ベロティカ[ライブレポート]6人の気高き美神が放つ“エロティシズム”で描かれた絶頂世界

ベロティカ[ライブレポート]6人の気高き美神が放つ“エロティシズム”で描かれた絶頂世界

レーベル『サークルライチ』所属のベロティカが、5月2日(木)に渋谷・WOMBLIVEにてワンマンライブ<ベロティカ主催 結成半年記念『エロティシズム』>を開催した。

サブカル、アングラの雰囲気を醸す同レーベルの中で、“エロティシズム”という独自のコンセプトを掲げる彼女たちは、結成半年を祝うこの日のステージで、麗しさがありながらも、優雅で気品のあるパフォーマンスを披露。グループの底知れぬ表現力を見事に魅せた。

本記事では、ベロティカが観客をエクスタシーへと誘った同公演の模様をお伝えする。

取材&文:冬将軍

撮影:saru

“こんにちはー、ベロティカです! 今日は1番アツい日にしていきましょうー!”

姫咲のえるが明るく挨拶し、軽快なリズムに乗せて始まったのは「覚醒butterfly」だ。キラキラとしたハッピーなサウンドに包まれ、キュートな動きで重苦しい愛を歌う、黒と白を基調にゴールドの差し色が際立つ新衣装を纏った6人組。

姫咲のえる<ベロティカ主催 結成半年記念『エロティシズム』>WOMBLIVE(2024年5月2日)

アイドルシーンに新たな風を吹かせているベロティカが、結成半周年となるワンマンライブ<ベロティカ主催 結成半年記念『エロティシズム』>を渋谷・WOMBLIVEにて開催した。同会場は昨年2023年11月2日に行なわれた、レーベル『サークルライチ』の決起集会というべきイベント<サブカル Vol.零>で、ベロティカがレーベル“第弍期生グループ”としてステージデビューを飾った場所である。その場所にワンマンライブで凱旋。チケットはソールドアウトで当日を迎えた。

ソリッドなドラムのリズムに合わせ、星月夜あむの婀娜(あだ)めく太い歌声で始まった「愛の罠」。“私たちの甘い罠にかかって、堕ちてちょうだ〜い♡”と、兎沙ぱみぇが淫らに誘い、直球で強火なビートに乗せてキャッチーなメロディが駆け抜けていく。ギャルな風貌から甘い色香を漂わすあむを筆頭に、キュートからセクシーまで変幻自在の声色で攻め立てる怪造人間、べっとりと耳にまとわりつくようなぱみぇの声量たっぷりの歌声……ベロティカが優雅に放つエロティシズムロックがオーディエンスを惑わしていく。

星月夜あむ<ベロティカ主催 結成半年記念『エロティシズム』>WOMBLIVE(2024年5月2日)

彼女たちが掲げるコンセプト“エロティシズム”は、アイドルシーンで長く親しまれてきた“清純派”とは対極にあるものだろう。もっと言うなら、サブカルや奇譚的なイメージを持ったグループが多くいる所属レーベル『サークルライチ』においても異彩を放っている。音楽性もそうだ。レーベルの根幹にあるヴィジュアル系ロックで例えるのなら“黒服系”に対する“白系”、“コテ系”に対する“オサレ系”という特異なポジションだ。歌詞も同レーベルには珍しく、多くの楽曲は女性視点で描かれていることも、そうした特異性に繋がっている。しかしながら、その訴求力はアイドルファン、ヴィジュアル系ファン、ロックファンに収まり切らず、広範囲に及んでいる。現にソールドアウトしたフロアには10代、20代の若い世代を中心としながらも男女とも幅広い層のオーディエンスがフロアを埋め尽くしている。

続く「SADISTIC WORLD」はカバー曲ながら、今やベロティカの代表曲と言っていいほどの完成度と破壊力を持ったキラーチューンである。クールにキメこんだボーカリゼーションから爆発的なサビでフロアの熱気を一気に掌握する。淑やかに見えて熱く芯のある心の内を歌にぶつけてくるのえる、可憐に愛嬌を振りまいているようで、指先まで艶めかしく動かす甘狼ろあにドキリとする。そして気づけば、すらりと伸びた四肢を華麗に動かしながらミステリアスで蠱惑的な表情を魅せる冬邑ハクに惹き込まれていた。

甘狼ろあ<ベロティカ主催 結成半年記念『エロティシズム』>WOMBLIVE(2024年5月2日)

そう、彼女たちが放つ“エロティシズム”とは露骨なリビドーではなく、人間の本能を曝け出す美学なのである。6人がステージから放つ気品がそれを物語っている。

フロアから抑え切れない感情とともに、無数の拳と6色のペンライトが上がった「Oh my ロマンティカ」を終えると、1人ずつの自己紹介を交えた挨拶へ。それぞれが新衣装のお気に入りポイントを語り、“ベロティカの絆”だという蝶が共通して入っているとハク。そしてソールドアウトした礼を述べると、「Instrumental」へ流れる。柔らかなメロディが紡がれていく。

“ちょっとみんなを平成の時代へ戻します!! みんなギャルになれますか?”

