卓球・女子単 早田ひなは高確率で銅以上…中国の分厚い壁を破れない時代は終わった【パリ五輪メダル有力競技 ココが見どころ】

早田ひな(C)VCG/ロイター

【パリ五輪メダル有力競技 ココが見どころ】

卓球

前回の東京五輪で混合の金を含む4つのメダルを獲得した日本代表。今やメダルを取るだけではファンは納得しない強豪国となったが、そこに立ちはだかるのが卓球王国の中国だ。7月26日開幕のパリ五輪で日本代表はいくつメダルが取れるのか。金はあるのか。卓球コラムニストの伊藤条太氏に展望を聞いた。

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中国は今回、かなりナーバスになっている。2月の世界選手権(韓国・釜山)女子団体決勝が象徴的です。東京五輪女子単金の陳夢(30)が早田ひなに初めて敗れ、世界ランキング(WR)2位(当時)の王芸迪(27)も平野美宇にストレート負け。エース孫穎莎(23)の頑張りにより中国は3-2で辛勝し、試合後に選手たちは泣いていた。あんなシーンは過去に見たことがない。五輪や世界選手権で金メダルが当たり前の王国が、どうにか歴史的敗北を免れたのです。しかし、中国は大舞台で苦戦した後は恐ろしく強い。中国を本気にさせた。そこはやっかいです。

【女子シングルス】

WR上位4人は中国選手。その内シングルスに出場するのは1位孫穎莎、2位陳夢の2人。同5位の早田は上から3番目となり中国選手とは準決勝まで当たらない。準決で勝てば銀メダル以上が確定し、負けても銅メダル決定(3決)戦に回る。4番目の申裕斌(19・韓国)と「3決」で対戦しても早田に分があります。銅以上の確率は高いと見ています。

問題は7月16日付のWRに基づく、7月24日に実施される組み合わせ抽選です。早田が孫と陳のどちらの山に入るか。これからできる奇策があるとすれば、サーブくらいでしょう。卓球は相手の打ち方から回転を判断するスポーツなので、打球の瞬間にラケットの動きを激しく変える、例えばバックスピンとみせかけてサイドスピンをかける、あるいは見慣れない動きで打つなどで、相手に回転を誤認させると有利になります。それで「あれ?」と思わせれば主導権を握れる。孫は2月の世界選手権(1次リーグ)でWR155位のインド選手に負けた。あれは後述する異質ラバーの対策が足りなかったからです。中国選手を慌てさせたら勝機はある。

もう一人の平野は今のところ第8シードで、ドローは同国である早田とは反対の側に入ります。早田が中国の孫と同じ側なら平野は陳夢の側になる。一方、早田と韓国の申は別の側なので、結果、平野は申と同じ側になる。申は平野が絶対に勝てない相手ではないため、早田と「3決」で対戦するという痛し痒しの状況になる可能性もあります。(【卓球・女子団体編】につづく)

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