いよいよ国立・決勝! 埼玉WKの全勝Vか? BL東京の名門復活Vか?

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埼玉ワイルドナイツが2季ぶり2回目の優勝へ全勝で駆け抜けるのか、東芝ブレイブルーパス東京が名門復活を遂げる初優勝を手繰り寄せるのか。いよいよ3シーズン目の『NTTジャパンラグビーリーグワン』チャンピオンが決まる。埼玉WKもBL東京も『NTTリーグワン ジャパンラグビー2023-24 プレーオフトーナメント』準決勝で確固たる強さを見せ付けて、最後の舞台・国立競技場へ駒を進めた。

5月18日・秩父宮ラグビー場での準決勝第1戦でリーグ戦1位の埼玉WKは4位横浜キヤノンイーグルスと対峙した。開始早々SO松田力也がパスと見せかけて密集を突破、そのまま距離を稼ぐと、フェーズを重ねて最後は右サイドに張ったWTB竹山晃暉がダイビングトライ。右タッチライン際のシビアなGは決まらなかったが、埼玉WKが幸先良く5-0とリードした。

7分横浜EにPGで3点返されると、その2分後SH小山大輝、松田、FB山沢拓也FLラクラン・ボーシェーとつないで、左サイドへ回り込んだWTBマリカ・コロインベテへ。オーストラリア代表59キャップのトライゲッターは3人のタックルをかい潜り、オフロードパス一閃。LOジャック・コーネルセンがインゴールにボールを運んだ。その後横浜EはSO田村優のPGを外すも、松田がきっちり決めて13-3と埼玉WKリードで前半を終えた。

堀江翔太(埼玉ワイルドナイツ) (C)スエイシナオヨシ

後半は横浜Eが反撃開始。44分敵陣深くのラインアウトで素早くボールを入れて押し込むと、53分にはWTB竹澤正祥が山沢のタックルを受けながら、インゴールにボールを叩き付けて逆転。田村が2本ともGを成功させて13-17とリードを広げた。

ならば59分、ハーフウェイライン付近で横浜Eの守備網の綻びを見付けた松田が、インゴールライン寸前までビッグゲイン。すぐさま南アフリカ代表78キャップのCTBダミアン・デアレンデがピック&ゴーでトライ。松田のGも成功して20-17と埼玉WKが再びリード。すると横浜EはPR岡部崇人が故意の反則により、シンビン(10分間の一時的退場)となった。数的不利となった横浜Eだが、鬼気迫るアタックを見せるも、埼玉WKの牙城は崩せず。途中出場のWTB長田智希のターンオーバーからのトライは決まらなかったが、珍しいミスも散見し、苦しんだ埼玉WKが20-17で3年連続ファイナル進出を決めた。

試合後、ロビー・ディーンズ監督が「本当に接戦になった。イーグルスが素晴らしいプレーを見せて、我々にプレッシャーを掛けてきたが、選手たちは我慢をして自分たちの道を見付けてくれた。いくつかペナルティがあったし、必要のないペナルティもあったことは改善しないといけないが、解決策を見つけるまで我慢できていた」と振り返れば、HO坂手淳史主将も「後半最初の20分は相手のモメンタムを抑えるように意識していたが、止められずにそこは反省したい。でもプレーオフは3点差でも1点差でも勝てばいい」とキッパリ。

プレイヤー・オブ・ザ・マッチ(POTM)に選出された松田は「勝てて良かった。しんどいゲーム、プレッシャーもかけられたが、勝てて良かった」と安堵した表情を見せつつ、「最後に勝ってふたりに笑顔で次のステージに向かってほしい」と今季限りで引退するHO堀江翔太とSH内田啓介へ思いを改めて口にした。

田村優(横浜キヤノンイーグルス) (C)スエイシナオヨシ

一方、今季も決勝に届かった沢木敬介監督だが「今季のベストゲームだった。負けたことは悔しいが、選手たちは今持てる力を出し切った。それでも勝てないことが今の実力だと思う。あと3点が次の課題。来週は今日よりベストゲームをしないといけない」と3位決定戦を睨めば、田村も「王者パナソニックが1枚も2枚も上。1週間準備したものはすべて出せた。今日ちょっと焦らせるところまでいったが、あとひとつ何かが必要」と前を向いた。

リーチ マイケル(東芝ブレイブルーパス東京) (C)スエイシナオヨシ

翌19日の秩父宮では2位BL東京が3位東京サンゴリアスと激突。BL東京はキックオフと同時にエナジー全開、ハイテンボでアタックし続ける東京SGの猛攻にさらされた。過去2試合において接点で後手に回った反省からFWが積極的な前へ出るが、BL東京ディフェンス網は崩れず。8分にSO髙本幹也にDGで先制され、22分にはHO堀越康介にラインアウトモールからインゴールに侵入されたが、印象としてはBL東京がよく耐え抜いたという印象だった。この日BL東京はアクシデントに見舞われていた。キックオフ直前にニュージーランド3キャップのCTBセタ・タマニバルがメンバー外となり、24分にはもうひとりのCTBニコラス・マクラカンが負傷交代。急遽ベンチ入りした眞野泰地がスクランブル出場しながら奮起したのだった。

