全日本・青柳優馬 10周年で過酷な1日3シングルマッチを組んだワケ

 デビュー10周年記念大会が決定した青柳優馬

 今年12月でデビュー10周年を迎える全日本プロレスの青柳優馬(28)が、6月8日に故郷である長野県松本市のキッセイ文化ホール中ホールで、デビュー10周年記念大会を開催する。2022年には史上最年少でチャンピオン・カーニバルに優勝。昨年は初めて最高峰の3冠ヘビー級王座を獲得し、史上最年少で5冠王(3冠と世界タッグ)に輝くなど老舗の主力として活躍する青柳に、10周年の思いを聞いた。

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 入門は2014年の4月だった。「もう10年もたってしまったのかという思いがあります。悩みますね」と、意外な言葉を口にした。

 「10年続けて来られて良かったという思いもあれば、10年やってまだこの位置かっていう悩みもあります。自分のキャリアとか年齢を頭の中に浮かべると、不安になる時があるんですよね」

 既に3冠、世界タッグ、アジアタッグの各王座を手にし、チャンピオン・カーニバル、世界最強タッグ決定リーグ戦も制した。10年以内にタイトルホルダーという「練習生期間に思い描いていた人生設計はクリアできている」と自負する一方で、個人としても団体の一員としても「まだまだ全然満足はできていない」とも思っている。

 個人としては「私生活が潤うような感じになりたい」と、力道山やジャイアント馬場、アントニオ猪木ら往年のスター選手のようにリッチな生活を目指している。

 「プロレスをしながら金持ちになりたいっていう夢があったので。昔のレジェンド系の人たちの話を聞くと、すごく羽振りがいいじゃないですか。10年たって、自分一人で生きていく分には全然余裕はあるんですけど、羽振りをよくできるかっていうと、ギリギリのラインなので」

 団体の一員としては、全日本を「もっと大きくしたい。本当に分かりやすく、夢を与えられるような団体にしたい」という思いがある。プロレス界では新日本プロレスが1強という現実を認めつつも「(ビジネスの規模では)遠く及ばないかもしれないですけど、内容で言ったら一番面白いという自負はあります」。だからこそ、ビジネスの規模も内容に見合うように大きくしたいのだ。

 10周年記念大会では、大森北斗、本田竜輝、宮原健斗とのシングル3番勝負を組んだ。特に宮原戦では「これぞ全日本プロレスだって戦いが見せたい」とクオリティーの高さに自信を見せるとともに、「デビュー戦の相手を務めてくれた先輩」という理由もある。

 「同じ団体で10年も一緒にいる先輩って貴重なので。一緒にいた近しい先輩とか、みんな辞めていっちゃったので」という身近な存在でもあり、「(全日本が)特に苦しい状況を支えてきた1人というか、一番先頭を切って走ってた人が宮原健斗という男だと思っています」という、尊敬する存在でもある。

 宮原は5月12日、チャンピオン・カーニバルに優勝して存在感を示した。青柳は自身の現状をどうとらえているのか。

 「だいぶ底辺だと思いますよ。人気では全然上の方だと自負しているつもりなんですけど、戦績だったり今のファンの注目度的な部分でいうと、だいぶ下の方になるんじゃないかな」

 全日本では現3冠王者の安齊勇馬、双子の斉藤ジュンと斉藤レイ、4月入団で身長2メートルの綾部蓮ら後輩も頭角を現しており、そういった状況には頼もしさの反面、危機感も覚えている。

 「彼らの試合って見てて楽しいし、安心して見ていられる。僕がチケットを買って見に来ているような全日本プロレスのファンだとしたら、彼らの試合がメインイベントでも全然文句ないと思いますし、十分満足して帰れると思う。けれども、それだと青柳優馬個人がまだまだ許せないっていうちょっとした邪念があるので、そこは意地でも譲りたくないな」

 10周年記念大会の1日3試合も「とにかく返り咲きたいという思いで、重荷を背負うために組みましたね」と、復権ロードの一環であることを打ち明けた。

 10周年の先も見据えており、「全日本プロレスのトップに返り咲いて、全日本プロレスをプロレス界のトップに持っていきたい。老舗団体と言われているだけで、現状を見る限り、ホントにただただ歴史が長いだけの団体になっちゃうんで、昔の栄光を取り戻したい」と熱く語った青柳。

 まずは10周年記念大会に向けて「見に来てくれた人はいつも通り全力で楽しませる、必ず胸いっぱいにして返すというのと、全日本プロレスTVで見る、あるいはSNSで結果を追いたくなっちゃうような、来る人も来られない人も楽しめるような大会にしたい」と意気込んでいた。(デイリースポーツ・藤澤浩之)

 ◆青柳優馬(あおやぎ・ゆうま)1995年11月2日生まれ、長野県松本市出身。2014年、全日本プロレス入門。同年デビュー。17年、野アジアタッグ王者。プロレス大賞新人賞。20年、世界最強タッグ決定リーグ戦優勝。21年、世界タッグ王者。22年、チャンピオン・カーニバル史上最年少優勝。23年、三冠ヘビー級王者。世界タッグ王座と併せ史上最年少五冠王。全日本の青柳亮生は実弟。身長186センチ、体重100キロ。得意技はロックスターバスター、エンドゲーム、ザ・フール。

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