日本→フィリピン「ODA供与」年100億ドルの実績…大規模インフラプロジェクトに「JICA」続々参画

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一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクターの家村均氏が、フィリピンの現況を解説するフィリピンレポート。今週は、フィリピンにおける雇用状況の現状を解説していきます。今週は、マルコス政権下で積極的に進められている交通インフラ増強計画BBM(Build Better More)における日本・JICAの動きと、金利が高止まりするでの銀行の不動産貸付状況について解説していきます。

比・インフレ増強計画…JICAが強力支援

日本国際協力機構(JICA)は、今年フィリピンにおける鉄道インフラと社会開発のイニシアティブへのファイナンスをさらに拡大することを検討しています。昨年、JICAは約3,000億円(約1,100億ペソ)のプロジェクトに署名し、今年も同様の規模やレベルを維持する方向です。

政府開発援助(ODA)は、フィリピン政府が限られた財政の中で、主要なインフラ建設と社会開発を実施するための重要ツールです。

JICAはフィリピンの鉄道プロジェクトを支援し、車から公共大量輸送へのシフトを後押ししています。また、道路や橋梁の建設も引き続き支援します。3月には、フィリピン政府とJICAが総額2,500億円の2つの融資契約を締結し、マニラ地下鉄の建設と国内最長のトンネルを含む道路プロジェクトに資金供給しました。さらに、JICAは住友商事や阪急電鉄と提携し、既存鉄道の運営と保守を支援するプログラムも進めます。さらに健康と水の衛生に関する社会開発イニシアティブにも資金を提供する予定です。

また、イスラム地域・バンサモロ自治地域(BARMM)の平和促進のためのイニシアティブにも資金提供を計画。具体的には、BARMMのインフラ開発、雇用創出、技能訓練、ガバナンスと能力開発を引き続き支援します。バンサモロ和平プロセスは、バンサモロ地域の発展だけでなく、全で安心な状況がを作ることにより、より多くの投資を招き、フィリピン全体の発展のに寄与します。

一方、フィリピンでのプロジェクト実施の課題として、許認可プロセスの遅れやプロジェクト請負業者への支払いの遅延が挙げられています。コミットメントは十分でも、約束を守るためには現場での実際の行動が必要であり、途中でルールを変更するようなことが問題になっています。

マルコス大統領は最近、主要なインフラプロジェクト提案の承認を迅速化するために大統領令(EO)第59号を発令し、鉄道プロジェクトの土地取得を合理化するために行政命令(AO)第19号の下で省庁間委員会を設立しました。このような政府の行動が、インフラプロジェクトの計画におけるボトルネックを解消し、フィリピンへの投資家の信頼を高めることができるかが注目されます。

2022年において、日本はフィリピンのODAの30.75%にあたる99.6億ドルを占め、第2位のODA供与国でした。

金利高止まり、銀行の不動産貸付への影響は?

フィリピンの銀行および信託機関の不動産セクターへのエクスポージャー(資産の割り当て割合)は、昨年12月末時点で20.17%に減少し、2023年9月末の20.55%から低下したことが、フィリピン中央銀行(BSP)のデータで明らかになりました。これは、2022年12月末の20.98%の割合よりも低い数値です。フィリピンの銀行による不動産セクターへの投資および貸出額は、2022年12月末の3.02兆ペソから4.3%増加し、昨年12月末には3.15兆ペソとなりました。

フィリピンの銀行は、不動産貸出、投資および関連エクスポージャーに関する規制に準拠する必要があります。不動産向け貸出は前年比5.8%増の2.74兆ペソとなり、2022年12月の2.59兆ペソから増加しました。内訳を見ると、商業不動産向け貸出は前年比5.5%増の1.73兆ペソ、住宅不動産向け貸出は6.7%増の1兆ペソとなっています。

一方、支払い期限を過ぎた不動産向け貸出(不良債権)は2.4%増の1,352.61億ペソとなりました。不良債権比率は2022年末の4.17%から3.96%に低下しました。2022年5月から2023年10月にかけて、中央銀行は金利を合計450ベーシスポイント(bps)引き上げ、基準金利を17年ぶりの高水準である6.5%にしました。BSPは、金融の安定を導く任務の一環として、銀行の不動産業界へのエクスポージャーを監視。2020年には、パンデミック時の救済措置の一環として、中央銀行は銀行の不動産貸出上限を総貸出ポートフォリオの20%から25%に引き上げ、追加の流動性を確保しました。

BSPのデータによると、2023年第4四半期の住宅価格の上昇ペースは鈍化しました。住宅不動産価格指数は、第4四半期に6.5%上昇しましたが、第3四半期の12.9%の上昇および前年同期の7.7%の上昇に比べて、上昇幅は減少しています。

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