実はヘルシーで満足感たっぷり!「じゃがいも」和洋レシピと皮剥き・芽取りなど基本の扱い方

じゃがいもに“太りやすい食材”というイメージをもっている人は少なくありません。糖質はごはん、パンなどの主食やいも類に多く含まれるため、じゃがいももカロリーが高いと思われるのかもしれません。でも実際は、そう高カロリーでもない、というのは料理研究家の熊谷真由美さん。

じゃがいもを主食とするアイルランドをはじめ、じゃがいも料理に古くから親しんできた欧州の料理にくわしい熊谷さんに、じゃがいものヘルシーレシピと、おすすめの食べ合わせを教えていただきました。

実はヘルシー!じゃがいもの栄養価と魅力

ごはんの代わりにじゃがいもを主食にすれば、半分のカロリーで満腹感が得られるといいます。

「じゃがいものカロリーが高くなってしまうのは、揚げたり、バターやマヨネーズで味付けしたりと、高カロリーな食材と組み合わせているからです。100gあたりのカロリーをごはんと比較すると、ごはんは168 kcal(水稲めし・精白米)に対し、じゃがいもは81kcal(じゃがいも・蒸し・皮なし)と約半分なんです」(料理研究家・熊谷真由美さん、以下同)

ほかにも栄養価は豊富です。

「食物繊維はごはんの13倍、カリウムは含有量の多いほうれん草並みの量が含まれ、みかんと同程度のビタミンCも含まれています。ビタミンCは熱に弱い栄養素ですが、じゃがいものビタミンCはでんぷんに守られるため、壊れにくいというメリットもあります」

今さら聞けない!?じゃがいもの扱い方

「今では『インカのめざめ』や『キタアカリ』など、さまざまな種類のじゃがいもが出回っていますが、代表的な品種はやはり『男爵』と『メークイン』です」

男爵……球形で粉質。ホクホクしているためコロッケやポテトサラダ、粉ふきいもに適しています。
メークイン……長卵型で粘質。緻密な粘質で型崩れしにくいため、煮物や炒め物に適しています。

「じゃがいもは調理方法によってさまざまな食感に変化します。料理にじゃがいものでんぷんをどう活かしたいかによって、茹で方や水のさらし方などの調理方法も変わります」

プロ仕込みのじゃがいものむき方

「私がフランスのレストランで修業をしていたときは、じゃがいもの皮をむくことから始めました。フランスにはじゃがいもがメインの分厚いレシピ本が存在するほど、さまざまな種類のじゃがいもと調理法があります。“トウルネ”“ポンヌフ”“ゴーフレット”など、切り方にも名前がついているほど。じゃがいも専用のペティナイフも販売され、ナイフで皮をむくのが一般的です。
私は、ピーラーを使うよりペディナイフを使う方が素早くむけます。じゃがいもを横長に持ち、じゃがいもを一回転させながら薄く皮をむいていくと4〜5回転ほどでむき終わります」

芽の取り方と、毒の見分け方

「じゃがいもの芽を取るには、ピーラーの芽取りを使用するか、包丁の端を利用します。芽の周りと一緒に実ごと取り除きましょう。スーパーで販売されているじゃがいもであれば、芽が出ているものはほとんどありません。また、じゃがいもは光に当たると皮が緑色になることがあります。その緑色の部分には毒が回っているため、皮ごと厚く取り除きましょう」

芽が出て、部分的に緑色に変色したじゃがいも。

じゃがいもの保存方法

光に当たらない冷暗所が基本です。じゃがいもは温かい場所に保存すると芽が出やすいので野菜室に保存します。低温に弱いので、新聞紙やキッチンペーパーにくるんで保存しましょう。すぐに調理しない場合は、皮のままじゃがいもを茹でて冷凍保存するのもおすすめです」

じゃがいもが主役のヘルシーレシピ 3

今回紹介するレシピは、じゃがいものシャキシャキ感を活かした和え物、パリッホクッを活かしたオーブン焼き、加熱することで粘度が増す性質を活かしたマッシュポテトの3種。調理法によってさまざま変化するじゃがいもを楽しんでみてください。

