高2でNPO法人を設立!?生徒だけで行う地域活性化活動 卒業を迎えた設立者が、いま感じていることとは?

NPO法人香川活性化生徒の会の設立者である白井航介さん。この春、香川県立高松高等学校の卒業を迎えた。白井さんが中心となり、高校生だけでNPO法人を設立するという四国初の取り組みは、多くの香川の高校生を巻き込んだムーブメントとなった。その活動を振り返り、これからの団体や白井さんの展開に迫る。

「もともと附属高松中学校時代から、学校の授業をきっかけに、河川清掃をしていました。また、YouTube等を活用した地元の観光客誘致のためのPRなどの活動を個人的に友人たちを誘って取り組んでいました。デジタル庁の誘致に取り組む友達のサポートなんかもしてましたね」

清掃活動に取り組む中学生の白井さん

活動する中で、もっと人や資金を集めて活動を広げていきたいと感じるようになった白井さん。信用の獲得のためにも、法人化したいと考えるようになり、高校1年生の夏頃に法人化に向けて動き出した。

「高松市に問い合わせたところ、未成年が法人を立ち上げた事例がないということで、最初は戸惑っている様子でした。市では判断できないということで、内閣府に問い合わせたとも聞いています。未成年でも設立して問題ないとわかり、そこからは市の職員さんに助けていただきながら書類を揃えて設立しました」

NPO法人設立について記者会見

資金面は、高校生が自分たちだけで仕掛けるまちづくりに賛同する大人たちを知り合いづてに回って寄付が集まったという。

「仲間集めも、何が効果的というものはなくて、地道に輪を広げていきました。最初は自分の知り合いと活動し始めましたが、法人化がメディアに掲載されたり、チラシを学校に配布したり、継続していく中で徐々に仲間が増え、ダンス部や吹奏楽部など部活単位でイベントに関わってくれるケースも増えました」

授業課題に部活動に塾や習い事にと中高生は本当に忙しい。そんな中、中心的に関わる運営メンバーに限らず、イベント当日だけボランティアスタッフを務めるなどの気軽な参加方法を用意するなどの工夫により、より多くの人のハードルが下がって参加しやすくなった。

「たくさんの活動に取り組みましたが、一番思い出深いのはサンポート高松で開催したかっかつ祭です。自分たちの代の集大成として位置付けていたイベントですね。吉本興業のお笑い芸人さんをゲストでお招きしたステージ、地震を体験できる特別な車の体験エリア、環境問題に関するクイズ、ソフトバンク社のペッパーくんプログラミング体験にキッチンカーなど盛りだくさんの内容でした。様々な企業や行政機関、学校などの協力が得られて、活動の中で積み上げた信頼と成長を感じた一方、来場者は500名ほどともっと集められたのではという悔しさも残りました」

かっかつ祭の実施メンバーたちと

他にも、島巡り冊子は大きな反響があった。3年に一度瀬戸内の島々を中心に開催されている瀬戸内国際芸術祭。その際に会場になっていない島の魅力を紹介する内容で、各公共施設に配架した冊子は好評で増刷になった。さらに、小豆島を中心に行ったデジタルスタンプラリーは890人が参加。さまざまな施設や飲食店を巻き込み、50以上のスポットを設け、そのうち小豆島島内の12ヶ所には施設ごとに割引や特典をもらえるクーポンを配布する仕組みを作った。

「地元香川に貢献したいという思いで法人化後も取り組んできましたが、なかなか大きな変化を作ることは簡単ではないですよね。1人でできることは限度がありますし、お金もある程度集めないと活動ができないです。生徒たちによる活動なので、大人たちをどう巻き込むかも大事です。しかし、私たちの活動を通して、香川の高校生って意外とできるね、もっといろんなことを任せていいんじゃないかな、と思ってもらえるようになったことが大きな実績かなと思います」

作成した島巡りガイドの冊子

中高生主体と謳われる活動は少なくないが、実態は先生や保護者などが主導しているケースも多い。あくまで中高生だけで法人運営を行い、意思決定も中高生だけ。交渉も前面に出る。時には大人に頼った方が楽だと感じることもあったようだが、中高生主体をやり切ったことは特筆すべきだろう。

「3月末で私は高校も団体も卒業します。後輩が成長しましたし、新メンバーも増え、安心して任せられると思います。中高生だからといって子ども扱いされず、いろんなことができるんだと思われるようになり、行政からの依頼も増えたので、このまま後輩たちにも頑張ってほしいし、ぜひたくさんの高校生たちに、この団体を活用して自分がやりたいことをやってほしいと思います」

大学進学に向けて準備を進める白井さん。経営やアントレプレナーシップを学びたいと考えている。一度香川を離れるとのことだが、最後にご自身の展望を伺った。

白井航介さん

「将来的には香川に戻ってきて、地元でも活動したいと思います。でも、もっと大きいステージでやっていきたいと思います。中高生時代はボランティア側面も強かったですが、ビジネスの視点で地域活性化を捉えたり、香川も含めた地方自治体をどうしていくのかという視点で考えたりしていきたいです」

4月から、白井さんの思いを引き継いだ後輩たちの活動が始まっている。白井さんの友人たちとスタートした活動は、香川県内の多様な学校の中高生が集まるプラットフォームになりつつある。興味を持った中高生はもちろん、面白い若者へ応援したい大人からの寄付など常に募集しているとのこと。今後の白井さんと、香川活性化生徒の会の活躍に目が離せない。

谷村一成

© 株式会社ゼネラルリンク