日本から乗れる、国際航路まとめ【2024年版】新造船「鑑真號」は9月に乗れそう!

日本と周辺諸国の間には、いくつかの国際旅客航路があります。2024年現在、運航中の全ての航路と所要時間、格安利用術などを比較しながらまとめてみましょう。

6社8航路

まずは、日本に発着する、民間旅客が乗船できる国際航路を一覧表にしてみました。6社8航路があります。

旅客運賃はオフシーズンの最低運賃です。車両運賃は4m~5mクラスの乗用車往復を示しています。いずれも時期により価格が変わります。燃油サーチャージや、諸手数料などが別途かかる場合があります。

運航本数は1週間あたりの標準的なスケジュールを示していて、路線により休航日があったり、時期や曜日により減便や増便がおこなわれることもあります。

(配信先で表が崩れて読みづらい場合は、こちらで画像をご覧いただけます。)。

日本発着の国際航路全リスト航路運航会社所要時間運航本数 (週)旅客運賃 (片道)車両運賃 (往復)下関 釜山関釜フェリー12時間7往復9,000円60,000円博多 釜山カメリアライン6時間6往復9,000円50,000円博多 釜山JR九州高速船3時間40分7往復16,000円—大阪 釜山サンスターライン19時間3往復13,000円75,000円比田勝 釜山サンスターライン1時間30分5往復9,500円—厳原 釜山サンスターライン1時間30分2往復11,500円—厳原 釜山スターライン1時間30分1往復未確認—大阪 神戸 上海日中国際フェリー50時間1往復20,000円—

※旅客運賃は大人1人の最安クラスの最低片道価格を表示。クラスや季節により変動する。車両運賃は4m~5mの乗用車。いずれも燃油サーチャージ、諸手数料が別途かかることがある。
※運航本数は週あたりの標準的な数字。路線により休航日あり。
※スターラインはウェブ上に日本語公式情報が見当たらず、円建ての価格が不明。

釜山、上海へ

現在運航している日本発着の国際航路は、韓国・釜山と中国・上海を目的地とする8航路です。

かつては台湾やロシアへの航路もありましたし、中国では天津や青島などの発着便もありました。しかし、航空運賃の下落と新型コロナの影響で淘汰され、近年は需要の大きい区間に絞られてきています。

順にみていきましょう。

下関~釜山

日本発着の国際航路の代表格が、下関~釜山間の関釜フェリーです。戦前、日本が朝鮮半島を統治していた時代は「関釜連絡船」という鉄道連絡船が設定されていた区間です。

戦後、1970年に関釜フェリーが運航を開始。コロナ禍で旅客取扱いを休止していましたが、2022年12月に再開しました。

毎日運航で、所要時間は下関発が12時間15分、釜山発が10時間45分です。いずれも夜行便です。

使用船舶は国際トン数16,000トン級(国内トン数8,000トン級)の大型フェリーで、日本船「はまゆう」と韓国船「星希」が交互運航します。

客室設備は2等からスイートまで4クラスに分かれ、2等は大部屋です。船内設備は両船で多少異なりますが、レストラン、浴場、免税売店、コンビニ、カラオケルームなどを備えます。

旅客運賃は2等で片道9,000円。車両運賃は往復60,000円で、別途、通関手数料や保険料がかかります。

割引運賃は、往復割引(復路10%)、学生割引(20%)などがあります。学割は学生証の呈示で適用されます。青春18きっぷのシーズン中は、利用者向けに割引運賃が提供されることもあります。2024年春季は2等運賃が50%割引でした。

下関国際ターミナルは、JR下関駅東口から人口地盤を通って徒歩で約7分です。釜山港国際旅客ターミナルは、KTX釜山駅まで徒歩で約20分です。

画像:関釜フェリーニュースリリース## 博多~釜山

釜山へは、博多(福岡市)からもフェリー航路があります。「カメリアライン」です。所要時間は6時間。博多発が昼行便(12時30分発)で、釜山発が夜行便です。釜山発便は、出入国審査の実施時間の影響で、釜山20時発、福岡7時30分着というスケジュールになっています。

使用船舶は20,000トン級(国際トン数)の大型フェリー「ニューかめりあ」です。国内トン数では10,000トン級です。

2等から特別室まで4クラスの客室を備えます。2等室は大部屋です。船内設備として、レストラン、浴場、免税売店、カラオケルーム、ゲームコーナーなどを備えます。

旅客運賃は2等で片道9,000円。車両運賃は往復50,000円(~1,500kg)で、別途、通関手数料などがかかります。

割引運賃は、往復割引(復路10%)、学生割引(20%)などがあります。学割は写真付き学生証の呈示で適用されます。ただし、30歳未満のみが対象です。

博多港国際ターミナルは、博多駅からバスで約20分です。

博多~釜山(高速船)

博多~釜山間には、高速船も運航しています。JR九州高速船の「クイーンビートル」です。毎日運航で、所要時間は3時間40分。博多発が午前便、釜山発が午後便です。

使用船舶「クイーンビートル」は、約2,300トンの高速船。2020年に完成した新造船で、世界初の80m級トリマラン(三胴船)として名を馳せています。

客室はスタンダードクラスとビジネスクラスがあります。スタンダードクラスの旅客運賃は片道16,000円です。シニア割引(65歳以上)は片道8,000円です。往復割引はありません。

