『もうひとりのル・コルビュジエ』大倉集古館で 20世紀を代表する建築家の美術作家としての側面にフォーカス

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20世紀を代表する建築家であるル・コルビュジエは、建築のみならず、絵画や彫刻など美術作品も数多く制作したことで知られる。そのル・コルビュジエの美術作品の世界有数のコレクションである「大成建設コレクション」を紹介する特別展が、東京・港区の大倉集古館で、6月25日(火)から8月12日(月・祝)まで開催される。

1887年にスイスで生まれたル・コルビュジエが、画家としての活動を展開したのは、1917年にパリに定住してからのこと。画家アメデ・オザンファンとともに、20世紀初頭にピカソらが始めたキュビスムを批判的に継承する美術運動「ピュリスム(純粋主義)」を提唱した彼は、身の周りの品々を幾何学的な形態にまで単純化し、黄金比や正方形を基準にした厳格な構図のなかで描く作品を発表する。その後、1925 年にオザンファンと別れてからは、詩的な感情を喚起する静物として骨や石などもモチーフとし、シュルレアリスム的な作品も展開。1920年代末以後は女性を主なテーマとし、その姿態の形を描くことに注力するなかで、次第に形のデフォルメを進めていった。

ル・コルビュジエ《女のいるコンポジション》(パピエ・コレ、1952)大成建設所蔵

ル・コルビュジエの美術作品の制作には、第二次世界大戦も影響したようだ。一時的に事務所を閉めて疎開すると、絵画制作に励み、身の回りの風景だけでなく、かつて描いた作品をもとに新しいアイデアを生み出していった。戦後は、こうした象徴的なモチーフを展開させると同時に、技法も油彩だけでなく、版画やパピエ・コレ、彫刻などへと広げていっている。

ル・コルビュジエ《直角の詩 表紙》(リトグラフ、1955)大成建設所蔵

同展は、こうした歩みが見てとれる多彩な作品群を展観するもの。油彩、素描、パピエ・コレ、版画、タピスリー、彫刻など、約130点が並ぶ。大成建設コレクションの素描やパピエ・コレ作品がまとまって公開されるのは、およそ30年ぶりのことだという。ル・コルビュエ自身は、「私の探求や知的生産の根底の秘密は、絶え間ない絵画実践のなかにあるのです」という言葉を残しているのだとか。今回の展覧会は、建築を含めたすべての創作活動の根底にあったという「絵画」に対して、ル・コルビュジエが抱いていた情熱にふれられる貴重な機会となるに違いない。

<開催概要>
『特別展 大成建設コレクション もうひとりのル・コルビュジエ ~絵画をめぐって~』

会期:2024年6月25日(火)~8月12日(月・祝)
会場:大倉集古館
時間:10:00~17:00、金曜は19:00まで(入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜(祝日の場合翌日休)
料金:一般1,500円、大高1,000 円
公式サイト:
https://www.shukokan.org/

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