無観客で開催の伏木曳山祭 復興を願い伝統のけんか山「かっちゃ」富山・高岡市

「けんか山」で知られる富山県高岡市の伏木曳山祭は、地震の影響で、ことし、祭りの目玉の「かっちゃ」を無観客で行いました。被害の大きさに開催には賛否両論ありましたが、ことしも伏木の町に威勢のいい掛け声が響きました。

およそ200年前から続く伏木曳山祭。海の安全や町の繁栄を願う伏木神社の春の祭礼です。

ことしは「地元住民のために復興を祈願する」祭りとして、祭りの目玉「かっちゃ」は過去例のない無観客で行われ、住民らは会場の外から静かに見守りました。

元日に北陸を襲った能登半島地震。伏木地区では、液状化による地盤沈下や道路のひび割れ、建物の損壊など広範囲に被害が出ました。

震災の爪痕が残る道を『花山車』が練りまわる…

毛田千代丸アナウンサー:「こちら山車同士をぶつけ合うかっちゃのメイン会場なんですが、この会場につながる通りでは、電柱の傾きや家屋の損傷が目立っています」

祭りの開催すら危ぶまれる被害状況でした。

男性:「液状化も初めてやから、みんな恐ろしくてできんやろ」

男性:「町の人間としてはやっぱりやってほしいんだけども。この道路とか、あるいは電柱とか。下がっているじゃないですか」

祭りを取り仕切る「伏木曳山委員会」は慎重な協議を重ねてきました。

電線や道路状況の安全性を確かめた結果、ことしは
▽ことしは巡行経路を4分の1に縮小し
▽例年2か所で開催していた「かっちゃ」は山倉前の県道のみに。
また、祭り直前に
▽「かっちゃ」を無観客で行うこととして、なんとか開催を決定しました。

目指すは、地元住民のために復興を祈願し伝統を継承する祭りです。未だ震災の爪痕が残る道を色とりどりの花傘をあしらった『花山車』がゆっくりと練りまわりました。

重さ8トンのちょうちん山車が激突…

日が傾き始めたころ、山車は『かっちゃ』に向けてお色直し。

旧本町の総代:「皆さんのありったけのパワーと、ありったけの「いやさー」をぶつけてください」

無観客での実施を決めていますが、会場には、地元住民らが押し寄せました。

祭りの関係者:「ずっと奥のバリケードまで観客を排除してください。両サイドはだめなので。お願いします。みんなでご協力お願いします」「法被着ていない人は一切入れない」「あそこのバリケードの奥まで下がってください」

「観客がいる限りかっちゃは始められない」と入場は厳しく制限されて、会場は関係者のみに…。

加賀谷悠羽記者:「独特な緊張感に包まれるなか、今かっちゃが始まります」

高さ8メートル、重さ8トン以上のちょうちん山車が、何度も激しくぶつかり合います。

伝統を守り続けることで復興支える…

『かっちゃ』に参加しないことを決めた町もあります。寳路町(ほろまち)は、祭りへの参加をめぐって賛否両論があったといいことしは山車の展示のみとなりました。

寳路町総代・大谷内貴志さん:「やっぱりうちらもかっちゃしたいという気持ちはいっぱいありますしね。まあそれがことしはできなかったんですけど、祭りには参加できてうれしいと思いますし、来年も一生懸命祭り頑張りたいと思います」

ことしは規模を縮小しての開催となりましたが、それぞれの祭りへの思いは変わることはありません。

湊町の曳き子:「最高です!もっとやっとりたいです。うちの山車が最強です!あーいやさーいやさー」

旧中町の曳き子:「何回乗っても楽しいもんです。地域を盛り上げていこうというのは、地震がある前からそんな気持ちでやっとるがで、そんなに変わらず」

旧本町の総代:「この祭りを盛大にやることが皆さんの活力になる、そういうふうに信じて私たちは祭りを守って続けていくことが、伏木のためになりますし、皆さんのためになると思っています」

祭りの活気で地元の人たちを元気づけたい―。伝統を守り続けることで復興を支えます。

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