ジュウシマツという小鳥のさえずり。実はこのさえずりにはとても意味があるということを東北大学の研究チームが新たに発見しました。この発見は、将来、人の言葉がどのように脳の中で作られ認識されるのか、という人の脳の仕組みの解明につながる可能性があると期待されています。
耳をすますと聞こえてくる鳥のさえずりや鳴き声。
「ピーピー」
ペットエコ仙台松森店 小笠原葉月さん
Q.さえずりよく聞きますか?
「きれいだなと思ったり、楽しそうだなと思ったり、さえずりが長いなと思ったりすることはある」
Q.なぜ長いかは?
「わからない」
記者リポート
「こちらにはたくさんの鳥がいます。その中にいるのがこちらのジュウシマツです。ジュウシマツのさえずりに関して、新しい発見がありました」
新たな発見をしたのは東北大学で脳神経科学の研究を進める安部健太郎教授たちの研究グループです。
東北大学大学院生命科学研究科 安部健太郎教授
「これまで動物の音声は特に意味もなく、情動にあわせて、うれしいから『キャー』とか、悲しいから『キャー』とか、そういう風な違いしかないと思われていたが、ジュウシマツは目的や状況に応じて音の並びを変えることができることがわかった」
ジュウシマツは、人間が言葉を覚えるように後天的にさえずりを覚えることが分かっています。安部教授はそこに着目し、ジュウシマツの研究から人間の脳へアプローチしたいと考えています。
教授「防音箱です」
記者「ジュウシマツですね」
教授「実験最中のジュウシマツがいます」
記者「いまピーと鳴いたのは?」
教授「地鳴きといわれ『コール』とよばれる短い音声です」
安部教授が着目したのは短い鳴き声ではなく連続した長いさえずりです。ジュウシマツは、オスだけがこの長いさえずりを発します。
このように、さえずりの長さは様々で安部教授はそこに注目しました。
東北大学大学院生命科学研究科 安部健太郎教授
「ジュウシマツはさえずりがすごく複雑で状況に応じて違うパターンの音を使う特徴があるので、複雑に音を変える能力を詳細に調べてみた」
まず、おこなったのがこちら!
さえずりを瞬時に文字化するコンピュータープログラムを開発し、さえずりを文字に置き換えてみると、さえずりがいくつかの音の組み合わせで構成されていることがわかりました。興味深いのはそれだけではありません。ジュウシマツに仲間の動画を見せます。すると…。
教授「モニターに向かってしゃべっているみたいですね。さきほどと違ったパターンで、さえずっているようにも聞こえますね」
さかんに仲間にむけてさえずりを発します。
記者「長さも長いですし話かけているようにも聞こえますね」
仲間の動画を見て変わるさえずりのパターン。目的に応じて変えているのか?さえずりを文字に変換したあとに行ったのが「条件づけ」です。
東北大学大学院生命科学研究科 安部健太郎教授
「繰り返しの音が長く発せられたときに、報酬としてほかの個体の動画見せる。繰り返しの音が短い場合には何もあたえない」
この学習を1週間ほど続けた結果、ジュウシマツは同じ音を長く繰り返して発するようになり…。
しかも報酬が与えられないことが分かると長くさえずらなくなり、報酬がいらないとみられる時にも長くさえずらないことから「報酬がほしい」という目的に応じて意図的にさえずりの内容を変えていることが証明されました。
東北大学大学院生命科学研究科 安部健太郎教授
「動物の新たな能力を垣間見ることができたと思っている」
安部教授はこの発見を人の脳内で言語がどのように作られ認識されているのかを解明することにつなげようとしています。
東北大学大学院生命科学研究科 安部健太郎教授
「神経細胞自体は人の神経細胞も、小鳥の神経細胞も基本的に一緒ですので、状況に応じて柔軟に使い分けるジュウシマツの言葉を、かれらの脳がどう認識しているのかということを明らかにするのが、われわれの次の狙い」