京都から20分の “ゆるかわ” スポット「一休さんとんちロード」&展望の低山「甘南備山」ハイキングレポ!

近鉄新田辺駅前にある一休さんの銅像(撮影:山本佐和​​)

山を歩いて自然を楽しむのはもちろん、ふもとの街散策もハイキングの醍醐味のひとつである。

今回目指したのは、京都府南部の京田辺市にある「甘南備山(かんなびやま・標高217m)」。登山口から30分ほどで登れる緩やかな山で、初心者や子ども連れにもおすすめだ。

そしてこの街で有名なのは、なんといっても 「屏風の虎退治」や「このはし渡るべからず」といった、とんち話で有名な「一休さん」である。

一休さんゆかりの「一休寺」をはじめ、歴史深い神社仏閣が数多く点在し、街歩きも楽しめる甘南備山ハイキングの魅力をお伝えしよう。

■京都駅から約20分。近鉄「新田辺駅」から出発

駅前の案内所でもらえる「甘南備山登山マップ」

ハイキングの出発地点は、近鉄 新田辺駅。京都駅から約20分とアクセスのよい場所にある。

西出口の階段を下りるとすぐに観光案内所があるので、そこで「甘南備山登山マップ」を手に入れよう。山の見所や散策路、街にある名所なども掲載されているので、これを片手にハイキングを楽しむのがおすすめである。

■一休寺と「一休さんとんちロード」

一休寺の総門

この街を散策する楽しみのひとつは、やはり一休さんの存在だ。

街のシンボルとも言える酬恩庵一休寺(しゅうおんあんいっきゅうじ)は、1288年から1293年に禅の道場として草創。1456年に、一休宗純(いっきゅうそうじゅん)によって再興され、その晩年を過ごした場所と言われている。

枯山水の庭をはじめ、桜や紅葉が見事な寺で、筆者が訪れたときは青もみじがとても美しかった。また、寺の保存食として昔から作られてきた伝統の「一休寺納豆」といった名物もある。

ちなみに駅から一休寺へと向かう途中の道は、「一休とんちロード」と名付けられている。15か所の電柱に一休さんのとんち話をもとにした「一休かるた」が掲示され、住宅地を抜けるだけの道ではあるが、のんびりと逸話を読みながら歩ける。これをすべて読んだら、誰もが一休さんマスターになれるに違いない。

また、街のいたるところに一休さんのキャラクターがあり、それを見つけながら散策するのもおもしろい。ポスターや看板、それに飛び出し坊やまで一休さん。これには思わず、くすりと笑ってしまった。

■歴史深い神社仏閣が点在

一休とんちロードの手前にある棚倉孫神社

新田辺駅から登山口までの間にある神社仏閣も、このハイキングの見所だ。

棚倉孫神社の境内にあった神輿

例えば、筆者が訪れた「棚倉孫神社(たなくらひこじんじゃ)」。調べてみると、どうやら延喜(901年)以前に創建された古い歴史を持つ神社で、長い間地域の人に親しまれ続けているようだ。

能楽発祥の地といわれる薪神社の鳥居

そのほかにも能楽発祥の地とされる「薪神社(たきぎじんじゃ)」や、奈良時代に開創されたといわれる「甘南備寺(かんなびてら)」など、ふらりと立ち寄れる歴史深い名所が点在しているのだ。

山登り自体にさほど時間がかからないからこそ、こういった街歩きにもたっぷりと時間をとって楽しめるのが甘南備山ハイキングの魅力だろう。

■のどかな田園風景に癒される

甘南備山を背景にしたのどかな田園風景

駅の近くは住宅が多いが、30分ほど歩いて住宅街を抜けると、そこには甘南備山を背にしたのどかな田園風景が広がっている。

一面に広がる蓮華畑

たんぽぽやエンドウ豆の花など、田畑に咲くかわいらしい花々に癒されながら登山口を目指す。ちょうど見頃を迎えていた一面の蓮華畑は圧巻だった。

■いくつもの散策路を楽しめる甘南備山

登山口には、芝生広場と旧登山道への分岐点がある

一休寺から歩くこと約20分、甘南備山の登山口に到着。

甘南備山には「雨乞いの小径」や「キンモクセイの小径」、「野鳥の小径」など、いくつもの散策路が設けられている。それぞれの道に芝生公園や滝、貯水池といった見所があるので、季節に合わせて道を選んだり、時間があれば甘南備山登山マップを片手に散策するのもおすすめである。

管理道路の緩やかな坂道を登る

スマホの電波が届きにくかったり、道がわかりにくいことも登山ではよくある話なのだが、今回は地図のおかげで、迷うことなく寄り道しながら楽しむことができた。どの散策路もさほど険しくはなく、初心者の方や子ども連れでも楽に登れるはず。

また、登山口から山頂までの間にお手洗いが2か所あるのも安心できるポイントだ。ただ、険しくない山とはいえ、登山にはケガなどの危険もつきものである。夏でもサンダルなどは避け、履きなれた登山靴を着用しよう。動きやすく通気性を備えているウェアも忘れずに。

展望台近くにある神南備神社に参拝

甘南備山は古くから「神が鎮座する山」として村人に信仰されてきたそうで、山頂付近には天照大神が祀られた「神南備神社」が鎮座している。

展望台に到着

この日はキンモクセイの小径とモクレンの小径を通り、登山口から30分ほどで展望台まで辿り着いた。

展望台から、京都の街並みを眺める。あいにくの曇り空ではあったが、木津川の向こうに比叡山や京都タワーまで見渡せた。

ひと休みして、せっかくなので帰りは別の散策路「雨乞いの小径」を通るルートで下山していく。行きに登った管理道道路と違って、こちらは古くからの山道が残っている旧登山道。行きとは違う風景に出会えると思うと、なんだかうれしいものである。

新田辺駅近くにあった「一休どら焼き(216円・税込)」を手土産に

ふらりと街歩きも満喫できる甘南備山ハイキング。初心者の方でも余裕を持って楽しめるので、ぜひ観光気分で穴場ハイキングにトライしてみてはいかがだろうか。

●【MAP】酬恩庵一休寺

住所:京都府京田辺市薪里ノ内102
電話:0774-62-0193

※この記事の情報は2024年5月現在のものです。内容が変更される場合もありますので、最新の情報はリンク先のHPでご確認ください。

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