・じゃがいもとしらすのきな粉味噌和え
・ハッセルバックポテト
・チーズ・マッシュポテト

シャキシャキ食感がやみつきに!「じゃがいもとしらすのきな粉味噌和え」

「熱を通す時間を最小限に抑えることで、シャキシャキ食感を楽しめます。また、水にさらし表面のでんぷんを取り除けば、さらにシャキシャキに。歯ごたえの良さがやみつきになる和え物です。発酵食品の味噌と、食物繊維豊富なきな粉をかけ合わせたタレは、少量でもしっかり味を感じられるので好みに合わせてかけましょう」

【材料(2人分)】

・じゃがいも……中2個(約200g)
・しらす……大さじ2
・しその葉……2枚

〈きな粉味噌〉
・しょうゆ……小1
・味噌……大1
・すりごま……大1
・きな粉……大1
・砂糖……大1
・ごま油……大2

【作り方】

1.きな粉味噌の材料をすべて混ぜる。

「醤油などの液体を混ぜ合わせる前に、味噌に砂糖などの粉ものを加えてから醤油を足すと、分離しづらく馴染みもよくなります」

2.じゃがいもは皮をむき千切りにし水にさらす。

「じゃがいもは側面を少し切り、まな板の上で安定させてからスライスすると切りやすいです。スライサーを使用してもOK」

3.鍋にお湯を沸かし、じゃがいもに透明感が出るまで2分ほど茹でたらザルに上げる。

「じゃがいものシャキシャキ食感を損なってしまうので、茹ですぎに注意しましょう。茹で時間は千切りの細さによって異なります」

4.3のじゃがいも・しらす・ちぎったしその葉を合わせて器に盛る。

「しその葉は重ねて根元の軸を残し、一口大に手でちぎりましょう。ちぎると清涼感あるさわやかな香りが広がります」

5.4を器に盛り、お好みの量のきな粉味噌をかける。

「きな粉味噌は作りやすい分量です。量はお好みで調整してください。しらすの塩味、大葉のさっぱりさに濃厚な味噌が加わり、いくらでも食べてしまえるおいしさです。想像以上のシャキシャキ食感をお楽しみください」

下茹ですることでカリッ、しっとりの両方を楽しめる「ハッセルバックポテト」

「“ハッセルバックポテト”とは、スウェーデンの家庭料理です。下茹ですることで中はしっとり、オーブンで焼くことで表面はカリッとした食感を楽しめます。油で揚げていない、少し厚めのポテトチップスを食べているような味わいです。香ばしさを出すためにも、皮ごと調理がおすすめ。アコーディオン状のじゃがいもが、見た目にも華やかでおもてなし料理にもいいでしょう」

【材料(2人分)】

・じゃがいも……中2個

〈パセリソース〉
・オリーブオイル……大さじ2
・にんにく……1個
・アンチョビ……3本
・パセリ……みじん切り大さじ2
・塩……ひとつまみ

【作り方】

1.じゃがいもは皮をよく洗う。下を切り離さないように菜箸ではさみ、薄くアコーディオン状に切り込みを入れる。

「1〜2mm幅に薄くスライスできるといいでしょう。じゃがいもは皮ごと調理することで、皮特有の風味がおいしさにもつながります」

2.たっぷりの水から茹で始め、沸騰したら中火で15分茹でる。

「じゃがいもは火が通るのに時間がかかるため、水からゆっくり火を通します。そうすることで、表面だけに火が通り、中が生のままの状態を防ぎます。今回は切り込みを入れて茹でていますが、皮ごと茹でるとビタミン類の流出を防ぐこともできます」

3.天板に乗せ、210℃のオーブンで30分焼く。

「210度で30分と時間をかけて火を通していくことで、段々とアコーディオンを開かせながらも、しっとりと焼き上げることができます」

4.小鍋に、オリ−ブオイル、にんにくのすりおろし、アンチョビ、塩を入れ、弱火でグツグツと香りがするまで1分ほど煮込む。木べらでアンチョビを潰しながら混ぜ、火を止めてパセリを加える。

「アンチョビは火が通るとだんだんと崩れていくので、ヘラで崩しながら油と馴染ませます」

5.器にじゃがいもを盛り、パセリソースをお好みでかける。

「パセリはオイルと一緒に温められることで色鮮やかに。パセリ特有の苦みもまろやかになります。黄色いじゃがいもにパセリの緑色がよく映えます。お好みで塩を振ってもいいでしょう」

