モスクのある風景

 日系人が多いハワイには、神社がいくつもある。意外な取り合わせだが、その昔、サトウキビ農園で働くため、異国に渡った日本人移民の心のよりどころとして建てられたと、何かのテレビ番組で見て知った▲この場所にも、深い思いが込められているのだろうか。イスラム教徒(ムスリム)が集まり、礼拝するモスクが長崎市にできた▲県内に住むムスリム有志たちが、町中にある4階建てのビルを買い取り、改修したのだという。外壁に「手作り感」あふれるドームの絵。屋内の礼拝スペースにはじゅうたんが敷き詰められ、電光掲示板が1日5回の礼拝時刻を知らせる▲地球上には20億人近くのムスリムがいるともいわれる。日本ではまだまだ少数派でも、世界では“超メジャー”な勢力なのだが…▲とかくテロや戦争、女性の人権抑圧などの問題とセットで語られることが多いイスラム教。その一方で、自分が「天国に行くため」に子どもやお年寄りをとても大切にし、寄付を惜しまない。そんな教えもあることは案外知られていない▲長崎のモスクでは、地域との交流や情報発信も予定されていると聞く。日本とイスラムの「架け橋」に-と奮闘する姿は、かつて希望を胸に海を越え、ハワイに日本文化を根付かせた先人たちと、どこか重なって見える。(北)

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