【取材の裏側 現場ノート】いま思えば早計だった。女子ゴルフの渋野日向子(25=サントリー)が「ゴルフ界の常識を変えてしまうかも」と思ったことがある。
渋野はホステスプロとして参戦した昨年6月の国内ツアー「宮里藍 サントリーレディス」で野球のバットのようにクラブを握るベースボールグリップで参戦した。初日のわずか4日前に父親から「やってみたら」と勧められてトライしたところ「意外といいじゃん」と気に入って取り入れていたことを明かした。左手の親指付近を痛めていたことから、患部に負担のかからないようにとの意図もあったとみられる。
これはあくまで少数派の握り方。右利きなら右手の小指と左手の人さし指を絡めて握るインターロッキングか、右手の小指を左手の人さし指付近に重ねるように握るオーバーラッピングのどちらかがほとんどだからだ。
渋野は前者でプレーをしていたが、本人は「長い目でみている」と腰を据える姿勢を見せていた。それだけに、このグリップで結果を残せば、影響力絶大な渋野のこと、ジュニアゴルファーらがマネをするなどして少数派からの脱却するのではと考えた。
しかし、わずか2試合で元のグリップに戻したため、記憶から消えていたが、あれから1年近く経過して、ふとした時に思い出してしまった。米ツアーシード復帰を目指す今季は、ここまで苦戦続きの中、また違った形で型破りな取り組みを見てみたい。(ゴルフ担当・森下 久)