JPモルガン、純金利収入予想引き上げ 軟着陸想定もリスクに備え

[ニューヨーク 20日 ロイター] - 米金融大手JPモルガン・チェースは20日、投資家向けイベントで、経済に不透明感はあるものの、金利上昇によって金利収入が増えるとの見通しを示した。

市場事業を除く通期の純金利収入(NII)見通しを910億ドルと、4月の予想890億ドルから引き上げた。

従来予想は、借入コストの上昇からより大きな利益を得られると想定していたアナリストの予想を下回っていた。

ジェレミー・バーナム最高財務責任者(CFO)は投資家に対し、規制の強化と地政学的な不透明性を要因に挙げ「環境はより複雑になっている」と言及。今後数四半期、NIIの道筋は上下を伴い「ノイズの多い」ものになるだろうとの見方を示した。

ジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、地政学的な緊張や物価高が想定よりも長引くといったリスクを挙げ、慎重になっていると述べた。

ダニエル・ピント社長は、米経済は大きな低迷を回避するソフトランディング(経済の軟着陸)に向かっているが、JPモルガンはこの見通しを妨げるリスクに備えているとし、「不透明性があるのは明らかだ」と指摘した。

JPモルガンは昨年5月、経営破綻した米中堅銀行ファースト・リパブリック銀行を買収し、多額の融資を獲得。この買収によって金利収入が増えたことも増益に貢献した。

<ダイモン氏後任選び>

CEO在任期間が18年を超えたダイモン氏はこの日、後継者選びにも言及した。ここ数年、続投期間を問われるとあと5年は残ると答えていたが、この日は「もう5年ではない」と語った。

JPモルガンの取締役会は最近、商業銀行と投資銀行の共同CEOであるジェニファー・ピープザック氏とトロイ・ローボー氏を有力候補として挙げている。

<AIに集中投資>

テクノロジー分野への支出は、23年の155億ドルから今年は170億ドルに増加するとの見通しを示した。予算の一部はAI(人工知能)に集中している。

ダイモン氏は以前、AIが蒸気機関や電気、インターネットと同じように変革をもたらす可能性があると述べているが、この日「AIは全ての仕事を変える」と強調した。

ピント氏はAIを導入することで、約10億ドルから15億ドルの付加価値が生まれると述べた。

JPモルガンは米国内の預金で現在11%程度のシェアを持っているが、シェア拡大を目指す。コンシューマーバンキング部門幹部は、小規模の都市でより多くの人にサービスを提供する計画だと述べ、48州の人口の50%以上をカバーするという新たな目標を掲げていると説明した。

© ロイター