「哲学者なのか詐欺師なのか」上岡龍太郎さん死去から1年、愛弟子が本誌に語っていた「大きな言葉」

漫才師 上岡龍太郎さん(写真・東田昇三)

2023年5月19日に、81歳で亡くなった元・芸人の上岡龍太郎さん。死去から、1年が経った。

当時、上岡さんの訃報は日本中に衝撃を与え、芸能界からも多くの追悼のコメントが集まった。

上岡さんは1959年、「横山パンチ」の名でトリオ「漫才トリオ」のメンバーとしてデビュー。解散後はピンで活動し、1968年からは「上岡龍太郎」を名乗って『探偵! ナイトスクープ』(ABCテレビほか)の初代局長など、司会者として活躍。その淀みないしゃべりに、同じく関西を中心に活躍するタレントの上沼恵美子は「おしゃべりに、ぜい肉のない方でしたね」と、訃報の翌日に出演した番組ですごさを語った。

かねてから、芸能生活40周年となる2000年に、芸能界を引退すると発言していた上岡さんは、“公約”どおり、その年に引退。その後は、テレビ、ラジオへの出演はほとんどなかったが、2007年、漫画トリオの盟友だった横山ノックさんの「お別れの声」で久しぶりに公の場へ登場し、往年の話芸を衰えさせぬ口調で弔辞を述べた。

本誌は2023年、上岡さんの愛弟子であるタレントのぜんじろうに、生前、上岡さんが語っていた哲学について聞いている。

「師匠は言葉の人。いろんな言葉が心に残っています。

最近思い出すのが、弟子修業が終わってデビューするとき、師匠に言われた言葉です。『お酒は飲んだから楽しくなるんじゃないですよ。楽しいから飲むんですよ。人生もそうですよ。『何かがあって楽しい』のではなく、『楽しいから何かがある』んです。芸能界も同じです。芸能界でウケたから、レギュラーが増えたから楽しいのではなく、楽しいから芸能界でやっていくんですよ』と。

これはめちゃくちゃ、僕にとって大きな言葉です。芸能界に入って、売れたり、賞を獲ったりすることが楽しいんじゃないよ。芸能界に入ること自体が楽しいと思うから、入るんですよと、師匠は僕に言いたかったんだと思います。そう考えると、レギュラー番組がどんどん減っていくことすら、楽しいわけです(笑)。壁にぶち当たったり、あまり結果が出ていないときこそ、楽しくしていないと。僕は師匠の言葉で、そう思い直せたりするんです。

ちょっと哲学的ですよね。師匠・上岡龍太郎は、哲学者なのか詐欺師なのか、よくわからない人でしたけど(笑)」

いまでも天国で“上岡節”を振りかざし、周囲を笑いに包んでいるに違いない。

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