JR九州の株主優待券を使うと、往復運賃が10,000円となります。車両の航送はしていません。

大阪~釜山

大阪~釜山間にも航路があります。サンスターラインが「パンスタークルーズ」という名称で週3往復運航しています。大阪、釜山を15時に出発し、翌10時に到着します。(大阪発金曜日のみ17時発)。所要時間は19時間です。

使用船舶は「パンスタードリーム」で、かつて東京~那智勝浦~高知航路に使われていたフェリー「さんふらわあくろしお」をリニューアルしたものです。21,000トン級(国際トン数)の大型フェリーです。国内では10,000トン級です。

客室はクルーズゾーンとフェリーゾーンに分かれていて、スタンダードからロイヤルスイートまでバリエーション豊富です。スタンダードはカプセルタイプで、大部屋はありません。

船内設備はカフェ、レストラン、寿司店、ラウンジ、コンビニ、免税店、浴室、カラオケルームなど多彩です。

旅客運賃は、スタンダードの最安値で片道13,000円、往復26,000円。繁忙期は加算料金がかかります。燃油サーチャージ(2,400円)は別途です。シニア割引(70歳以上、10%)、学生割引(20%)などがあります。車両運賃は往復75,000円が基本料金で、別途、通関費や保証金がかかります。

大阪港国際フェリーターミナルは、地下鉄コスモスクエア駅から無料シャトルバスで約5分です。大阪南港フェリーターミナルからは離れています。

対馬~釜山

対馬~釜山間にも高速船が運航しています。

大阪・釜山航路と同じサンスターラインが2路線を運航しており、対馬の比田勝港と釜山を結ぶ路線が週5便の運航。対馬の厳原と釜山を結ぶ路線が週2便の運航。両路線あわせて毎日運航となっています。所要時間はどちらも1時間30分です。

運賃は比田勝~釜山が9,500円(平日)~11,500円(週末)。厳原~釜山が11,500円(平日)~13,500円(週末)です。

サンスターラインは、同区間を運航していた大亜高速海運の「オーシャン・フラワー」を購入し、「パンスター対馬リンク」として運航しています。総トン数は648トンです。

このほか、厳原~釜山間には、スターラインの「NINA」も週1便運航しています。韓国語のウェブサイトしかないため、日本人には使いづらいかもしれません。

大阪・神戸~上海

つづいて中国航路です。現在運航しているのは大阪・神戸~上海間のみで、日中国際フェリーが手がけています。週1便で、大阪発と神戸発の交互運航です。両港合わせて週1便です。

現在、旅客輸送は中断していますが、上海の旅客ターミナルの改装工事の終了後、2024年9月ごろに再開する予定です。

所要時間は揚子江の潮の状況により異なりますが、約50時間です。2泊3日の行程です。

日中間フェリーの先駆けといえる航路で、1985年に開設されました。現在の使用船舶は尾道造船建造の「新鑑真」(14,000トン級)ですが、新造船を建造中です。新造船は「鑑真號」と名付けられ、2024年6月就航予定。20,000トンクラスの大型フェリーとなります。金陵船舶(威海)の建造です。

旅客運賃は、2等で片道20,000円、往復30,000円です。学生は10%割引です。旅客運送再開後、運賃が変わる可能性があります。自家用車の航送はおこなっていません。

大阪港はパンスタークルーズと同じ大阪港国際ターミナルで、地下鉄コスモスクエア駅からシャトルバスがあります。神戸港はポートライナーのポートターミナル駅と直結しています。上海港は地下鉄12号線国際客運中心駅から徒歩約5分です。

画像:日中国際フェリーウェブサイトより## 国際航路の利用術

以上が、現在日本を発着している国際旅客航路の全てです。

このほか、鳥取県の境港と韓国・東海を結ぶ「イースタンドリーム号」が、8月3日から定期運航を開始するという報道もありますが、詳細は定かではありません。

かつては、海外格安旅行の手段としてバックパッカーに愛用された国際航路ですが、航空運賃の自由化により価格競争力を失い、旅行者の利用が激減。近年は、大きな荷物を運ぶ利用者向けの性格が濃くなっています。さらにコロナで壊滅的な打撃を受けてしまい、残っているのは、距離的に近く往来の多い韓国航路がほとんどです。

韓国航路でも、飛行機に比べて格段に安いというわけではありませんが、直前予約でも手頃な価格で利用できるのはメリットです。また、瀬戸内海を通る国内航路は夜行便がほとんどですが、大阪~釜山航路は日中に航行します。瀬戸内海の景色を楽しむクルーズとして利用することもできます。

中国大陸と直結する大阪・神戸~上海航路は、瀬戸内海を経て東シナ海を横断する魅力的な旅を楽しめます。かつてはバックパッカーに人気の航路で、上海を起点にアジア各地へ多くの旅行者が利用していました。

LCC全盛のいま、海外渡航であえて海上航路を選択する意味はあまりありません。それでも、船で日本を離れるのには独特の情感がありますし、時間に余裕のある旅行者にはぜひおすすめしたいところです。(鎌倉淳)

© 旅行総合研究所タビリス