震災の記憶、思いしみじみ 富岡町民劇団「ホーム」故郷で初上演

富岡町民劇団「ホーム」による朗読と音楽による構成劇の様子

 富岡町民劇団「ホーム」は19日、朗読と音楽による構成劇「生きている 生きてゆく~ビッグパレットふくしま避難所記より」を町文化交流センター「学びの森」で上演した。団員が地元での初舞台に立ち、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故に翻弄(ほんろう)された人々の思いや歩みを伝えた。NPO法人富岡町3.11を語る会の主催。

 劇団は町民ら有志で2023年に結成。ビッグパレットふくしま(郡山市)に避難した人々の声をまとめた記録本「生きている 生きてゆく」を基に、語る会代表の青木淑子さんが脚本・演出を手がけた。福島市や郡山市などで計4回公演しており、同町では初めて。

 「家に帰りたいわね。富岡、いい所なのよ」「顔は笑ってるけど、心では泣いているんだよ」―。避難所で活動した足湯ボランティアが集めた避難者の肉声を、当事者に代わって伝えた。団員約10人は当事者の気持ちを想像して表現を工夫し、自らの経験を重ねながら読み上げた。

 町出身のシンガー・ソングライター伊藤優大さんが音楽を担当し、福島市の詩人和合亮一さんと、当時県職員として避難所運営を担った天野和彦福島大特任教授が特別出演した。町内外から約110人が訪れ、舞台を通して避難生活の記憶や、避難者の望郷の念などに思いをはせた。

 上演後、団長の平良結香里さんは「とても良い出来栄えだった。震災・原発事故の記憶や経験の継承を続けていきたい」と語った。

 ビッグパレットふくしまは震災と原発事故で県内最大級の避難所となり、富岡町や川内村などの住民が身を寄せた。当時、避難生活を送った団員の西山栄子さんは「いつかビッグパレットで公演するのが目標。それまで頑張って活動を続けたい」と意欲を見せた。

© 福島民友新聞株式会社