犬の毛は染めても大丈夫?それとも虐待!? 中国で“パンダ犬”が大人気 結膜炎や皮膚炎など健康への影響を獣医師が解説

中国のSNS上に、犬の毛を染めてパンダやトラなどに変身させる動画が次々とアップされている。

江蘇省泰州市の動物園では、チャウチャウを白と黒でパンダそっくりに染めた“パンダ犬”が展示され、一目見ようと多くの客が訪れている。

こうした行為は「動物虐待」にあたるのではないかとの批判もあるが、犬への健康上の問題はないのか。

Cafelierペットクリニックの小林充子院長に聞いた。

目にカラーリング剤が入る危険性

ーー犬のカラーリングをどう思う?

犬が健康に生活をしていく上で、カラーリングは必要ありませんし、体力的にも負担がかかります。

また、犬を違う動物のように見せかけるというのは人間のエゴです。

自然由来のカラー剤を使っていても、毛が伸びてきたらおそらく繰り返しカラーリングすることになるので、皮膚にダメージを与え、毛が痩せたり生えなくなるといった形態的な異常が出てくる可能性があります。

捉え方にもよりますが、虐待とも言えると思います。

ーー健康リスクは?

本来はパッチテストをして使用する成分に対するアレルギー反応が出ないかを確認する必要がありますが、おそらくそこまではやっていないと思います。

パッチテストは時間がかかるので、染める2日前くらいから準備しなくてはいけなくて手間がかかります。

アレルギー体質だった場合は、毛を染めた部分の根元の皮膚が赤くただれたり、腫れたり、少したってから毛根がやられて毛がごっそり抜けてしまうことがあります。

また、パンダ犬は目の周りもカラーリングされていますが、目の中や粘膜面に薬剤が入ることは危険です。

粘膜は皮膚よりも吸収が早いので、ちょっと目に入っただけで結膜が腫れて目が開かなくなるといった症状が出て来やすいです。

犬の表皮は人間より薄い

パンダ犬の販売業者は、毛染めに使った染料は日本から取り寄せた動物用の物で、安全上に問題はないと説明する。

犬の皮膚や嗅覚は人間と異なるため、匂いが強い人間用のカラーリング剤は気道を痛める危険性があり、絶対に使ってはいけないと小林院長は話す。

ーー犬の皮膚は人間と比べて弱い?

犬の場合、毛が皮膚を守っているので、「表皮」といわれる皮膚の表面の部分は人間に比べてだいぶ薄くできています。

全体的な皮膚の厚さというより、皮膚のバリア機能を持っている表皮の部分が、人間の約3分の1の厚さです。

そこにびっしりと生えている毛にダメージを与えれば、最終的に皮膚全体にダメージが出やすくなります。

ーーカラーリング剤は人間のものと違う?

犬の皮膚のペーハー(pH・水素イオン指数)と人間の皮膚のぺーハーは大きく違い、犬の方が炎症が強く出ます。

また、嗅覚の優れている動物なので、なるべく匂いのしないもので天然素材を使う必要があります。

人間のカラーリング剤はすごく強い匂いがするので、刺激物として気道を痛めるなど、さまざまな症状を引き起こす可能性があり、絶対に使ってはいけません。

もし人間用の薬剤を使ってしまった場合は、すぐに洗い落として病院に連れて行く必要があります。

犬のカラーリング剤は天然成分を使用しているということですが、自然由来以外のものが全く入っていないかどうかはわかりません。

どのカラーリング剤にも毛が痛まないような成分が入っているので、毛に色を付けるものは天然素材でもトリートメントは自然由来のものではない可能性があります。

4時間近く立ちっぱなし

一方、施術中はずっと立っていなくてはいけないため、体力的にも大きな負担だと小林院長は指摘する。

ーー犬へのストレスは?

体力的な負担も大きいと思います。

カラーリング剤をつけてから15分~20分ほど薬剤が浸透するのを待ってシャンプーをします。
その後、乾かしてカットするので、通常のトリミングに比べてだいぶ長くかかります。

染色の範囲にもよりますが、1~2時間余計にかかる可能性があります。

一般的な3キロほどのプードルのトリミング時間は、2時間半から3時間です。
それに加えてカラーリングを何か所かすると4時間から4時間半かかることになります。

その間、犬はずっと立ちっぱなしとなり、とても疲れることになります。

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