あむの言葉に誘われ、ユーロビートが高鳴った。「MiDNiGHT ANTHEM」を投下。今年のエイプリルフールネタとしてベロティカもとい、“マㄘ"ノヽ°ネェ★ageha”として配信された楽曲だ。令和のギャルサーアイドルが往年のパラパラを歌い踊る。アイドルがパラパラを踊ることは珍しくはないが、“それ風”になってしまうことがほとんどだ。しかしここはさすがベロティカ。単調な振りをくり返し、躍動感を見せないステップながらも上半身はバッチリ揃える本物感で魅了。渋谷WOMBは、かつての六本木ヴェルファーレの如く様変わりした。

“半周年、まだまだこんなもんじゃないよなぁ。全員もっともっと拳上げて本能を曝け出していこうぜ”

ハクの挑発で始まった「本能」。打ち鳴らされるエレクトロビートとヘヴィなリフが猛り狂い、妖艶に6人が舞う。小悪魔ろあの“せ〜の、ばっきゅん!”を合図に6人がステージからオーディエンスの心を撃ち抜き、あむのビブラートたっぷりの歌声が轟くと、会場の熱は歯止めが効かなくなるほど上がっていく。そのまま新曲「絶頂」へ。煌びやかなシーケンスと地を這うヘヴィなリフ、加速するDビートが猛り狂いながら、そこに乗る詞はギャル味全開のイイオンナっぷりが炸裂するという、ベロティカにしか描けない絶頂の世界が拡がった。

冬邑ハク<ベロティカ主催 結成半年記念『エロティシズム』>WOMBLIVE(2024年5月2日)

Xでのリポスト企画でみんなが拡散してくれたからこそ、全員が新衣装でこのライブを迎えることができたと礼を述べると、「超NEW WORLD」からのラストスパート。怪造人間からの歌い出しをあむ、そしてハクが紡いでいき、のえる、ろあ、そしてぱみぇと丁寧にリレーして、ユニゾンへ。極上の“NEW WORLD”へとオーディエンスを昇天させる。

怪造人間<ベロティカ主催 結成半年記念『エロティシズム』>WOMBLIVE(2024年5月2日)

そのままベロティカの描いた世界は「天国の近道」へと続いた。低いところからのミックスボイスを麗かに鳴らすあむと、怪造人間の明瞭でよく透る清んだ歌声の挟間を、ぱみぇの太くハスキーな声が突き抜けていく。最後のナンバーは「君の春に触れたくて」。ベロティカが奏でる歌声によって、会場は最高潮のエクスタシーに達した。

兎沙ぱみぇ<ベロティカ主催 結成半年記念『エロティシズム』>WOMBLIVE(2024年5月2日)

最後に1人ひとりが挨拶をする。

ベロティカに入って“あむに合ってるね”と言われることが多く、今自分が1番輝いていると思えるのは支えてくれてきたみんなのおかげだと、深く頭を下げたあむ。アイドルになって多くの人に愛してもらえていると実感しているというぱみぇは、これからも好きでいて、一緒に歩んでいってほしいと述べた。“ベロティカを始めるために上京してきた”と口を開いたのえるは、知らない土地で知らない人ばかりで生きていけるか不安だったという。だが、応援してくれる人がいるから自分の居場所がベロティカにあることを実感し、だからこそ“これからもずっと一緒にいてください”と続けた。

“アイドルは初めてじゃないし、どちらかというと特級呪物みたいな感じ”と笑いを誘った怪造人間は、“こんないいグループに拾われて、こんなに素敵なメンバーに囲まれて、こんなに楽しいライブができて、私本当に幸せです”と思わず目を潤ませた。引きこもりだったので自分は何もできないと思っていたという、ろあ。込み上げる感情と涙を抑え切れずに言葉を詰まらせるも、“ろあのことを好きでいてくれるみんなに出会えて幸せです。みんなのことも幸せにするのでずっと好きでいてください”と強く口にした。

“最後って、言うこと難しいなー”とハク。過去のアイドル活動を思い返しウマくいかなかったと明かす。“最高のメンバーと出会えて……泣きたくなかったんだけどな”と、照れながら“「ハクちゃんが好きではなく、ベロティカが好き」と全部を愛してくれるみんなが大好きです……、今後もベロティカをよろしくお願いします!”と目頭を熱くさせながら語った。

さらに今年11月7日(木)、“イイオンナ”の日に渋谷Spotify O-WESTでの<結成1周年記念『ベロティシズム』>の開催が発表されると、大歓声が巻き起こった。

こうして、6人の気高き美神による酒池肉林の半周年ライブは大団円を迎えた。

結成から半年——。ベロティカの攻勢はまだ始まったばかりだ。彼女たちの放つエロティシズムに我々はますます惑わされていくのだろう。

<ベロティカ主催 結成半年記念『エロティシズム』>

インフォメーション

<ベロティカ主催1周年記念『ベロティシズム』>

日程:2024年11月7日(木)

会場:渋谷・Spotify O-WEST

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