象となったのは、ドッグエイジングプロジェクトに登録している一般の家庭犬です。同プロジェクトには現在5万頭以上の犬が登録されており、飼い主はアンケート調査への回答や愛犬のサンプル提供によって研究に参加協力しています。

この研究では、犬と飼い主の属性、健康状態、食事、行動、身体活動、環境要因など10項目から構成された質問票への回答が参加者に求められ、最終的に27,541頭の犬のデータが寄せられました。

今回の研究では「健康状態」の項目に含まれる、犬が罹ったことのある疾患が注目されました。最も一般的な25犬種それぞれにおいて、最も多く報告されている10の疾患(怪我も含む)を特定し、これらの疾患の生涯有病率の推定値を、純血種と交雑種で比較したとのことです。

この25犬種は、ドッグエイジングプロジェクトに登録されている純血種の約60%を占めており、登録数の多い順に並べると以下のようになります。

  • ラブラドールレトリーバー
  • ゴールデンレトリーバー
  • ジャーマンシェパード
  • プードル
  • オーストラリアンシェパード
  • ダックスフンド
  • ボーダーコリー
  • チワワ
  • ビーグル
  • ペンブロークウェルシュコーギー
  • ボクサー
  • シーズー
  • ミニチュアシュナウザー
  • パグ
  • ハバニーズ
  • キャバリアキングチャールズスパニエル
  • ヨークシャーテリア
  • グレートデーン
  • グレイハウンド
  • ボストンテリア
  • シベリアンハスキー
  • シェットランドシープドッグ
  • イングリッシュスプリンガースパニエル
  • オーストラリアンキャトルドッグ
  • ドーベルマンピンシャー

上位10種の疾患において純血種と雑種でほとんど差がなかった

25犬種全体で最も多く報告された疾患は以下の通りでした。

  • 歯石
  • 他の犬による咬傷
  • 抜歯
  • ジアルジア(寄生虫)
  • 変形性関節症
  • 季節性アレルギー
  • 耳の感染症
  • 心雑音
  • 歯の破折
  • 白内障

雑種では、白内障と心雑音が足の爪の怪我とチョコレート中毒に置き換わっていましたが、他はほぼ同じでした。

飼い主によって報告された疾患は全部で53種類で、そのうちの26は純血種と雑種の間に有意な差はありませんでした。

53種の疾患のうち13種類については、純血種よりも雑種の方が有意に高くなっていました。同様に53種のうち14の疾患については、純血種の方が雑種よりも有意に高く、特定の犬種では特定の疾患の生涯有病率が高いことも明らかになりました。

このように特定の犬種に多い疾患はあるのですが、健康状態の全体的な診断頻度については、純血種と雑種件はほぼ同等であったということです。

またこの調査で研究者が驚いたことは、他の犬に噛まれたことのある犬の多さでした。犬の咬傷事故の統計はほとんどが対人間の数字で、犬が犬に噛まれたことに関する調査は非常に少ないそうです。

犬から犬への咬傷事故について、どのような要因がリスクとなるのかを明らかにするため、今後さらに調査が必要だとのことです。

まとめ

純血種の犬の生涯有病率は雑種犬と比較して高くはなく、ほぼ同等であったという研究結果をご紹介しました。

要は雑種も純血種も病気に罹る割合は同じなので、どんな犬も定期的な健康診断や予防医療が必要だということですね。純血種の個々の犬種では特定の疾患については、生涯有病率が高い可能性があるので、愛犬の犬種の健康については日頃からかかりつけの獣医さんとよくお話をしておくことが大切です。

《参考URL》
https://doi.org/10.3389/fvets.2023.1140417

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