ICC、ネタニヤフ氏とハマス幹部の逮捕状請求 米など猛反発

[ハーグ/エルサレム/ワシントン/ロンドン/ヨハネスブルク 20日 ロイター] - 国際刑事裁判所(ICC)のカーン主任検察官は20日、パレスチナ自治区ガザでの戦闘を巡り、戦争犯罪と人道に対する罪の疑いでイスラエルのネタニヤフ首相とガラント国防相のほか、イスラム組織ハマス幹部3人の逮捕状を請求したと発表した。

これに対し、ネタニヤフ首相本人は猛反発。米国や英国からも批判的な声が上がっている。

逮捕状を発行するに十分な証拠があるかどうかは、予審裁判部が今後判断する。

カーン氏は声明で、戦争犯罪と人道に対する罪の容疑で「刑事責任を負う」と信じるに足る十分な根拠が得られたと指摘。「イスラエルは他の全ての国と同様に国民を守るために行動する権利があるが、こうした権利は国際人道法を順守する義務を免除するものではない」とし、イスラエルが行ったとされる人道に対する罪は「国家政策に基づくパレスチナ民間人に対する広範かつ組織的な攻撃」の一部との見解を示した。

その上で、イスラエルが食料、水、医薬品、エネルギー源などの「人間の生存に不可欠な物資」を民間人から組織的に奪っていたことを示す証拠が得られているとし、ネタニヤフ首相とガラント国防相は故意に多大な苦しみを引き起こし、戦争犯罪として殺人を犯したことに責任を負っているとした。

ICCはハマス最高指導者のハニヤ政治局長ら3人の逮捕状も請求。ハマス幹部のサミ・アブ・ズフリ氏は「被害者と加害者を同一視するものだ」と非難し、逮捕状請求の取り消しを要求した。

イスラエルのネタニヤフ首相は「ICC検察官が、民主的なイスラエルと大量殺りくを行うハマスとを比較したことに嫌悪感を抱く。イスラエル国民を虐殺し、レイプし、誘拐したハマスと、正義の戦争を戦っているイスラエル軍兵士を比較することなどできるだろうか」と激しく反発した。

その上で、逮捕状請求は不合理であり、イスラエル全体を標的にしたもので「新たな反ユダヤ主義」の姿だと批判した。

イスラエルのヘルツォグ大統領も、逮捕状請求は世界中の「テロリスト」の増長につながると非難。「テロリストと民主的に選ばれたイスラエル政府との間に類似性を引き出そうとするいかなる試み」も断じて容認できないと述べた。

<米英、強く批判>

米英もICCの行動を強く批判。バイデン米大統領は20日、逮捕状請求は「言語道断」だと非難した上で「検察官が何を言おうと、イスラエルとハマスの間には同等性など全くないということをはっきりさせておきたい。米国はイスラエルの安全保障について常にイスラエルを支持する」と述べた。

ブリンケン国務長官も同様の見解を示した上で、ICCの管轄権と逮捕状請求に疑問を投げかけた。また、人質奪還と停戦合意に向けた交渉が危うくなる可能性があるとした。

英国のスナク首相の報道官も、ICC検察官の決定は「戦闘の停止、人質の救出、人道援助の実施に寄与しない」と述べた。また、ICCには逮捕状を請求する権限がないとも語った。

<南アフリカは支持表明>

一方、南アフリカは逮捕状の請求に支持を表明。大統領府は「国際法の支配を守り、凶悪犯罪を犯した者の責任を追及し、被害者の権利を守るために、全ての人に対し法律が平等に適用されなければならない」とする声明を発表した。

南アはイスラエルがガザ地区で大量虐殺(ジェノサイド)を行ってるとして国際司法裁判所(ICJ)に提訴している。

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