『ブルー きみは大丈夫』北米No.1 ライアン・レイノルズの主演作2本が今夏の主役に

5月17日~19日の北米映画週末ランキングは、ライアン・レイノルズ主演『ブルー きみは大丈夫』がNo.1を獲得した。今年の夏は『デッドプール&ウルヴァリン』もあり、2本の主演映画が公開されるレイノルズ。その第1弾はPG指定、オリジナル脚本のファミリー映画というチャレンジングな一作である。

監督・脚本は、『クワイエット・プレイス』シリーズでスリラー/ホラーに革新をもたらしたジョン・クラシンスキー。出演・製作も兼任する1人4役で、今回は実写・CGの融合による心温まるファンタジー映画に挑んだ。幼い頃に母を亡くした13歳の少女ビーは、子供にしか見えない存在・ブルーと出会う。友達がみんな大人になり、居場所を失ったブルーを助けるため、彼女は“大人なのにブルーが見える”隣人のカル(ライアン・レイノルズ)と協力することに。

本作は3日間で北米興行収入3500万ドルを記録。既存のIPやフランチャイズに頼らないオリジナル作品としては優れた滑り出しとなったが、事前の予想である4000万ドルには届かなかった。公開日の金曜時点では「3000万ドル程度に収まる可能性もある」とみられていたが、土曜日の優れた成績でやや持ち直している。しかしながら製作費は1億1000万ドルと、決して楽観視できる状況ではない。

興行のカギを握るのは観客支持の大きさだ。Rotten Tomatoesでは批評家スコアこそ49%にとどまったが、観客スコアは87%と上々。出口調査に基づくCinemaScoreも「A」評価、かつファミリー層が観客全体の半分以上を占めているとあって、うまくいけばひと夏を通じて堅実な興行を続けることもありうる。ライバルは5月24日公開のアニメ映画『The Garfield Movie(原題)』だが、同作が幼い子供をターゲットにしているのに対し、本作はPG指定なので正面衝突は避けられそうだ。

出演者はレイノルズ&クラシンスキー、子役ケイリー・フレミング。ボイスキャストにはスティーヴ・カレル、マット・デイモン、エミリー・ブラントら豪華スターが結集した。海外興収は2400万ドルで、全世界興行収入は5900万ドル。日本公開は6月14日だ。

第3位に初登場したのは、カルト的人気を誇るホラー映画『ストレンジャーズ/戦慄の訪問者』(2008年)をリブートした『The Strangers: Chapter 1(原題)』。タイトルが示しているように3部作の第1弾で、2作目は2024年内、3作目はそれ以降の北米公開を予定している。

2856館で1200万ドルというオープニング成績は、数字だけ見ると苦戦しているようにも見えるが、製作・配給のライオンズゲートにとっては大善戦。初動成績の事前予測値である700~900万ドルを軽々と上回ったほか、製作費も850万ドルと低予算だから、「小さいコストで小さく稼ぐ」ビジネスで、3部作計画の完遂はおおよそ確実とみられる。

Rotten Tomatoesでは批評家14%・観客42%、CinemaScoreでは「C」評価と、観た人の反応は思わしくないが、これはホラージャンルにはよくあること。監督は『ダイ・ハード2』(1990年)などで知られる、実はホラー/スリラー経験も豊富な重鎮レニー・ハーリン。日本公開は未定だ。

第6位には、27歳で急逝した歌姫エイミー・ワインハウスの伝記映画『Back to Black(原題)』が初登場。『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』(2009年)でジョン・レノンを撮ったサム・テイラー=ジョンソン監督がワインハウスの破壊的な内面に迫った一作だが、2010館で285万ドルという成績はあまりに厳しい(公開4週目の『チャレンジャーズ』と肩を並べるほどなのだ)。Rotten Tomatoesでは批評家35%に対し、観客85%と健闘。しかし、CinemaScoreでは「B+」評価にとどまった。2024年内に日本公開予定。

そして第9位には、J・J・エイブラムスと『トップガン マーヴェリック』(2022年)のグレン・パウエルが共同プロデュースした、米海軍のアクロバット飛行隊「ブルーエンジェルス」のドキュメンタリー映画『The Blue Angels(原題)』がランクイン。IMAX劇場268館で公開され、限られた上映回数にもかかわらず131万ドルを稼ぎ出した。

Amazon・MGMとIMAXが「IMAXドキュメンタリー、あるいはドキュメンタリー大作の新時代を」と意気込んだ本作は、現在上映中の45分版に続き、一部劇場で長尺版が公開予定。5月23日からはPrime Videoで配信がスタートするという。

北米映画市場はサマーシーズンとあって、毎週のように複数の新作が投入されているが、残念ながら現時点では伸び悩んでいるのが実情だ。今のところ、期待通りの成績となったのは『猿の惑星/キングダム』のみで、今週は第2位となったが北米興収は1億ドルを突破、世界興収も2億3753万ドルと順調。しかし、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』と『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』が市場を牽引していた1年前とは比べるべくもない。

次の週末に登場するのは、R指定ながらスマッシュヒットが期待される『マッドマックス:フュリオサ』と、前述の『The Garfield Movie(原題)』。映画興行のバトンを、来たる真夏までどう繋げるか。

北米映画興行ランキング(5月17日~5月19日)

1.『ブルー きみは大丈夫』(初登場)
3500万ドル/4041館/累計3500万ドル/1週/パラマウント

2.『猿の惑星/キングダム』(↓前週1位)
2600万ドル(-55.5%)/4075館/累計1億123万ドル/2週/20世紀スタジオ

3.『The Strangers: Chapter 1(原題)』(初登場)
1200万ドル/2856館/累計1200万ドル/1週/ライオンズゲート

4.『フォールガイ』(↓前週2位)
845万ドル(-38.3%)/3845館(-163館)/累計6298万ドル/3週/ユニバーサル

5.『チャレンジャーズ』(↓前週3位)
294万ドル(-32.8%)/1938館(-671館)/累計4351万ドル/4週/Amazon・MGM

6.『Back to Black(原題)』(初登場)
285万ドル/2010館/累計285万ドル/1週/Focus Features

7.『Tarot(原題)』(↓前週4位)
200万ドル(-41.2%)/2334館(-770館)/累計1543万ドル/3週/ソニー

8.『ゴジラxコング 新たなる帝国』(↓前週5位)
171万ドル(-34.5%)/1773館(-758館)/累計1億9440万ドル/8週/ワーナー

9.『The Blue Angels(原題)』(初登場)
131万ドル/227館/累計131万ドル/1週/Amazon・MGM

10.『Unsung Hero(原題)』(↓前週6位)
109万ドル(-57.1%)/1736館(-536館)/累計1906万ドル/4週/ライオンズゲート

(※Box Office Mojo、Deadline調べ。データは2024年5月20日未明時点の速報値であり、最終確定値とは誤差が生じることがあります)

参照
https://www.boxofficemojo.com/weekend/2024W20/
https://variety.com/2024/film/box-office/box-office-if-film-opening-weekend-underperform-john-krasinski-1236009476/
https://www.hollywoodreporter.com/movies/movie-news/if-movie-box-office-openig-contributes-to-summer-woes-1235903176/
https://deadline.com/2024/05/imax-doc-the-blue-angels-soars-i-saw-the-tv-glow-shows-broad-appeal-nice-open-for-babes-in-upbeat-indie-weekend-specialty-box-office-1235923333/
(文=稲垣貴俊)

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