心が壊れる前に「考えるのをやめた」? 完全無表情の水原一平被告 心理分析家が指摘する「防衛本能」

ドジャースの大谷翔平選手の口座から26億円以上を不正送金した罪などに問われている元通訳の水原一平被告が14日、アメリカ・ロサンゼルスの連邦地方裁判所に出廷した。

報道陣の問いかけには一切反応せず、終始無表情を貫いた水原被告の心理状態について、心理分析家の清水 建二代表に聞いた。

「虚無感」や「放心状態」

ーー水原被告の様子をどう見る?

こういった場面で見られる典型的な恥や罪悪感が全く感じられません。

恥や罪悪感というのは、うつむきながら唇に力を入れたりする表情がありますが、それが見られません。

片方の口角だけ上げるのは「軽蔑」といった感情の現れで、下を向きながらこの表情をする場合は自分に対する軽蔑の現れですが、そういった顔の動きもありません。

ーーではどんな感情?

報道陣に囲まれて緊張したり、何らかの感情のブレがあれば、下唇や頬を噛むといった動きがあってもいいのですが、下を向くこともほとんどなく、表情筋が全然動いていません。

強いて言うならば、「虚無感」や「放心状態」といったものが表情から観察できます。

抑制している感情がそもそも無い

人間は表情をコントロールすることに慣れているが、感情を抑制しきれない瞬間が「微表情」という現象で出ることがあるという。

しかし、水原被告の場合、それすら見られないと清水代表は話す。

ーー何も感じていない?

人間は自分にとって重要なことに対して感情が揺れ動きます。

しかし大谷選手の名前を記者から投げかけられても、全く動じることなく前を見て歩いています。
さまざまな質問に対して一切表情を動かさない、つまり感情も動いていないことがわかります。

怒られている子どもを見るとわかりますが、感情的になるとかなり口元が動きます。
大人でも謝罪会見などでは下を向いて口をモゴモゴさせます。

堂々と前を向けば、恥や罪悪感が無いように見せることはできます。
しかし、詐欺の罪に問われ、報道陣に囲まれたら、普通は何らかの感情がうずまくものです。

緊張していたら瞬きも増えますが、それもなく、虚無、投げやりの状態に見えます。

ーー感情を完璧にコントロールしている?

もちろん、我々は表情をコントロールすることには慣れていますが、感情を抑制しても抑制しきれない感情が、「微表情」という現象で出ることが知られています。

「マイクロエクスプレッションズ」といって、唇を一瞬噛んだり、口に力を入れたり、まぶたの動きなど0.5秒間ほどのわずかな動きがありますが、それも見られませんでした。

つまり、そもそも抑制している感情が無い可能性が高いということです。
重要な場面でも感情が動いてない虚無状態、放心状態だと言えるのかもしれません。

自分の心が壊れないための“防衛本能”

水原被告は司法取引により裁判の行方がほぼ決まっているとされている。

こうしたことから、「もう決まっているから反省も何もない」と思っている可能性があると清水 代表は指摘する。

ーー水原被告はどのような気持ちだと思う?

何か悪いことをして社会的なルールから逸脱してしまったと思ったら、反省したり、謝りたいという気持ちが表情に出るものです。

表情以外にも体を縮小ませたりする動きは、補償活動や謝罪していこうという気持ちの表れになりますが、今回の水原被告の態度からは一切見られませんでした。

もしかしたら、司法取引をして有罪を認める流れは既定路線で、感情を動かす必要性がないと感じたのかもしれません。

人間は「重要だ」と感じた時に感情的になって表情に出るので、裁判の行方が決まっている以上、「反省も何もない」と思っている可能性があります。

ーーだから「反省の言葉は?」の問い掛けにも無反応だった?

水原被告の方に寄せて言うならば、自分が犯した罪が大きすぎて、それを受け止められなかった。

受け止めようと思ったら、自分の心が壊れてしまうといった意味で“防衛本能”が働いて「考えるのをやめよう」と思ったのかもしれません。

今更何もできない、どうすることもできないから感情も出ない。
行動を起こして何かできると思えるのであれば感情的になりますが、そもそも何もできないということは、もはや反省しても仕方がないと思っているのかもしれません。

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