【香港】生命健康科学企業が香港視察[医薬] 日本から12社、国際会議で商談も

ASGHの会場。視察ミッション参加者は思い思いにブースを回った=16日(NNA撮影)

香港政府駐東京経済貿易代表部と香港政府投資促進署(インベスト香港)が15~18日に開催した日本から香港への視察ミッションに、香港進出を検討する生命健康科学分野の日本企業12社が参加した。プログラムのメインとなった国際会議「アジア・グローバルヘルス・サミット(ASGH)」では、香港域内外の企業との商談も積極的に行い、ビジネスチャンスを探った。【菅原真央、蘇子善】

ミッションは3泊4日で、ASGH参加のほか、香港政府系ハイテク産業団地、香港科学園(サイエンスパーク)の視察、香港の最新ビジネス環境についてのブリーフィング、関連業界の企業・団体との夕食会などで構成。医療機器や医療機関向けサービスのスタートアップ、ベンチャーキャピタルなどの企業から計15人が参加した。

プログラムの目玉は16~17日のASGHへの参加だ。今年で4回目となる同イベントの展示エリアには、医療・健康関連の150以上のブースが設けられた。このうち香港の6大学や政府系情報・ハイテク産業基地の数碼港(サイバーポート)が立ち上げたスタートアップは70社が出展した。

ミッション参加企業で、ワクチンの皮内投与デバイスを開発しているライトニックス(埼玉県草加市)の小林範行取締役は「大学に勢いがあり、研究結果をビジネスの世界に持ち込もうとしている流れが感じられた」と感想を語った。

同社はタイでの事業化を目指す中、香港を次のターゲットの一つとして検討している。「将来的には中国本土を視野に入れているが、香港は言語や法制度の面で本土よりアプローチしやすいと考えている。当社と組んで医療機器を製造できる香港の会社とコネクションができればうれしい」と期待を示した。

会場内にはビジネスマッチングスペースもあり、ミッション参加企業の多くが域内外企業との面談に臨んだ。モノクローナル抗体探索受託サービスを提供するiBody(名古屋市)の天草陽・代表取締役最高経営責任者(CEO)は「当社の技術を多くの人に知ってもらいたいので、面談にフォーカスしてきた。これまで話した企業には技術に関心を持ってもらえた」と手応えを述べた。

同社の強みは医薬品や診断薬などに広く使われている抗体をヒトや動物から効率的に取得する最先端技術。参加期間中には他にも多くの面談予定があり、「少なくとも1社とコラボレーションにつながれば」と意気込んだ。

大阪大学発のクール・フラッシュは更年期症状の一つであるホットフラッシュを治療するデバイスを開発している。代表の金田恵理氏は、今回のミッションでは市場調査を主に行い、アジア圏進出のポイントをつかみたいと語った。デバイスは本年度の効果検証で効果が認められれば事業化する予定だが、同時に海外進出も考えているといい、「日本だけでなく、海外の働く女性も更年期症状に悩んでいることを知り、海外でも展開しなければならないと使命感を感じている」と話した。

ASGHでは世界の医療・健康関連の専門家ら80人以上による講演も行われた。16日のパネルディスカッション「人工知能(AI)によるヘルスケアの強化」には、ミッション参加企業で、内視鏡の画像診断支援AIを手がけるAIメディカルサービス(東京都豊島区)の多田智裕・代表取締役CEOが登壇。AI技術を医療の現場に導入するメリットと課題について他の登壇者と意見を交わした。

■政府の重点分野

ミッションを企画したインベスト香港イノベーション・技術(I&T)担当部長の黄イ卓(アンディー・ウォン、イ=火へんに韋)氏は「企業には香港でビジネスを展開する可能性を感じてもらうことを望んでいる。それが実現しなくても、香港で得た経験や情報を日本に持ち帰ってもらうことはわれわれにとって大きなメリットになる」と述べた。

香港進出のメリットについては「企業は香港市場にのみ注力することも、本土など香港以外の市場を選択することもできる」と説明。国際都市である香港は資金、情報、人の管理に適していると強調した。

また香港の大学と共同開発できることも大きな利点だと指摘。香港で研究開発(R&D)した知的財産(IP)を使用して香港でビジネスをする場合の税制優遇策も紹介した。

黄氏によると、I&Tのうちヘルスケアとテクノロジーを融合させるヘルステックは香港政府が力を入れている分野の一つ。インベスト香港はASGHにブースを出展し、医療・健康分野に詳しいスタッフを配置して、薬品や医療機器に関する法制度などについて来場者に説明した。

© 株式会社NNA