よく伸びる! フランス・オーベルニュ地方の伝統料理「チーズ・マッシュポテト」

「フランス・オーベルニュ地方で“アリゴ”と呼ばれるチーズ・マッシュポテトは、当地の郷土料理です。トム・フレーシュという熟成前のチーズでしか作れないとされていますが、家庭にあるナチュラルチーズでも作れるように研究を重ねて作った、とっておきのレシピです。マッシュポテトの滑らかさにチーズが加わり、クリーミーな味わい。にんにくの風味がアクセントになっています。バター・生クリームを使用していないため、通常のレシピよりもヘルシーです。肉や魚の付け合わせ、生野菜や蒸し野菜のディップとしておすすめ。ただ、チーズがたっぷり入っているので、食べすぎは禁物ですよ」

【材料(作りやすい分量)】

・じゃがいも……150g
・ピザ用チーズ……200g
・にんにく……1片
・牛乳……100〜150ml
・塩・こしょう……お好みで
・水溶き片栗粉……片栗粉 大さじ3、水 大さじ3

【作り方】

1.じゃがいもは皮をむいて4分の1に切り、ひたひたの水を加え水から茹でる。柔らかくなったら、水を捨てる。

「じゃがいもは茹でた水の量で、食感が変わります。多めの水に入れて茹でると、じゃがいもが水っぽくなってしまうので、じゃがいもの角が少し水面の上に出るぐらいのひたひたの水で茹でましょう。煮えたかどうかの判断は竹串を刺し、竹串を上げたときにじゃがいもが持ち上がらないかどうかが基準です」

2.柔らかくなったら水を捨て中火にかけ、焦げないように揺らしながら粉ふき芋にする。

「じゃがいもについている水分を飛ばすため、粉ふき芋にします。焦げないように、鍋をゆすりながらじゃがいもをひっくり返しつつ、水分を飛ばします」

3.鍋の中でつぶしてから裏ごしする。

「網の目に対して対角線にヘラで押しつぶすと、簡単に裏ごしできます」

4.2の鍋に戻し、にんにくのすりおろし・塩・こしょう・牛乳を加え混ぜ合わせ火にかけ、ふつふつとしたら、いったん火から下ろし、水溶き片栗粉を加え勢いよく混ぜ合わせる。

「火にかけたまま水溶き片栗粉を加えると、片栗粉がダマになってしまうので、水溶き片栗粉を加えるときには一度火からおろしてから混ぜ合わせます」

5.チーズを加え混ぜ合わせたら、再びコンロの火に欠け中火で1分ほど、力をこめてよく練り上げる。

「ヘラで持ち上げたときに長く伸びるまで混ぜましょう。できたてが一番伸びます。冷めたらレンジ・湯煎であたためると、再び伸びますよ。アリゴはパンとも相性がいいのですが、パンは糖質が多くカロリーも高いため、カロリーの過剰摂取となってしまいます。肉、魚などのたんぱく質や野菜に付け合わせるとヘルシーです」

「じゃがいもをヘルシーに食べるには、何と組み合わせるかが大切」と話す、熊谷さん。日本でお馴染みのフライドポテトやポテトサラダは油分が多く、高カロリーになってしまいます。油や、糖質を控えた料理であれば、ビタミンCやカリウムなども摂取できる野菜としての側面を持つので、おやつや主食代わりに食べるのがおすすめ。

シャキシャキ、ホクホク、なめらかとろ〜りなど調理方法によって食感が自在に変わるじゃがいものおいしさを楽しんでみてください。

Profile

料理研究家 / 熊谷真由美

大学卒業後、料理教室に通ったことをきっかけに、理論的に作る料理の楽しさに目覚める。その調理法を伝えたいと、料理研究家のアシスタントを経てパリの星付きレストランで修業。帰国後は東京・恵比寿のシャトーレストラン「タイユバン・ロブション」で働いたのち、自宅で料理教室をオープン。いままで延べ一万人以上の生徒が参加。チーズやお菓子などをテーマに、出版した料理書は20冊以上にのぼる。
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取材・文=加賀美明子(Neem Tree) 撮影=泉山美代子

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