「まるで夢の国」5歳で魅せられ・・・旅する蝶「アサギマダラ」を呼ぶ花壇をつくった少女

日本と台湾、遠くは中国まで、海を越え2000キロ以上移動するといわれる渡り蝶の「アサギマダラ」。日本には年に2回飛来します。

このアサギマダラに魅せられた少女が、蝶が羽根を休める花壇をつくりました。

父親と二人三脚で5年かけて手入れした花壇には、今年これまでに最も多い100匹以上のアサギマダラが訪れ多くの人を魅了しています。

いまだ謎に包まれた生態 日本には春と秋に飛来

アサギマダラ。

台湾や南西諸島から日本まで海を渡って旅をする「渡り蝶」です。

その移動距離は2000キロ以上とも言われ、日本には春と秋の2度飛来しますが、その生態の大部分はいまだ謎に包まれています。

「羽が綺麗で飛び方がかわいい」

去年8月。

福岡県宗像市のホテルにある花壇で、農作業をする親子がいました。

新留かんなさん(14)と父親の等さん(53)です。

新留かんなさん「羽が綺麗で飛び方がかわいい」

親子は次の春に日本に飛来するアサギマダラを呼び込むため、蝶が好む「スイゼンジナ」という植物を植えていました。

新留かんなさん「土と牛糞を混ぜる作業をしています。スイゼンジナは5月に花が咲くからその花の蜜を吸いにアサギマダラがやってくるんです。」

春にはスイゼンジナを、秋にはフジバカマが咲くように手入れをしています。

新留等さん「アサギマダラを呼ぶためには花を育てるというのは最低の条件ですよ。ここは娘が育てている花の花壇。私は手伝っているただの父親です」

新留かんなさん「毛虫!毛虫が!気持ち悪い。虫だいたい苦手です」

かんなさん、時には苦手な毛虫と格闘しながら、この夏500株以上のスイゼンジナを植えました。

新留かんなさん「大変でした。アサギマダラもお客さんも、いっぱい来てくれたら嬉しいな」

アサギマダラとの出会いは5歳

かんなさんは5歳の時に、家族旅行で訪れた大分県の姫島で、初めてアサギマダラを目にしました。

新留かんなさん「小さい体で旅をするっていうところとかに、興味を持ちました」

その美しい姿にすっかり魅了されたかんなさん。

アサギマダラを観察できる場所を作りたいと考えるようになりました。

小学校で念願の花壇づくり でもアサビマダラ現れず

小学3年生の時、通っていた小学校に頼んで校庭の一角にアサギマダラが好む花を植えた花壇を作りました。

しかし、アサギマダラは飛んで来ませんでした。

『お父さん、諦めたくないんよ』

新留等さん「『かんな、もうこの場所で花壇はできんけんね』って言ったら、『お父さん、諦めたくないんよ』って、アサギマダラをたくさんの人に見せてやりたいんよって、力強い子供の顔で言うんですよね」

かんなさんの強い思いに突き動かされた等さん。花壇を作らせてもらえる場所探しに協力します。

父と一緒に二人三脚で花壇づくり

様々な施設と交渉を続ける中で、快諾してくれたのが福岡県宗像市のホテルでした。

周辺には海と森があり、アサギマダラを呼ぶのに適した場所です。ただ、花壇は自宅から遠く、かんなさんが自力で通うことはできません。

等さんは仕事でどんなに疲れていても、週末には必ずかんなさんと一緒に花壇を訪れます。

新留等さん「仕事でキツイなという時はあるけど、行かないということはないです」

新留等さん「小さい時はね、あれやこれや会話しながらしていたけど、もう中学生やけんねぇガン無視されます」

RKB坂本祥カメラマン「でもお父さんのこと嫌いじゃないよね?」

新留等さん「大好きやもんね?」

新留かんなさん「いや…」

花壇の花を守る たくさんの人が手伝いに

11月。

寒さに弱いスイゼンジナを守るため、ビニールで覆います。

そして、アサギマダラを通して知り合いになった人たちが手伝いに来てくれました。

手伝いに訪れた女性「すごい、かんなちゃん、おはようございまーす。すごいね、綺麗にできとう」

手伝いに訪れた女性「やっぱり、かんなちゃんのアサギマダラに対する想いと、家族、お父さんの想いが強いので、ちょっとでもできればなと思ってお手伝いさせてもらっています」

新留かんなさん「すごく助かっています。ありがたい。去年より頑丈にできているから、冬を乗り越えてくれればいいな」

かんなさんがこのホテルで花壇作りを始めたのは9歳の時。アサギマダラが飛来する5月に花が咲くように、毎週訪れて調整しています。

5月 旅する蝶がやってきた!

かんなさんがつくった花壇に、アサギマダラがやってきました。

旅する美しい蝶を一目見ようと、たくさんの人が訪れます。

訪れた人「違う国に来たみたい、夢の国。羽がきれい、私たちの心が豊かになります」

これだけ手をかけても、アサギマダラが毎年やってきてくれるわけではありません。去年秋に飛来したのは、わずか1匹でした。

新留かんなさん「ずっとやってきた成果が出たかな。アサギマダラもお客さんもたくさんきてくれて嬉しい」

新留等さん「これまでで最高ですよ。お客さんが来て喜んでくれる、それだけで娘も私も大満足。娘から私が育てられよるみたい、あきらめないというのを娘が教えてくれました」

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