漏えいした捜査情報は304人分…「見返り情報を得て、組織内の評価を高めたかった」 鹿児島県警、巡査長を懲戒免職

警察官2人の懲戒処分を発表し、謝罪する野川明輝県警本部長=20日、鹿児島市の県警本部

 鹿児島県警の捜査情報を第三者に漏らした地方公務員法(守秘義務)違反の疑いで、曽於署地域課の巡査長(49)が4月に逮捕された事件を巡り、県警は20日、犯罪経歴情報1件と95事件、計304人の個人情報が漏えいしたと発表した。県警によると、巡査長は「情報提供の見返りにさまざまな情報を得て、組織内の自分の評価を高めたかった。個人の判断で漏らした」と説明している。県警は同日、懲戒免職処分にした。

 野川明輝本部長は同日開いた会見で「県民の安全安心に大きな不安が生じていることを深くおわびする」と謝罪した。警察庁は同日、監督責任などを問い、野川本部長ら2人を口頭厳重注意処分などとした。県警は関係幹部ら13人も処分した。

 県警によると、巡査長は2023年6月から24年3月までの間、少なくとも3回、福岡市の60代男性会社役員に、個人1人分の犯罪経歴情報や告訴、告発事件の処理経過を管理する文書「告訴・告発事件処理簿一覧表」を印刷した書面を漏らしたとしている。

 県警の調べに対し、巡査長は「業務を円滑に進めたかった。2次被害がないよう(漏えい先には)早く資料を返してほしい」などと話している。60代男性会社役員とは業務の一環で知り合っており、金銭の授受は確認されていない。

 漏れた一覧表は、23年5月分の47枚と同7月分の10枚、計57枚。95事件分に当たり、一般人195人と警察職員108人の個人情報が含まれていた。少なくとも二つのウェブメディアに掲載され、漏えい情報と内容が一致する部分がある。

 一覧表はシステム上で管理され、本来は担当者だけがアクセスできたが、20年以降、刑事企画課担当者が各課担当者にメールで共有。公安課には23年のみ、同課の複数の職員が共有するメールアドレスに送られた。当時、巡査長は同課に所属していた。現在は電子データを出力、印刷できないような措置を取った。

 会見では他に、24年3月中旬、県内で女性の体を触るなどのわいせつな行為をしたとして逮捕、起訴された県警本部公安課警部(51)を停職6カ月の処分にしたと発表。警部は同日付で依願退職した。

処分内容を説明する鹿児島県警の野川明輝本部長=20日午後3時35分ごろ、鹿児島市の県警本部

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