「好きに生きてきた代償だな…」月収〈16万円〉72歳の日雇いバイト、年金〈月1万円未満〉の現実

65歳以上の高齢者の4人に1人が働く時代。60代後半で5割、70代以上で2割弱の人が働いています。このなかには、高齢者の生活を支える公的年金がゼロ、または極わずかという人も。みていきましょう。

老齢基礎年金「月6万8,000円」だが…年金ゼロの高齢者、全国50万人の衝撃

令和6年度の国民年金保険料は月1万6,980円、年間20.3万円ほどの保険料を納付します。それに対し、老齢基礎年金は月6.8万円。年間81.6万円を受け取ることができます。

国民年金保険料を払うのは、20歳になってから60歳になるまでの40年間。ちなみに今年から老齢基礎年金を受け取る65歳の人がいたとしたら、国民年金に加入したのは1979年のこと。当時の保険料は3,300円でした。年々保険料は上がり続け、月1万円を超えたのは1993年のこと。60歳になる2019年までに払った保険料は、トータルで546万円ほど。いまの支給水準であれば、80ヵ月強、年金を受け取ることができれば、保険料の総納付額を上回ることになります。

厚生労働省『令和3年 簡易生命表』によると、65歳の年金受け取り開始から7年経った72歳でも健在の割合は、男性で76.0%、女性で88.3%。圧倒的多数の人が、納付した保険料以上の年金を受け取れる可能性があります。多くの専門家が、日本の公的年金はお得であると論じるのはこのような理由からです(関連記事:『【早見表】年齢別「生存率」0~100歳…<令和3年 簡易生命表>』

国民年金保険料の納付率は令和4年度で76.1%。昨今は未納者対策を強化するなど納付率向上に努め、その効果が少しずつカタチになっています。それでも4人に1人は未納という状況。さらに現在、年金が頼りという高齢者のなかには、ほんのわずかしか年金をもらっていない人、さらには年金をまったくもらっていない人も珍しくはありません。

厚生労働省『令和4年度 後期高齢者医療制度被保険者実態調査』、65歳以上の無年金者は全国に50万人ほど。決して珍しい存在ではありません。

【年齢階級別「無年金者」数】

65~70歳未満:24,366人

70~75歳未満:26,958人

75~80歳未満:157,231人

80~85歳未満:119,741人

85~90歳未満:88,574人

90~95歳未満:52,387人

95~100歳未満:27,473人

100歳以上:6,076人

70代でも「働けるなら働いてください」と、生活保護申請は却下

――夏は地獄のようだよ

今年、72歳になる男性。日雇いで交通整理などのアルバイトをしながらコツコツと生活費を稼ぐこと、月16万円ほど。そんな生活を振り返りながら、その苦労を語ります。

――年金⁉ 微々たるもんだけどもらってるよ

その額、月1万円未満。年金保険料は払えるときに払うというスタンスだったといいます。そのような額をもらったところでどうにもならない、と思えますが、男性は「ないよりはまし」と笑います。厚生労働省『令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、無年金とまでいかなくても、年金月1万円未満と低年金状態にある人は、国民年金受給者、厚生年金保険(第1号)受給者、それぞれ6万人ほど。

もちろん年金がもらえなくても、低年金であっても、それをカバーできるだけの収入や貯蓄があれば問題ありませんが、そのようなケースは稀。多くが生活困難に陥っています。

――70を超えてから、あんまりにも生活が苦しかったから生活保護を申請したことがある

しかし男性の場合、「(健康なので)まずは働いて、生活を立て直しましょう」と申請は却下されたといいます。年齢がさらに高齢であれば考慮されることもあるといいますが、働けない理由が特別にない限りは、まずは働くことを勧められ、それでも最低生活費に達しない場合、その差額が支払われるというのが基本です。

高校を卒業して以来、定職にはつかず、夢を追ってきたという男性。

――好きなことだけをやってきた代償だな

いまの現状を受け入れるしかないといいます。

[参考資料]

日本年金機構『国民年金保険料の変遷』

厚生労働省『令和3年 簡易生命表』

日本年金機構『令和4年度の国民年金の加入・保険料納付状況』

厚生労働省『令和4年度 後期高齢者医療制度被保険者実態調査』

厚生労働省『令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』

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