令和の野球好き高校生もハマった!昭和に大爆笑した『がんばれ!!タブチくん!!』の「伝説の面白シーン」

『がんばれ!!タブチくん!!』[DVD](東宝)

プロ野球が楽しい時期に入ってきた。野球好きの長男も毎日楽しみにしているようで、野球談議が盛り上がる。そんな最近だが、ふと登録している有料動画サイトに、アニメ映画の『がんばれ!!タブチくん!!』が入っていることに気付いた。

これを長男に見せたところドハマリしており、その姿を見て筆者も子どもの頃に爆笑した記憶が蘇ってきた。あの当時、おおいに笑わせてくれた本作の面白いシーンを振り返ってみよう。

■みんなどこか頼りない…? モデルには実在のレジェンド選手が次々と登場!

『がんばれ!!タブチくん!!』は、いしいひさいちさんが『漫画アクション』(双葉社)で連載していた4コマ漫画だ。

主人公のタブチくんは、阪神タイガース、その後西武ライオンズに移籍した田淵幸一さんをモデルにしている。アニメ映画では西田敏行さんが声優を務めており、これが妙にハマっていたものだった。

アニメ映画は1979年に公開された『がんばれ!!タブチくん!!』を皮切りに、翌1980年に『がんばれ!!タブチくん!! 第2弾 激闘ペナントレース』、同12月には『がんばれ!!タブチくん!! 初笑い第3弾 あゝツッパリ人生』の3作品が製作された。

登場するタブチくんはデビュー時よりかなり太っており、なぜかお荷物扱い。もちろん、実際の田淵さんは超一流の凄い選手なのだが、作中ではギャグキャラ扱いだった。

また、本作ではタブチくんだけでなく、ほかにも実在の選手をモデルとしたキャラが次々と登場するのも面白い。よく出てくるのが、タブチくんのよき理解者(?)であるネモト監督。このモデルは、数々の球団で監督・フロントとして辣腕を振るった根本陸夫さんだ。

ほかにもヤクルトスワローズの親友であるヤスダは安田猛さん、ヒロオカ監督は名将・広岡達朗さん、よく対戦する阪急ブレーブスからヤマダが名投手の山田久志さん、天敵フクモトは世界の盗塁王こと福本豊さんと、当時の人気選手らが勢ぞろいしていた。

そして、本作に登場する野球関係者は、なぜかみんなどこか頼りないのも特徴だ。現実では素晴らしい成績を残している選手や監督もギャグ化されているので、子ども心にとても楽しく見ていた。

タブチくんが、ことあるごとに愛妻のミヨコに向かって「ミヨコ そこへお座り」と言うのだが、そのたび「座ってるじゃない」と返すやり取りも、なんとも微笑ましかったものだ。

■ランニングホームラン…と思ったら捕手を飛び越えて豚まんへダイブする「タブラン」

タブチくんは、かなりの鈍足である。阪急戦でレフト前ヒットを放つも、フクモトがそのまま1塁まで走り、途中ボールを落とすもタブチくんより先にベースを踏んでしまってアウトにされたりしている。いや、遅すぎやん(笑)。

さらに、ライトオーバーのフェンス直撃となる一打を放つも、ライト→レフト→サード→ショート→セカンド→ピッチャーまでボールが中継され、最後はファーストに送球されてアウトになってしまう。しかも、ゆうゆうアウトなので鈍足を超えているだろう……。

怒ったタブチくんはシーズン中なのにもかかわらず、山に籠って減量に成功。再度出場した阪急戦ではヤマダ相手に代打で登場し、会心の当たりを放つ。そして、野手がもたもたしている間に塁間を軽快に回るのだ。あんなに鈍足だったのに、この減量で突然快足に変わっているのがウケる。

ランニングホームランか! と思いきや、三塁を回ったところでスタンドで観客がカップラーメンをすすっている匂いに釣られて逸走。いや、オーバーランで完全アウトなのだが、みんなそう思うこともなく、ネモト監督にいたっては「タブチの弱点が出た!」と焦る。

そして、監督はほかの選手にたこ焼き、たい焼き、豚まんを買って来させて、タブチくんの気を引こうという暴挙(!?)に出る。もはやめちゃくちゃだが、長男は大笑い。どんだけもたついているんだ? 阪急の外野陣。

最終的にタブチくんはキャッチャーを飛び越えて食べ物を強奪し、結果、タッチアウトとなってしまった。試合後、ランニングホームランに挑んだタブチくんを指し、「絶対不可能なこと」として、「タブラン」という造語が作られてしまった。

■愛妻・ミヨコがチアガール? 抜群のバットコントロールで監督とオーナーを天誅

アニメ映画2作目の『激闘ペナントレース』では、愛妻のミヨコがチアガールに扮するシーンがあった。自宅で絶対にダメだと言い張るタブチくんに対し、ミヨコは聞く耳を貸さない。試合では1塁側ベンチ上でポンポンを手にして「フレー! フレー! タ・ブ・チ!」と、ノリノリで声援を送る。

味方の応援団もセクシーなミヨコにご満悦であり、打席上のタブチくんは大激怒。天誅と称し、抜群のバットコントロールでファウルボールを応援団に命中させる。しかも、ミヨコの姿をニヤニヤしながら見つめていたネモト監督とツツミオーナー(モデルは当時の堤オーナー)にも命中させるほど。いやいや、事件になるって……。

そして、オーナーと監督によってミヨコは外野応援席へと移動。怒りのタブチくんはスタンドへホームランを放って、チームは逆転……と思いきや、ホームイン後にボールとバットを持ってきて外野目掛けて打球を放つ。これも、移動していたオーナーと監督に命中してしまうのだからお見事だった。ていうか、監督……完全に試合放棄だな。

ほかにも、重量オーバーで飛行機が上昇せずパラシュートで放り出されたり、ホームランが宝くじよりも低い確率と揶揄されたりと、タブチくんがさんざんな目に遭ってしまうのが面白い本作。

長男もインターネットや書籍にて往年のレジェンド・田淵幸一さんを知っているので、とても楽しんで視聴していたようだ。

それにしても、タブチくんはもちろん、登場人物がみんな実在の人物と同じ呼び方、なおかつ表情も似せているのだから、よくこんなの実現できたなあと思ってしまう。

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