パートスタッフ探しで見えたbr雇用形態の今昔

今年は気温差が大きいせいか、周囲で体調を崩す人が多い。何でも新型コロナウイルスと関連づけてしまう発想はいまだに健在で風邪を引いた人は必ず「コロナじゃないけど、熱が出た」とエクスキューズする。私も出席したくない会合では、「5類になったとはいえ、いまだコロナ禍なので……」なんて口実に使う。
あれだけ慎重だった院長も、少しずつリアルでの会合に出席し始めた。とはいえ、学会等の勉強会については、自院を休診にしてまで現地参加するより、手軽、かつ交通費と時間も浮くリモート参加を選んでいる。新型コロナが生活様式に与えた影響は、広範囲にわたっていると再認識する。

さて10月から産休・育休に入る事務スタッフに代わり、期間限定のパートスタッフ募集に頑張るサマンサだが、ハローワーク経由で応募のあった求人希望者の変化を感じている。開業した2006年当時、事務のパート募集に集まってきたのは、以前、同業種にて就業経験がある、ないしは「医療事務資格は取ったが使っていない」という人たちが当院の門を叩いてくれた。途中から、「異業種・未経験者でも教えます!!」ってスタンスで募集もしたが、結局うまくいかなかったという苦い経験もした。
さらに言えば、事務スタッフに加えて検査スタッフや看護師に関しても、パート希望者は結婚して家庭を持ち、子どももちょっと手が離れたから働きたいという方ばかり。そのため、サマンサもパート希望者は各家庭の事情に応じて、正職員ではなくパートを選択しているものと思っていた。
が、しかし……。平成&令和とわが国の経済事情の変化の結果、終身の正規雇用ではなく勤務時間・期間が不安定な非正規雇用を労働職として企業が使ってきた末の縮図を、今回は垣間見てしまった。応募者は20代と40代で、おまけにしっかり大学まで出ているのに、今まで正規職員として勤務経験のない方々ばかりだった。
総務省の調査によると、「役員を除く雇用者のうち正規雇用者」の割合は63.1%、非正規雇用者は36.9%となっており、約4割が非正規雇用である。非正規雇用者数は05年に1634万人だったが、22年には2101万人と約1.3倍になった。
40代については、一般的に00年前後に大学を卒業した就職氷河期世代にあたるのだろう。この世代はおそらく、派遣切りとかワーキングプアなんて荒波をもろに受けてきたに違いない。

今後、労働不足解消のため、非正規雇用者の正規雇用化が予想されるが、「学び直し/リスキリング」によってそちらの方向に動いていくのだろうか。
加えて、今回の午前パートを希望している20代女性はボランティア活動を生活の中心に据えているため、非正規雇用者として働く選択肢をしたのだという。人生の優先順位と働き方について「多様化しているのだな」と、改めて考えてしまった。
とはいえ、その方には自分探しの旅の途中でしっかり当院で働いていただき、次のステージに進んでほしいものだ。
サマンサの午後パート探しはまだまだ途中……。次号へ続く。(『CLINICばんぶう』2023年7月号)

サマンサ●中学校の教師だったが、夫の開業をきっかけに診療所の事務長に就任。日本医業経営コンサルタントと医療経営士3級の資格を持ち、新潟県内の眼科専門診療所で院長夫人兼事務長として経営の舵取りをしている。

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