遊び心を日常に ゲーミング×デイリーユースの融合スマホ『ROG Phone 8 Pro』徹底レビュー

スマホのスペックはどんどん向上しており、最新ゲームを手軽に楽しめる環境も増えてきた。しかしだからこそ、スマホでのゲーム体験を追求したスマホ、すなわちゲーミングスマホの特異さが際立つ時代にもなってきた。

ASUSTeK Computer(ASUS)から登場したゲーミングスマートフォン『ROG Phone 8 Pro』は、まさにスマホゲームについて本気出して考え抜かれた一台。毎年ゲーミングスマホをアップデートしてきたASUSならではの知見が詰め込まれている。

通常モデルの『ROG Phone 8』と、ハイスペックな『ROG Phone 8 Pro』、そして『ROG Phone 8 Pro』に別売の外付けクーラーを同梱した『ROG Phone 8 Pro Edition』がラインナップしている。今回は『ROG Phone 8 Pro』を中心にレビューしていく。

■上品な質感と遊び心を融合

ROG Phoneシリーズは外箱のデザインも特徴だが、今年のパッケージはまるで小さな秘密基地のよう。スマホと別売のクーラー『AeroActive Cooler X』は見た目からして目を引く。赤いハッチを引くと…...箱がオープン。SF映画であればモクモクとスモークが出てくる感じ。こうしたワクワク感の演出は、スペックだけではわからない魅力だ。

『ROG Phone 8 Pro』は6.78インチのAMOLEDで見応えもよく、黒がより黒に見える。現行のスマホでは最高値となる165Hzのリフレッシュレートに対応し、さらに1~120Hzの範囲であれば可変リフレッシュレート(LTPO)にも対応。LTPOは見やすさや省電力化に貢献している。

特徴的だなと感じたのは、背面のデザインだ。ゲーミングスマホといえばもっと未来的で賑やかなデザインを想起するが、本機はブラックを基調としたシンプルなデザインになっている。光っている部分は「Anime Vision」というギミックで、詳しくは後述するがこちらも良いアクセントだと感じた。昨年のモデル『ROG Phone 7 Ultimate』の背面と比べると、いかに今年のモデルがいい意味で「普通のスマホっぽい」かがわかる。

改めて背面を見てみると質感はテカりを抑えたマットな風合いだが、ガラスのようなきらびやかな反射も見える。指紋は付きにくいがかなり滑りやすいと感じた。逆に側面は指紋のあとが残りやすいものの、滑りにくく持ち心地は良好。やや大型のスマホではあるが、こうして側面を掴めばホールド性も確保できる。

■遊ぶ背面ギミック『Anime Vision』

前述した背面の発光ギミック『Anime Vision』について、簡単に紹介しよう。本機の背面には341個のミニLEDが搭載されており、様々なパターンで光らせることができる。シンプルな背面デザインではあるが、このギミックによってゲーミングらしい遊び要素を楽しめるわけだ。

『Armoury Crate』アプリ内の『Anime Vision』の項目から設定可能。画面オン時、通知時、ロック時、ゲームプレイ時など、様々な状況に応じてライティングのデザインを変更できる。また、一部はユーザー自身がライトのカスタムも可能で、これが本機の魅力のひとつにもなっている。手書き、もしくは英字フォントでライティングを作り込むことができる。いざやってみるとドット絵を作る感覚で手軽に楽しめた。

イラストを描いてみたが、なかなかユニークな見た目に。デフォルトの設定もユニークで、例えばカメラ撮影時はカメラのアイコンが表示されたり、セルフタイマー時は秒数がカウントされる。また、平時であれば画面オフ時に時刻やバッテリー量を表示でき、簡易的なセカンドスクリーンのように扱うことも。

ちなみに、この機能は同社のゲーミングPC『Zephyrus』シリーズから着想を得たものだという。『Zephyrus』はゲーミングPCでありながら普段使いも視野に入れたスタイリッシュさが持ち味だが、こうした「日常×ゲーミング」の組み合わせは、本機にも強く反映されている。

■ではゲーミングスペックは日常使いでどう映える?

ROG Phone 8シリーズのキャッチコピーは「ゲームは日常というフィールドへ」となっている。ゲーミングというと未来っぽさや七色ライトを想像しがちだが、そうではなくもっと日常生活に存在するスマホになろうとしているのが本機だ。

デザインについてみていくと、その姿勢がよく感じられる。例えば発光する『Anime Vision』は便利でユニークだが、光らせたくないという人もいるだろう。そんな時は設定からオフにすればOK。光っていないときにLEDが目立たないというのが、デザインとしてもよく考えられている。実際、光らせないで使えば普通の黒いスマホにしか見えないだろう。FeliCaや無線充電への対応も、デイリーユースにはありがたい。

一方で使い心地やソフトウェアの面では、スペックの高さによるサクサク動作を実感できる。今回試用している『ROG Phone 8 Pro』は、SoCにSnapdragon 8 Gen 3を搭載し、18GBのRAMと512GBのストレージを搭載している。参考までに、iPhone 15 Pro MaxのRAMは8GB、今春登場したサムスンのフラッグシップスマホ『Galaxy S24 Ultra』のRAMは12GBだ。

