【夏場所】2敗キープの琴桜は最後のとりで 秀ノ山親方が託す土俵の〝秩序回復〟

琴桜

最後のとりでだ。大相撲夏場所9日目(20日、東京・両国国技館)、大関琴桜(26=佐渡ヶ嶽)が幕内阿武咲(27=阿武松)を突き落として2敗をキープ。賜杯レースの首位に並び、念願の初優勝を視界にとらえた。今場所は役力士に休場者が続出。番付崩壊の危機に直面するなか、元大関琴奨菊の秀ノ山親方(40=本紙評論家)は琴桜に土俵の〝秩序回復〟の役割を託した。

琴桜は攻め込まれても、慌てなかった。阿武咲の鋭い当たりに後退した土俵際。左を相手の首に巻きつけると、体を開いて右から突き落としを決めた。2敗を守り、優勝争いの首位に並ぶ大きな白星。取組後は「しっかり体が反応したのは良かった。攻めて勝った方がいいのはもちろんだけど、一つ星につながれば次が変わってくる」とうなずいた。

秀ノ山親方は、琴桜の相撲内容について「阿武咲に押されはしたけれど、落ち着いていた。土俵際は琴桜の持ち味である懐の深さと、体の柔らかさが発揮されていた」と分析。ここまでの9日間を振り返り「初日は勝ち急いで星を落としたが、2日目以降はしっかりと腰が割れて重さのある本来の相撲が取れている。精神面でも集中できているのでは」と指摘した。

今場所は横綱照ノ富士(伊勢ヶ浜)と大関貴景勝(常盤山)が2日目から休場し、大関霧島(音羽山)も7日目に姿を消した。役力士9人のうち5人が離脱する異常事態のなか、この日は大関豊昇龍(立浪)が4敗に後退。土俵は番付崩壊の危機を迎えている。首位に並ぶ琴桜は、看板力士の最後のとりで。秀ノ山親方も〝秩序回復〟の役割を期待している。

「こういう場所だからこそ、琴桜には大関の意地を見せてもらいたいし、地位の責任をしっかり背負いながら戦ってほしい。もともと大崩れがなく、安定して2桁は勝てる力士。これまで優勝に届かなかった星の差1つ、2つを残り6日間で上積みできるかどうか。落ち着いて自分の相撲さえ取ることができれば、十分に可能だと思う」

今場所は「琴ノ若」から祖父で元横綱のしこ名へ改名。50年ぶりに「琴桜」を大相撲の土俵に復活させた。その特別な場所を、初優勝で締めくくることができるのか。偉大な祖父の番付を目指す上でも、残り6日間で真価が問われることになりそうだ。

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