【MM Another Story:アルファロメオ ジュリアの「別腹」】生粋のスポーツサルーンにとって「クアドリフォリオ」とはどれほど特別なのか?

2024年5月1日から発売中の「MotorMagazine6月号」第一特集は「夏が来る前に、スポーツカーに乗らないか」。パート3では、アルファロメオ ジュリアとレクサス IS、それぞれの最上級&最高性能モデルを比較試乗しています。中でも気になるのが、「クアドリフォリオ」の格別ぶり。どんな感動体験を味わうことができるのでしょうか?(MotorMagazine 2024年6月号より再構成/写真:井上雅行)

ほぼ倍近い価格差に相応しい「差別化」が気になる

アルファロメオの中でも、「QUADRIGFOGLIO(クアドリフォリオ)」はどれほどに特別なのか。

「RACEモード」では、シフトチェンジのたびに心地よいハブリング音を楽しむことができた。

端的に言って、プライスタグを見ればよくわかります。

今回、特集内で紹介しているジュリアの場合、VELOCE(ヴェローチェ):697万円に対し、クアドリフォリオ:1357万円と、ほとんど2倍の価格がついてます。プレミアムSUVのステルヴィオでも、ベースモデルのTIが753万円、ヴェローチェが809万円とかなり拮抗しているにも関わらず、クアドリフォリオ1400万円とぶっちぎりの存在感を放ちます。

もちろん価格がすべての価値を物語るわけでは、けっしてありません。けれどそこに、なにがしかの圧倒的な違いがあることは想像に難くないでしょう。

クアドリフォリオにだけ搭載されるこのV6ユニットは、2015年に発表されてから今に至るまで、世界的に高評価を集め続けている稀有な存在だ。巡航領域でも相当に力強く、長距離を走っても疲れにくいという。

たとえばそもそも、搭載されるエンジンが違います。ジュリア ヴェローチェは2L直4ターボで280ps/400Nmなのに対して、ジュリア クアドリフォリオはスペシャルな2.9L V6ツインターボで510ps/600Nm。これもまた、わかりやすい差別化と言えそうです。

後者の最高速度は300km/hを超えるなど、強心臓から生まれる絶対性能は、やはり圧倒的です。それでは、常日頃から「交通の流れをリードしなくては気がすまない!」というタイプではないドライバーの場合は、ぶっちぎりの価格差が生む「恩恵」を実感することはできないのでしょうか?

いえいえ、そんなことはけっしてありません。

日常性を損なうことなく、一歩先の領域へ

たとえばインテリアの設えひとつとっても、ヴェローチェがスポーツレザーなのに対してクアドリフォリオはスペシャルなレザー/アルカンターラコンビとなる上に、カーボンインサートのアレンジが加わります。シートはスパルコ製カーボンバケットタイプ、加飾もカーボンパネル(3D仕上げ)となります。

12.3インチのデジタルクラスターメーターを採用。「エボルブド(Evolved)」「リラックス(Relax)」「ヘリテージ(Heritage)」に加え、「レース(Race)」の選択が可能となっっている。

もちろんヴェローチェの質感に不満を感じることは、ないはずです。アルミニウムスポーツペダルやキックプレートなどは共通、オーディオも変わらず、極上のharman/kardonプレミアムオーディオシステム(14スピーカー/900Wアンプ)が奢られています。とはいえもしも乗り比べてみたならば、キャビンの雰囲気が少し違っていることがわかるしょう。

絶対的な速さではなく、操る楽しさといった感性面でもクワドリフォリオには特別な装備が設定されています。アクティブサスペンションやALFAシャシーメイドコントロールは、日常的な快適性を犠牲にすることなく、とびきりのスポーティ感を楽しませてくれるはずです。

2023年12月の仕様向上で、ドライバーの意図したとおりの走りを実現する「メカニカル LSD(リミテッド・スリップ・ディファレンシャル)」をクアドリフォリオとして初めて搭載した。

クアドリフォリオではさらに、一歩踏み込んだ先の領域での安心感が違ってきます。ALFAアクティブトルクベクタリングや、メカニカルスリップディファレンシャルといった、より積極的なドライバビングに応える装備も万全。チューニングが施されたスポーツブレーキもまた、意のままにクルマを操るためにこだわり抜かれたデバイスです。

本誌6月号の特集ではレクサスの特別な1台「IS 500」とともに、フラッグシップスポーツサルーンとしてのジュリア クワドリフォリオを比較試乗しています。自動車評論家 大谷達也氏によって、五官にもたらされるさまざまな「感動」がつぶさに物語られているのですが、そこから見えてくる(聴こえてくる?)のは「音」の魅惑なのでした。

V6ユニットとツイン デュアルエキゾーストが奏でる「官能的なサウンド」は確かに、クアドリフォリオのオーナーだけが味わうことができる恩寵と言えそうです。

デビューして以降も、熟成が進む。とくに今回の取材では、持ち味の俊敏性はそのままに、快適性が向上していることが確認できた。

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