こうした高いスペックはゲームプレイを想定したものではあるが、アプリの起動やブラウザのスクロールといった一般的な用途でももちろん活躍してくれている。ある意味でやり過ぎスペックというか、ポルシェで近所のコンビニまで出かけるような贅沢体験ともいえる。

日常スマホとして使うなら、カメラ性能も重要。本機のカメラ構成は50MPの広角(メインカメラ、35mm換算で23.8mm相当/F値1.9)+13MPの超広角(12.7mm相当/F値2.2)+32MPの光学3倍望遠(65.3mm相当/F値2.4)のトリプルレンズとなっている。上のオムライスは広角カメラで撮影したが、暗所ながらシズル感も良い。

また、上記のメインカメラのレンズのみ、6軸のジンバルモジュールが搭載され強力な手ぶれ補正が実現している。正直、この広角っぷりであれば手ブレの恩恵はあまり感じないが、ロスレス2倍ズーム時はジンバルのおかげで片手持ちでも安定した写真が撮影できた。超広角は画角120度で自動歪み補正アリ。

さすがに四隅は流れているが、不自然な歪みは出ていない。個人的には常用できる画角と画質だと感じた。望遠カメラモードで遠くの鳩を撮影してみたが、羽の質感やおなかのモコモコ感もよく捉えられている。こちらにも手ぶれ補正が付いている。『HyperClarity』による10倍デジタルズームを使えば更に寄れる。さらに最大30倍までデジタルズームが可能だ。

正直、カメラ性能についてはスタンダードな印象だが、前モデル『ROG Phone 7 Ultimate』は望遠レンズをもっていなかったため、そこを抑えただけでも日常スマホを意識するようになったといえるだろう。旅行先や動物園などに持っていっても、より幅広い撮影が楽しめるはずだ。

■さらなる冷却で処理性能を大幅アップ

ここまで『ROG Phone 8 Pro』のデイリーユースを紹介してきたが、もちろんゲーム性能も進化している。伝導熱の利用やSoCの直上に急冷用ヒートシンクを搭載するなどの新機構により、冷却性能は前モデルから20%向上。

そして、さらなる冷却性能を実現するのが外付けのクーラーユニット『AeroActive Cooler X』だ。スマホ側面のUSB Type-C端子に取り付けることで電源が供給され、内蔵ファンがスマホの背面を強力に冷やしてくれる。物理キーも搭載しており、ゲームパッドのように使うことも。

前モデルのクーラー『AeroActive Cooler 7』と比較してより軽く、より冷やせるように進化している。スマホと接する部分のペルシェ素子は2.6倍と大幅に増加しており、実際に指で触ってもその冷たさを実感できるほどだ。スマホゲーム『原神』を60fpsの最高画質でプレイしてみたが、快適そのもの。プレイが引っかかることもなく、マップ移動も2秒とかからなかった。

また、筆者が特に感動したのが上記のフローティングによるブラウザ表示だ。ゲームプレイをアシストしてくれるアプリ『GAME GENIE』の進化により、ゲームを落とさずオーバーレイさせるかたちでブラウザが表示できるようになった。これで「あのアイテム、だれが落としたっけ?」といった検索したい場面でもゲームを落とすことなく検索ができる。まさに神機能!

さらに『Video Ginie』なる新機能もあり、こちらは動画や音楽をバックグラウンドで再生してくれるというもの。いわばゲームの裏でYouTubeを再生できる機能であり、なんちゃってPremiumアカウントのような使い方もできてしまう。ありがたすぎる…...。

個人的に、ゲームの動作性能については前モデルでも頭打ちに近い部分まで来ていたと感じていた。しかし、本機はスペックだけでなくUIの改良によりゲーム体験を向上させている。これは巧みな施策であり、よりディープにゲームと向き合いたいユーザーにとってはかゆいところに手が届いたと言えるだろう。

■ゲーミングスマホを見つめ直した、二刀流的フラッグシップ

デイリーユースにおいての使い心地も重視しつつ、このスマホを求めるゲーマーにとって必要な進化も盛り込んだ、なんとも贅沢な一台。冒頭でも述べたが、スマホの性能が向上することで「ゲーミング」を冠するスマホのアイデンティティーは揺らぎつつある。スペックだけを求めるなら、ゲーミングでないスマホも候補になるものだ。

だからこそ「ゲーミングとはなにか」を再定義した本機には独特の魅力と立場が与えられている。背面の『Anime Vision』や外付けクーラーなどはゲーミングらしい遊び要素であり、フラットな外観とトリプルレンズなどはデイリーユーススマホに求められるものだ。高品質なディスプレイや高いスペックは、そのどちらのシチュエーションにおいても快適性を与えてくれる。

意外とありそうでなかったポジションのスマホであり、ゲームに対する意識が変化した現代だからこそのモデルだろう。「ハイエンドというだけではちょっと物足りない」といった、遊び心を忘れないユーザーには特に受け入れられるはずだ。

(文=ヤマダユウス型)

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