無印良品の「MUJI HOUSE」 インフラゼロで居住可能 南房総市で宿泊実験開始

「インフラゼロでも暮らせる家」のプロトタイプ外観。壁・屋根一体型の太陽光パネルで効率的に電気を発電する

 無印良品の住宅部門「MUJI HOUSE」(東京都文京区)は、水や電気などのインフラが整わない場所でも快適に暮らすことができる移動式住宅のプロトタイプ(試作品)を公表した。2025年の実用化を目指し、5月から一般参加者を対象に南房総市の複合施設「シラハマ校舎」内で宿泊実験を開始。住み心地や設備上の課題などを検証する。

 実験は、同社が昨年3月から取り組む「ゼロ・プロジェクト」の一環。「インフラ」「カーボン(炭素)」「リビングコスト」「災害リスク」の4項目のゼロ実現を目指し、オフグリッドインフラの開発などを手がける「INNFRA」(山梨県)などと連携して試作品の開発を進めてきた。

 同住宅は独自の水循環システムやキッチンなどを設けた「ユーティリティ棟」と、約12平方メートルの「リビング棟」を組み合わせたモバイルハウス。道路運送車両法で定められている車両として扱われるため、公道上を自由にけん引することができる。

 電力はユーティリティ棟にある壁・屋根一体型の太陽光パネルで確保。南側の壁面にパネルが設置されており、太陽の位置が低い朝方でも十分に発電できる。2人暮らしの場合、最大約3日分の電力を蓄電することができるという。

 水は2人暮らしで1日当たりに必要な水量(約200リットル分)をためられるタンクを整備。使用した排水は独自システムにより浄化し、循環利用することができる。

 この他、トイレは水を使わず、微生物の働きによって排せつ物などを分解、処理する「バイオトイレ」を採用。エアコンや照明、温水シャワー、Wi-Fi環境も整備されており、2人暮らしでも快適に過ごすことができる。

 同社によると、当面は自由に移動できる宿泊施設や別荘として幅広い世代への普及を図る。インフラを必要としない点を生かし、災害などの非常時での活用も見込む。同プロジェクト推進責任者の川内浩司商品開発部長は「非日常な場所に豊かな日常の暮らしを持ち込みたい、という思いでプロジェクトを始めた。実際に生活してもらうことで課題や要望を収集し、実用化に向けて精度を高めたい」と話した。

 宿泊実験は三つの期間に分けて実施。2期分の申し込みは5月末からを予定。18歳以上であれば誰でも参加でき、参加費無料。同社が依頼する試泊レポートを提出する必要がある。

 同住宅の詳細や実験の概要はティザーサイト(https://www.muji.net/ie/infrazerohouse/)に掲載している。

プロトタイプのリビング棟。太陽光発電などにより、エアコンや照明なども自由に使うことができる=南房総市
水を使わず、微生物の働きで排せつ物を処理する「バイオトイレ」。生ゴミやトイレットペーパーも分解可能

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