中には恐ろしい描写も…少女漫画で憧れた「超能力双子」の不思議な魅力

フラワーコミックス『『海の闇、月の影』(小学館)

少女漫画やアニメにしばしば登場した「双子」キャラ。力を合わせて敵を倒す胸アツ展開もあれば、片方が闇落ちしてしまうといった悲しい展開もあり、作品によって描かれ方はさまざま。見た目や言動が似ている彼女たちは、非常に魅力的な存在だった。

少女漫画に登場する双子キャラの中には、人知を超えた不思議な力を持つ人物も珍しくなかった。魔法使いとは違い、日常生活でも活用できそうな彼女たちの能力に憧れたという読者も多いだろう。そこで今回は、少女漫画に登場した「特異な能力を持つ双子キャラ」を振り返ってみよう。

■悲しいストーリーに涙が止まらない『海の闇、月の影』

最初に見ていくのは、1987年から『少女コミック』(現:Sho-Comi)で連載が始まった篠原千絵氏の漫画『海の闇、月の影』だ。同作は、悲しい運命に巻き込まれた双子の姿を描くサスペンスホラー。恐ろしい描写も多いのだが、繊細で美しい絵柄と切ないストーリーで多くの読者を魅了した名作である。

主人公は、双子の女子高校生の小早川流水と小早川流風。姉の流水は、さっぱりした性格ながら面倒見が良くいつも妹の流風を気にかける優しい女の子で、妹の流風は姉に比べるとやや内気だが、同じくらい心が優しく姉のことが大好きという仲良し姉妹だ。

二人は陸上部に所属し、ともに部のエース・当麻克之に恋をしていたが、克之が流風に恋をしたことで流水は失恋してしまった。ある日、ハイキングに出かけた陸上部のメンバーは雨宿りをした古墳の中で異臭を嗅ぎ、流風と流水を残して全員が命を落としてしまう。

彼女たちが嗅いだのは未知のウイルスで、生き残った二人はこれに適応し物体をすり抜ける力と空中浮遊という超能力に目覚める。ただし月の満ち欠けに影響を受け、満月のときはフルパワーになるが新月のときはほとんど使えない。

さらに流水は、自身の血液や唾液を他者に入れることで相手を意のままにコントロールするという能力も得る。ウイルスによって人格が変わったことで負の感情に支配されていた彼女は、この力を使い次々と殺人を繰り返していく。

反対に流風の唾液や血液には流水の感染を止める力が宿っている。流水が克之をコントロールしようとしたときも、流風のキスで抗体ができていたため感染を防ぐことができた。

ウイルスにより、片方が感染を広げ片方が感染を抑えるという悲しい体質になってしまった彼女たち。二人はここから、治療薬と感染薬のための処方箋をめぐる血生臭い戦いに巻き込まれていく。

■二人が揃うと発揮される超能力!『ミラクル☆ガールズ』

『ミラクル☆ガールズ』は、1990年から『なかよし』で連載されていた秋元奈美氏の漫画だ。キュートな絵柄と“超能力を使う双子”という魅惑のキーワードが女子の心を掴み、1993年にはアニメも放送されるヒット作となった。

主人公は、生まれながらに超能力を持つ一卵双生児の松永ともみと松永みかげ。ほぼ同時だが、僅差でともみが先に生まれている。二人の違いといえば髪の長さくらいで、周囲から見るとどっちがどっちか分からないほどそっくりだ。ちなみに、ボブヘアが姉・ともみで、ロングヘアが妹・みかげである。

いつも行動をともにする仲良し姉妹だが、外見と裏腹に中身はすべて真逆で似たところがない。ともみは勉強が苦手な分、運動神経抜群で穏やかな性格なのに対し、みかげは成績優秀ながら運動はからっきしダメ。さらに気が強くツンデレである。一般的に運動が得意だと性格も活発に描かれることが多いが、松永姉妹はそこも逆という面白い組み合わせだ。

そんな姉妹の持つ超能力が、テレポート&テレパシーである。独立した超能力を持つキャラは多いが、二人揃っていないと使えない超能力というのは双子ならではで珍しい。

テレパシーは自由に送りあうことができ、離れていても常にコミュニケーションがとれる。離れて行動している際に脳内でアドバイスを送って危機を回避したり、突発的な問題を相談したりと利便性が高く、この力がある限り彼女たちに携帯電話はいらないだろう。

そして、読者の誰もが一度は憧れたであろうテレポート能力。行きたい場所に行けるなんて、なんて便利なのだろうか。ただ、松永姉妹の場合は二人の力を合わせないと使うことができず、目的地はどちらかが頭の中でイメージすればOKだが、集中力が切れていると屋根の上といった変な場所に着地してしまう。

■男女の双子を待ち受ける切ない運命『妖しのセレス』

最後は、1996年から『少女コミック』で連載されていた渡瀬悠宇氏の漫画『妖しのセレス』を見ていく。同作は「天女」「羽衣伝説」をベースにした壮大な世界観のSFファンタジーサスペンス。2000年にはアニメ化も果たし、話題を集めた。

双子の主人公・御景妖(みかげあや)と御景明(みかげあき)は、歴史ある大財閥・御景家の一族に生まれた。明は優しく温厚で妹を大切にする良き兄、妖はカラオケ好きで元気いっぱいな女子高生の妹という普通の双子だったが、16歳の誕生日に運命が大きく変わる。

本家に連れていかれた二人は、御景家に災いをもたらすとされていた天女セレスの手のミイラを見せられると、体に異変をきたして倒れてしまう。そして、その時の反応から妖がセレスの生まれ変わりで、明は御景家の始祖でありセレスの夫である、のちに独裁者となった「ミカギ」の生まれ変わりということが発覚。そして前世の人格に支配され、妖と敵対していく。

厳密にいえば、同作に登場するのは天女の呪力。天女セレスの生まれ変わりの中でも飛び抜けて強い血を持っていた妖に宿る力は強く、念動力で壁を破壊したり波動を飛ばしたり宙に浮いたりと、凄まじい動きを見せる。

反対に明は、かつて羽衣を手に入れたミカギの生まれ変わりゆえ、念動力を使う側ではなく彼らを統率する指導者側となった。敵対する運命にある二人の描写は切ないものだったが、妖の持つ力の強さに圧倒されたという読者は多いだろう。

どの作品の双子も、見た目はそっくりだが中身がしっかり差別化されていてそれぞれに惹かれる要素がある。“入れ替わり”や“同じタイミングでハモる”といった双子あるあるも、見るたびにワクワクしてしまうものだ。

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