10点を追う展開となったBL東京は慌てず騒がず。ショットではなく、あくまでトライ狙いのアタックを選択した。37分相手陣内でのマイボールラインアウトも東京SGにスイープされるも、BL東京はすぐさまボールを確保。近場を攻めたBL東京は5フェーズ目にLOジェイコブ・ピアスがトライ。Gも通して7-10とすると、WTBジョネ・ナイカブラの独走ランや11フェーズにわたるアタックはスコアに至らなかったが、確かな手応えとなってハーフタイムに突入した。

チェスリン・コルビ(東京サンゴリアス) (C)スエイシナオヨシ

後半早々、BL東京の手応えが実を結ぶ。42分ナイカブラのギャップを突いて抜け出すとフォローに回ったFL佐々木剛がFB松島幸太朗を振り切り逆転トライ。この試合でPOTMとなった佐々木は殊勲トライを「松島選手は最後の最後ボールを叩いてくるので、右手に持ち替えて最後も両手でしっかりグラウンディングした」と冷静に振り返った。

東京SGもすぐやり返した。49分南ア代表31キャップのWTBチェスリン・コルビのゲインからSH齋藤直人が素早くインゴールに飛び込むも、これはテレビマッチオフィシャル(ビデオ判定)でペナルティが判明してトライは取り消しに。ならば54分に髙本のPGで1点差に詰め寄ると、1分後に眞野が突破し、FB松永拓朗が前進、NZ33キャップのFLシャノン・フリゼルがボールをピックしてすぐさま逆転すると、63分ゲインラインを切ったWTB桑山淳生が3人のタックルを受けながらもナイカブラにボールを託すと、『ラグビーワールドカップ2023』に出場したWTBがそのままトライ。NZ代表56キャップの世界最高峰の司令塔リッチー・モウンガのGも決まり28-13として勝負あり。74分東京SGが意地のトライを返したが、28-20でBL東京がリーグワン初のファイナル進出を手繰り寄せた。

試合後、トッド・ブラックアダーHCが「選手全員が仕事をしてくれた。前半プレッシャーが掛かった状態でも結束力を見せてくれた。腕相撲のような一進一退の攻防だったが規律を守り、ボールを持った時は東芝らしいラグビーをしてくれた。最後に勝った選手たちを誇りに思う」と選手を称えれば、NO8リーチ マイケル主将は東芝のラグビースタイルを「ひとりひとりがラグビーの原点である接点から逃げない。ボールを持ったら必ず前へ出る」と解説した。

リッチー・モウンガ(東芝ブレイブルーパス東京) (C)スエイシナオヨシ

4本のキックすべてを決めたモウンガは「パナソニックは全員がワールドクラスでワールドクラスのコーチ陣が揃うワールドクラスのチーム。パナソニック相手に正確性を欠くと高い代償を払うことになる。覚悟を持って正確性を持ったプレーをしたい」とファイナルへの意気込みを語った。

涙を飲んだ東京SGは田中澄憲監督が「準備したプランでうまく崩せた。前半東芝も少々パニックに陥ったと思うが、小さなミス。22分まで22mラインに4回入ってスコアは1回だけというのがこのゲームを物語っている。あそこが大きかった」と敗因を挙げれば、堀越主将も「簡単なミス。せっかく敵陣に入ってもミスしたのが2回あった。簡単なミスが勝敗を分けたと思う」と同意した。

手に汗握る準決勝を経て、最後の大一番は埼玉WKとBL東京の顔合わせとなった。トップリーグ以降の両軍の通算対戦成績は埼玉WKが19勝1分12敗と勝ち越し。3月9日『NTTリーグワン2023-24』第9節は開始40秒モウンガの独走トライで幕を開けたが、10分を待たずに埼玉WKが同点に追い付くと、その後は主導権は渡さず36-24で白星を飾ったのだった。

果たして、国立で優勝トロフィーを掲げるのは埼玉WKか、BL東京か。『NTTリーグワン2023-24 プレーオフトーナメント』決勝・埼玉WK×BL東京は5月26日(日)・国立競技場にてキックオフ。試合当日は東京体育館外構エリアにてリーグワン所属クラブのブースをはじめ、2024-25シーズンより新たに参入する予定の3チームのブースや、LGBTQ+に関する情報を発信するブース、アップサイクルグッズの制作体験ができるブースなどが揃う「リーグワンヴィレッジ」をオープン。3位決定戦・横浜E×東京SGは25日(土)・秩父宮ラグビー場にて開催。3位決定戦の模様はBS日テレ、決勝の模様は日本テレビ系にて全国生中継。2試合ともチケット発売中。

取材・文:碧山緒里摩(ぴあ)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 プレーオフトーナメントのチケット情報
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リポビタンDチャレンジカップ2024のチケット情報
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