次世代電池世界市場に関する調査を実施(2024年)~次世代電池ならではの領域で市場導入が進展、問われるは脱黎明期への決定的付加価値、2023年の次世代電池世界市場規模は1兆2,333億円の見込~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、2023年から2035年にかけての次世代電池世界市場を調査し、種類別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

1.市場概況

9種類の次世代電池の中にはレドックスフロー(RF)電池のように市場導入が進んでいるものもあるが、本格的な実用化は2025年以降、または2030年以降になるものがほとんどである。
2023年の次世代電池世界市場規模(メーカー出荷額ベース)は1兆2,333億円の見込みである。太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー普及に伴う電力系統用定置用蓄電池の需要増により、大型のレドックスフロー電池が大きな割合を占める見込みである。また、酸化物系全固体リチウムイオン電池(LiB)において、中国を中心に固体電解質に電解液やゲルポリマーを添加した半固体電池の生産が一部で開始されている。その他、ナトリウム二次電池や金属空気電池でも既に市場形成が始まっている。

2.注目トピック~全固体LiB、車載用を目指す開発の動きが活発化

小型・小容量セルの領域から実用化がスタートしている全固体LiBだが、車載向けを主とした大型セルの開発に向けて、電池メーカーや電池材料メーカーの開発が活発化している。

硫化物系全固体LiBは小型・小容量セルの領域から実用化フェーズに入る動きが見られる。OEM(自動車メーカー)各社は2020年代後半にはEVへの搭載を目標としており、注目度が一段と高まっている。韓国の液系(従来の)LiBメーカー3社も、2020年代後半を製品化、生産開始の目標時期と定めて開発を進めている。
高分子系の固体電解質(ドライポリマー)を使う全固体LiBは、海外の取り組みが先行したが、2022年に発火事故が発生するなど課題が見えてきており、改善を目指す次世代品の開発が推進されている。
酸化物系全固体LiBでは、中国LiBメーカーを中心に完全な全固体電池に拘らず、電解液やゲルポリマーを混合した半固体電池で市場投入を急いでおり、ここ数年開発が活発化している。

3.将来展望

2035年の次世代電池世界市場規模を2023年比で約6倍となる7兆2,763億円になると予測する。種類別でみると、レドックスフロー電池が4兆4,755億円、酸化物系全固体LiB(半固体電池含む)が1兆3,034億円、硫化物系/高分子系全固体LiBは1兆2,457億円、ナトリウム二次電池が1,396億円となる見込みである。その他、Li-S電池が418億円、金属空気電池280億円、新原理・新型電池116億円、有機二次電池207億円、多価イオン電池を100億円と予測する。

レドックスフロー電池では、世界規模で再エネの導入が拡大するに従って長周期電圧変動対策や余剰電力の調整需要が増大し、中国や米国、欧州を中心に4~5時間以上の充放電が可能なレドックスフロー電池の採用が拡大している。特に高速応答性と充電量管理の容易性により、短~長時間の需給調整に幅広く対応できるレドックスフロー電池ならではの利点を生かし、太陽光発電や風力発電の系統連系や独立型マイクログリッド等において今後、ビジネスチャンスが広がる見込みである。
酸化物系全固体LiBは、EV向けを主体とした半固体電池の量産に取り組む複数の企業が存在し、市場成長が期待される。一方で、その成長性は電解液を少量添加するなど半固体化によるメリット・デメリットのバランス次第の側面も有するものと考える。
硫化物系/高分子系全固体LiBは、OEM各社による実用化が2020年代後半に計画されており、EVの駆動用電源としての採用が拡大する見通しである。

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