技術系職員が採用できない…自治体を阻む給与の壁 福井県内市町、新卒採用ゼロも

技術系の経験者採用試験を案内する福井県福井市のホームページ。採用難を受け、各市町が受付期間の拡大や受験資格の緩和などの対策を講じている

 福井県内市町が技術系職員の採用に苦慮している。就職活動で学生優位の「売り手市場」が続く中、本年度の新卒採用ができなかった自治体もある。道路や河川などインフラの整備・維持管理、災害時の復旧計画策定など専門的な知識を生かし住民生活を支える立場で影響は大きい。採用時期の前倒しや経験者採用の通年化といった対策を講じているが、民間と同レベルの給与水準引き上げは難しく、妙手は見当たらない。

 鯖江市は本年度採用に向けた定期試験で、技術系職員3人を募集したが合格者1人が辞退し、新卒採用ができなかった。市の担当者は「毎年退職者もいる中で、技術系職員は常に不足している」と話す。

 志望者の減少も著しい。17年度に行った試験は3人の募集枠に14人の応募があったが、22年度は募集2人に対して受験者はゼロ。比較的待遇のいい民間への人材流出が考えられるとした上で、「自治体は人事院勧告に基づいて給与水準が決まる。大幅な引き上げは難しい」と苦しい胸の内を明かす。

 福井大学キャリア支援課によると、工学部卒業生の進路のうち公務員は16年度の約30人(全体の約5%)から、23年度は約20人(同約4%)にとどまった。担当者は「今も公務員が第1志望の学生は少なくないが、民間は大手を含めて採用活動が活況。売り手市場は間違いない」と指摘する。

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 採用難を受け、新たな取り組みを始める自治体もある。敦賀市は、応募者が募集枠を下回る年が続いていた土木職員の採用試験を、定期試験の2カ月ほど前に行う「先行枠」を本年度初めて設けた。市の担当者によると、県など一部の自治体でも広がっているといい、「少子化も相まって、土木業界は官民いずれも人手不足。民間と時期を合わせることで、敦賀市を選択肢に入れてもらう」と狙いを説明する。

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